満期保有目的の債券の評価(償却原価法・利息法)
満期まで所有する意図をもって保有する社債その他の債券を満期保有目的の債券といいます。満期保有目的の債券は原則として決算時の評価替えは行いませんが、債券を額面金額と異なる価額で取得した場合において、取得価額と額面金額との差額の性格が金利調整差額であると認められる場合には償却原価法に基づいて算定された価額を貸借対照表価額として処理することになります。
なお、償却原価法には利息法と定額法とがあります(定額法については満期保有目的の債券の評価(償却原価法・定額法)をご参照ください)。
満期保有目的の債券の評価-償却原価法・利息法
償却原価法のうち利息法とは、債券の帳簿価格に実効利子率を乗じた価額を利息配分額として各期の損益に配分する方法を言います(実効利子率は簿記検定などではあらかじめ与えられます)。
A: 各期の損益(利息配分額)=帳簿価格×実効利子率 |
この時、上記の利息配分額を債券の発行者より実際に受け取った債券の券面利子額(クーポン利子)と金利調整差額と分けて、金利調整差額を帳簿価額に加減することにより、債券の取得価額と額面金額との調整を行います。
B: クーポン利子額=債券の額面金額×クーポン利子率(債券の券面利子率) |
A-B: 金利調整差額(帳簿価格へ加減する調整額)=利息配分額-クーポン利子額 |
(具体例-償却原価法・利息法)
以下の条件の債券を発行日に取得した、取得価額と額面価額との差額を償却原価法(利息法)で処理した場合、投資有価証券の帳簿価額の推移は表のようになります。
(債券発行条件)
発行日x1年4月1日、満期日x4年3月31日
額面価額100,000円、発行価格97,000円、クーポン利息0.5%(利払日は毎年3月31日)、実効利子率1.531%
日付 | 調整前簿価 | 利息配分額 (A) |
クーポン利息 (B) |
調整後簿価 (簿価+A-B) |
x1年 4/1 |
97,000 | - | - | 97,000 |
x2年 3/31 |
97,000 | 1,485 | 500 | 97,985 |
x3年 3/31 |
97,985 | 1,500 | 500 | 98,985 |
x4年 3/31 |
97,985 | 1,515 | 500 | 100,000 |
利息配分額(A)=帳簿価格×実効利子率
クーポン利息(B)=額面価額×クーポン利子率
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
投資有価証券 | 985 | 有価証券利息 | 1,485 |
現金預金 | 500 | - | - |
利息配分額は『有価証券利息』を使って記帳します。有価証券利息の損益計算書における表示区分は営業外収益となります。
なお、x2年3月31日の投資有価証券の貸借対照表価額は97,985円となります。
利息法の金融商品会計に関する実務指針・法人税法での取り扱い
金融商品会計に関する実務指針では、満期保有目的の債券の償却原価法の適用に関し、利息法を原則とし、簡便法ある定額法は継続適用を条件とした容認規定となっています(金融商品会計に関する実務指針70)
ただし、法人税法施行令第139条の2においては償却原価法の適用は定額法とされており、会計上利息法と適用した場合は税務調整が必要となります。(法人税法における有価証券の分類・評価もご参照ください)。
(関連項目)
有価証券の分類・評価
有価証券の貸借対照表における表示
売買目的有価証券の評価(切放法と洗替法)
子会社株式・関連会社株式の評価
その他有価証券の評価(全部純資産直入法)
その他有価証券の評価(部分純資産直入法)
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