その他有価証券(部分純資産直入法)から子会社・関連会社株式への変更

有価証券はその保有目的に従って取得時において『売買目的有価証券』『満期保有目的の債券』『子会社株式及び関連会社株式』『その他有価証券』に分類されます。これらの保有目的区分は原則的には変更することはできませんが、正当な理由がある場合には保有目的区分を変更することができます(金融商品会計に関する実務指針 第80項参照)。

その他有価証券について、これを追加で取得することなどにより持ち分比率が上昇し、子会社株式または関連会社株式に該当することとなった場合には、原則として帳簿価額をもって、その他有価証券(投資その他の資産)から子会社株式又は関連会社株式(投資その他の資産)へと振り替えます(詳細はその他有価証券(全部純資産直入法)から子会社・関連会社株式への変更をご参照ください)。

ただし、その他有価証券の評価に関し、部分純資産直入法を採用している場合においては、前期末において評価益を計上している場合と、評価損を計上している場合とでは、以下のように取扱いが異なります(金融商品会計に関する実務指針第88項・同設例8参照)。

(保有目的区分の変更-部分純資産直入法)
前期末に評価益を計上している場合 振替時の帳簿価額をもって子会社株式・関連会社株式勘定へと振替ます(全部純資産直入れ法の場合と同様に処理します)。
前期末に評価損を計上している場合 前期末の時価をもって子会社株式・関連会社株式勘定へと振替ます。したがって、前期末に計上した評価損について、期首の振り戻し処理を行っている場合には、これの取消処理をおこない、前期末の時価を使って子会社株式・関連会社株式へと振替ます。
(具体例-その他有価証券(部分直入法)から子会社・関連会社株式への保有区分の変更)

保有する以下のE社株式(その他有価証券)について、この度追加で株式を取得し、当社のE社株式の持ち分比率が50%を超えることとなったため、これをその他有価証券から子会社株式へ保有目的区分の変更を行った。E社株式について、当期の必要な仕訳を示しなさい(追加取得分の仕訳は不要)。

(E社株式-従来より保有している分)
取得原価:500,000円(前期以前に取得)
前期末時価:460,000円
評価差額の取り扱い:部分純資産直入法
振替時(追加取得時)の時価:480,000円
当期末時価:540,000円

1.期首仕訳

E社株式は前期末において評価損40,000円(=取得原価500,000円-前期末時価460,000円)を計上しています。E社株式はその他有価証券に区分される有価証券であり、その他有価証券の翌期以降の評価差額の取り扱いは洗い替え法(期末の評価差額を翌期首に振り戻す方法)となりますので、期首において、前期末に計上した投資有価証券評価損40,000円について、期首にこれを振り戻す仕訳を行います。

(仕訳-期首)
借方 金額 貸方 金額
投資有価証券 40,000 投資有価証券評価損 40,000
2.振替時の仕訳

その他有価証券について部分純資産直入法を採用している場合において、前期末に評価損を計上しているときは、その他有価証券から子会社・関連会社株式への振替は前期末の時価で行う必要があります。したがって、当期首において振り戻し処理を行ったE社株式について、再び評価損を計上し、これを前期末の時価に再修正したのちに、その他有価証券から子会社・関連会社株式へと振り替える処理を行います。

(仕訳-振替時)
借方 金額 貸方 金額
投資有価証券評価損 40,000 投資有価証券 40,000
子会社株式
(前期末時価)
460,000 投資有価証券
(前期末時価)
460,000
3.決算時の仕訳

子会社株式・関連会社株式は原則として決算時の評価替えは行いませんので、決算時において子会社株式に分類されるE社株式の評価差額の認識を行いません。

(仕訳-決算時)
借方 金額 貸方 金額
仕訳なし

(関連項目)
有価証券の保有目的区分の変更(変更一覧表)
満期保有目的の債券の保有目的区分の変更について
売買目的有価証券からその他有価証券への保有目的区分の変更
その他有価証券から売買目的有価証券への保有目的区分の変更
売買目的有価証券から子会社・関連会社株式への区分の変更
子会社株式・関連会社株式からの保有目的区分の変更

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