満期保有目的の債券からの保有目的区分の変更について

有価証券はその保有目的に従って取得時において『売買目的有価証券』『満期保有目的の債券』『子会社株式及び関連会社株式』『その他有価証券』に分類されます。これらの保有目的区分は原則的には変更することはできませんが、正当な理由がある場合には保有目的区分を変更することができます(金融商品会計に関する実務指針 第80項参照)。

満期保有目的の債券に分類された債券について、その一部を売買目的有価証券又はその他有価証券に振り替えたり、償還期限前に売却を行った場合は、満期保有目的の債券に分類された残りの全ての債券について、保有目的の変更があったものとして売買目的有価証券又はその他有価証券に振り替えなければなりません。さらに、保有目的の変更を行った事業年度を含む2事業年度においては、取得した債券を満期保有目的の債券に分類することはできないことになります(金融商品会計に関する実務指針第83項参照)。

満期保有目的の債券について、その保有目的区分を売買目的有価証券又はその他有価証券に変更するときは、変更時の償却原価をもって振り替えることになります(金融商品会計に関する実務指針 第84項参照)。

ただし、債券の発行者の信用状態が著しく悪化した場合や税法上の優遇措置の廃止された場合などにおいて、当該債券を保有し続けることによる損失又は不利益を回避するため、一部の満期保有目的の債券を他の保有目的区分に振り替えたり、償還期限前に売却した場合については、残りの満期保有目的の債券についてまで満期まで保有する意思を変更したものとはならず、したがって保有目的区分についても変更する必要はありません(金融商品会計に関する実務指針 第83項ただし書き参照)。

(具体例-満期保有目的の債券についての保有区分変更)

×2年12月31日において、満期保有目的の債券として保有するA社社債について、当社の資金状況の悪化から償却期限前での売却を予定し、これを売買目的有価証券へ区分変更を行った。変更時における仕訳をしめしなさい(償却原価法適用時の償却額や有価証券利息に関する仕訳は不要)。

(A社社債)
取得日:×1年1月1日(発行と同時に取得した)
満期日:×4年12月31日(取得日から4年後)
取得価額:96,000円
額面金額:100,000円
評価:償却原価法(定額法)を採用しており、×2年12月31日における償却原価は98,000円である。

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
有価証券
(売買目的有価証券)
98,000 投資有価証券
(満期保有目的債券)
98,000

満期保有目的の債券から売買目的有価証券やその他有価証券へ保有目的区分を変更する時は変更時の償却原価で振替を行います。本設問においては満期保有目的の債券をあらわす『投資有価証券』勘定から売買目的有価証券をあらわす『有価証券』勘定へ償却原価を使って振り替えています。

(関連項目)
有価証券の保有目的区分の変更(変更一覧表)
売買目的有価証券からその他有価証券への保有目的区分の変更
その他有価証券から売買目的有価証券への保有目的区分の変更
売買目的有価証券から子会社・関連会社株式への区分の変更
子会社株式・関連会社株式からの保有目的区分の変更
その他有価証券(全部純資産直入法)から子会社・関連会社株式への変更
その他有価証券(部分純資産直入法)から子会社・関連会社株式への変更

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