売買目的有価証券からその他有価証券への保有目的区分の変更

有価証券はその保有目的に従って取得時において『売買目的有価証券』『満期保有目的の債券』『子会社株式及び関連会社株式』『その他有価証券』に分類されます。これらの保有目的区分は原則的には変更することはできませんが、正当な理由がある場合には保有目的区分を変更することができます(金融商品会計に関する実務指針 第80項参照)。

売買目的有価証券への分類については、その取得当初の意図に基づいて行われるものであることから、取得後においてこれをその他有価証券へ変更・振り替えを行うことは原則としては認められません。ただし企業における資金運用方針の変更、または法令もしくは基準等の改正・適用に伴い有価証券のトレーディング取引を行わないこととした場合においては、全ての売買目的有価証券をその他有価証券に振り替えることができます。
売買目的有価証券について、その保有目的区分をその他有価証券に振り替えるときは、振替時の時価をもって振り替え、評価差額は振替時の損益として『有価証券運用損益』または『有価証券評価損益』勘定(営業外損益)を使って記帳することになります(金融商品会計に関する実務指針 第85項・設例3・設例8参照)。

(具体例-売買目的からその他有価証券への保有区分の変更)

当社は期中に取締役会において資金運用方針を変更し、有価証券の短期的な売買(トレーディング取引)を行わないこと決議した。これに伴い、当社が保有する以下のA社株式(売買目的有価証券として区分している)をその他有価証券へ振り替えることとなった。 振替時の仕訳をしめしなさい。

(A社株式)
取得原価:1,000,000円(前期以前に取得)
前期末時価:1,050,000円
評価差額の取り扱い(切り放し法
振替時(決議時)の時価:1,080,000円

(計算過程)
売買目的有価証券の評価差額の取り扱いは切放し法によっていますので、当期期首および振替時(決議時)のA社株式の帳簿価額は前期末時価と一致します。売買目的有価証券からその他有価証券への振替は振替時の時価で行い、評価差額は当期の損益として計上しますので評価差額を以下の算式よって求め、これを『有価証券運用損益』として計上します。

振替時の評価損益=振替時の時価1,080,000円-帳簿価額1,050,000円=30,000円(評価益)

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
投資有価証券
(その他有価証券)
1,080,000 有価証券
(売買目的有価証券)
1,050,000
有価証券運用損益 30,000

売買目的有価証券からその他有価証券へ保有目的区分を変更する時は変更時の時価で振替を行います。本設問においては売買目的有価証券をあらわす『有価証券』勘定からその他有価証券をあらわす『投資有価証券』勘定へ振替時の時価を使って振り替え、評価差額を『有価証券運用損益』として損益計上しています。

(関連項目)
有価証券の保有目的区分の変更(変更一覧表)
満期保有目的の債券の保有目的区分の変更について
その他有価証券から売買目的有価証券への保有目的区分の変更
売買目的有価証券から子会社・関連会社株式への区分の変更
子会社株式・関連会社株式からの保有目的区分の変更
その他有価証券(全部純資産直入法)から子会社・関連会社株式への変更
その他有価証券(部分純資産直入法)から子会社・関連会社株式への変更

スポンサードリンク