減価償却の種類(まとめ)

建物や機械・自動車などの固定資産は長期間にわたって事業で使用されるものであり、長期間の使用や時の経過により徐々にその資産的な価値が減少していくものです。このような性質を持つ固定資産について、その取得価格を耐用年数を通して徐々に費用化していく会計上の手続きを減価償却といいます。
減価償却の具体的な計算方法や耐用年数に関して税法に規定があり、実務上はこの税法の定める方法・耐用年数を使用して各年度の減価償却費を算出します。

減価償却の方法

税法の減価償却の計算方法は平成19年4月1日、および平成24年4月1日に改正が入っており、固定資産の取得時期により償却方法が異なります(簿記検定などの場合は問題の指示に従ってください)。

(平成19年3月31日以前に取得した資産について)
特徴 計算式
旧定額法 固定資産の取得価格から残存価格(※1)を控除した残額を毎期同額ずつ償却します。 (取得価格-残存価格)×旧定額法の償却率
旧定率法 固定資産の未償却残高(※2)に旧定率法償却率を乗じて償却費を算出します。未償却残高は毎年逓減するため償却額は毎年減少します。 未償却残高×旧定率法の償却率
旧生産高比例法 鉱業権や鉱業用資産に関する償却方法です。その年の採掘量を基準とした償却計算を行います。 {(取得価額-残存価額)/その資産の耐用年数(※3)の期間内におけるその資産の属する鉱区の採掘予定数量}×その事業年度におけるその鉱区の採掘数量

※1 旧定額法における残存価格については、有形固定資産の場合は取得価格の10%、無形固定資産の場合は0円として計算します。
※2 旧定率法の未償却残高とは取得価格-前期末までの既償却額として算定します。
※3 その資産の属する鉱区の採掘予定年数がその資産の耐用年数より短い場合には、その採掘予定年数になります。

なお有形固定資産について上記の計算の結果、償却累計額が取得価格の95%(償却可能限度額)に達した場合、翌年から次の算式により残存価格1円まで償却することができます。

(取得価額×5%-1円)×各事業年度の月数/60

(平成19年4月1日以後に取得した資産について)
特徴 計算式
定額法 固定資産の取得価格に定額法償却率を乗じて毎期同額ずつ償却します。残存価格はありません。 取得価格×定額法の償却率
定率法 固定資産の未償却残高(※1)に定率法償却率(※2)を乗じて償却費を算出します。未償却残高は毎年逓減するため償却額は毎年減少します。 未償却残高×定率法の償却率(調整前償却額)。
ただし調整前償却額が償却保証額に満たなくなった年分以後は、改定取得価額×改定償却率によって算出する。(※3)
生産高比例法 鉱業権や鉱業用資産に関する償却方法です。その年の採掘量を基準とした償却計算を行います。 {取得価額/その資産の耐用年数(※4)の期間内におけるその資産の属する鉱区の採掘予定数量}×その事業年度におけるその鉱区の採掘数量

※1 未償却残高とは取得価格-前期末までの既償却額として算定します。
※2 定額法の償却率を2.5倍した償却率を使用します(この償却方法を250%定率法といいます。実際に計算するときは耐用年数省令の償却率表を使用します)。
※3 償却保証額は取得価格に保証率を乗じて算出されます。改定取得価額とは調整前償却額が最初に償却保証額に満たなくなる事業年度の期首未償却残高をいいます。保証率・改定償却率は耐用年数省令に規定されています。
※4 その資産の属する鉱区の採掘予定年数がその資産の耐用年数より短い場合には、その採掘予定年数になります。

(平成24年4月1日以後に取得した定率法対象資産について)
特徴 計算式
定率法 固定資産の未償却残高(※1)に定率法償却率(※2)を乗じて償却費を算出します。未償却残高は毎年逓減するため償却額は毎年減少します。 未償却残高×定率法の償却率(調整前償却額)。
ただし調整前償却額が償却保証額に満たなくなった年分以後は、改定取得価額×改定償却率によって算出する。(※3)

※1 未償却残高とは取得価格-前期末までの既償却額として算定します。
※2 定額法の償却率を2.0倍した償却率を使用します(この償却方法を200%定率法といいます。実際に計算するときは耐用年数省令の償却率表を使用します)。
※3 償却保証額は取得価格に保証率を乗じて算出されます。改定取得価額とは調整前償却額が最初に償却保証額に満たなくなる事業年度の期首未償却残高をいいます。保証率・改定償却率は耐用年数省令に規定されています。(200%定率法の採用により、保証率・改定償却率も見直されています)。

中古資産の耐用年数

中古資産の耐用年数については、その事業の用に供した時以後の使用可能期間として見積もられる年数を耐用年数として償却計算を行いますが、一般的にはそのような見積もりは行わず、以下の簡便法によって耐用年数を算定します(耐用年数省令第三条)。

(中古資産の耐用年数の算定)
経過年数 計算式
法定耐用年数の全部を経過した資産 その資産の法定耐用年数×20%
法定耐用年数の一部を経過した資産 (法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%

上記計算の結果発生した1年未満の端数は切り捨てます。ただし、年数が2年に満たない場合は2年とします。
取得した中古資産に対し、当該資産を事業の用に供するに当たって支出した資本的支出の金額が当該資産の再取得価額の100分の50(新品で同様の資産を購入した時の価格の50%)に相当する金額を超えるときは、当該資産については法定耐用年数を使用して償却計算を行う必要があります(耐用年数通達1-5-2)。
また取得した中古資産に対し、当該資産を事業の用に供するに当たって支出した資本的支出の金額が当該中古資産の取得価格の50%を超えるとき(再取得価格の50%以下である場合に限る)は上記の簡便法を使用できず、以下の算式により耐用年数を算定します(耐用年数通達1-5-6参照)。

(取得価格+資本支出)÷(取得価格÷簡便法耐用年数+資本的支出÷法定耐用年数)

なお中古資産の減価償却の詳細に関しましては、中古資産の減価償却費に関する仕訳・会計処理をご参照ください。

法定償却方法

償却方法の選択に関しては適用しようとする事業年度の確定申告期限までに届け出る必要があります。もし届け出なかった場合は以下の法定償却方法を選択したものとみなされます(法人税法施行令53条、所得税法施行令125条)。

(法定償却方法)
法定償却方法
法人税(下記を除く) 定率法または旧定率法
法人税(H10/4以降取得建物) 定額法または旧定額法
所得税 定額法または旧定額法
鉱業権・鉱業用資産 生産高比例法または旧生産高比例法
無形固定資産 定額法または旧定額法

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