有価証券の分類・評価
有価証券とは広く財産権を表章する証券全般を指す概念ですが、会計や簿記でいう有価証券とは金融商品取引法に規定する有価証券をいい、いわゆる国債・地方債(合わせて公債といいます)・社債・株式などを指します。
有価証券に関する分類や評価基準に関しては金融商品会計基準のほか法人税上にも規定が置かれていますが、その分類や評価はおおむね共通しており、以下それぞれについてご説明いたします。
金融商品会計基準における有価証券の分類・評価
金融商品に係る会計基準では、保有目的などから有価証券を以下の4つに分類しています(簿記検定などの受験生はこちらの分類を中心に学習してください)。
1.売買目的有価証券
時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券をいい、貸借対照表上は時価評価し、評価差額は当期の損益となります。
2.満期保有目的の債券
満期まで所有する意図をもって保有する社債その他の債券をいいます。貸借対照表上は取得原価で評価しますが、債権を債権金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、取得価額と債権金額との差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額を貸借対照表価格とします。
3.子会社株式及び関連会社株式
子会社及び関連会社の株式です。子会社とは、株式の過半数を保有するなどして株主総会や取締役会などの意思決定機関を支配している場合における当該会社をいい、関連会社とは、支配しているとまでは言えないが出資や人事などの関係を通じて重要な影響を与えることができる会社を言います。これらの株式は貸借対照表上は取得原価で評価します。
4.その他有価証券
上記のいずれにも当てはまらない有価証券をいいます。貸借対照表上は時価評価しますが、評価差額については、これを純資産の部に直接全額計上する(全部資本直入法)、または評価損のみを当期の損失(部分資本直入法)として処理することになります。原則的には全部資本直入法を採用することになりますが継続適用を条件に部分資本直入法も採用できます。また純資産の部に計上された評価差額については税効果会計が適用されます。
評価差額のまとめ(金融商品会計基準)
評価基準 | 評価差額 | |
売買目的有価証券 | 時価 | 当期の損益 |
満期保有目的の債券 | 償却原価 | 当期の損益(受取利息) |
子会社・関連会社株式 | 原価 | - |
その他有価証券 | 時価 | 純資産(または評価損失) |
なお、時価のない有価証券は取得原価または償却原価で評価します。
(ここまでの関連項目)
有価証券の貸借対照表における表示
有価証券の取得・購入時の仕訳
有価証券を売却した時の仕訳
売買目的有価証券の評価(切放法と洗替法)
満期保有目的の債券の評価(償却原価法・利息法)
満期保有目的の債券の評価(償却原価法・定額法)
法人税法における有価証券の分類・評価
法人税法61条の3、法人税法施行令119条の2では有価証券の分類・評価について下記のように定めています。表現の違い等はありますが、おおむね上記の金融商品会計基準に準拠したものとなっております(詳細には異なる点もありますので完全に一致するものではありません)
1.売買目的有価証券
短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した有価証券をいいます。時価によって評価を行い、評価差額は当期の損益(益金・損金)となります。
2.満期保有目的等有価証券
償還期限の定めのある有価証券(売買目的有価証券に該当するものを除く)のうち、その償還期限まで保有する目的で取得した有価証券をいいます。取得原価で評価しますが、償還期限及び償還金額の定めのある有価証券について、帳簿価額と償還金額とに差額がある場合には、これを当該事業年度に配分すべき金額を加算し又は減算した金額(償却原価)で評価します。
3.その他の有価証券
上記以外の有価証券をいいます。取得原価で評価することになります。
評価差額のまとめ(法人税法)
評価基準 | 評価差額 | |
売買目的有価証券 | 時価 | 損金・益金 |
満期保有目的等有価証券 | 償却原価 | 損金・益金 |
その他の有価証券 | 原価 | - |
償却原価法に関しては法人税法上は定額法を使用します(法人税法施行令第139条の2)が金融商品会計基準では利息法が原則となり定額法は継続適用を条件として選択が可能という扱いになっています(金融商品会計に関する実務指針70)
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