有価証券を売却した時の仕訳

有価証券を売却した時は、売却する有価証券の帳簿価額(取得価額または前期末の時価)と売却価格との差額を『有価証券売却損(益)』勘定または『投資有価証券売却損(益)』勘定などを使って記帳します。
なお、同一銘柄の有価証券を複数回に分けて購入した場合、売却した有価証券の払出単価は移動平均法又は総平均法のいずれかの方法で算出します(法人税法上における法定算出方法は移動平均法となります)。

(有価証券の払出単価の算出方法)
移動平均法 有価証券の取得をする都度、その有価証券の取得の直前の帳簿価額と、取得をした有価証券の取得価額との合計額をこれらの有価証券の総数で除して平均単価を算出し、その算出した平均単価をもってその払出単価とする方法
総平均法 当該事業年度の期首において有していたその有価証券の帳簿価額と、当該事業年度において取得をしたその有価証券の取得価額の総額との合計額をこれらの有価証券の総数で除して平均単価を算出し、その算出した平均単価をもって払出単価とする方法
(具体例1-売買目的有価証券・売却時・移動平均法)

3月10日にA社株式1,000株を1株当たり1,000円で売却した。販売手数料として現金10,000円を差し引かれて代金は現金で受け取った。なお、A株式の取引履歴は下記のとおりである(当社の決算日は3月31日)。

6月1日 600株取得 1株当たり600円で取得
8月1日 300株売却 (残り300株)
9月1日 900株取得 1株当たり900円で取得

(計算過程)
8月1日の払出単価は1株当たり600円、払出後の残り株数は300株
3月10日時点の平均単価は(600円×300株+900円×900株)÷(300株+900株)=825円

よって、3月1日の払出価格は825円×1000株=825,000円

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
現金 990,000 有価証券 825,000
支払手数料 10,000 有価証券売却益 175,000

なお、購入時の付随費用は有価証券の取得価額に含めますが、売却時の諸費用は『支払手数料』(営業外費用)として別途処理します(簿記検定などでは問題の指示に従ってください)。

(具体例2-売買目的有価証券・売却時・総平均法)

3月10日にA社株式1,000株を1株当たり1000円で売却した。販売手数料として現金10,000円を差し引かれて代金は現金で受け取った。なお、A株式の取引履歴は下記のとおりである(当社の決算日は3月31日。当社は有価証券の払出単価の算出方法として総平均法を届け出ている)。

6月1日 600株取得 1株当たり600円で取得
8月1日 300株売却 (残り300株)
9月1日 900株取得 1株当たり900円で取得

(計算過程)
当期の平均払出単価は(600円×600株+900円×900株)÷(600株+900株)=780円

よって、3月1日の払出価格は780円×1000株=780,000円

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
現金 990,000 有価証券 780,000
支払手数料 10,000 有価証券売却益 220,000

有価証券売却損益の損益計算表上の表示

有価証券を売却した時の売却損益の損益計算表上の表示科目と表示区分は下記の通りとなります。

(有価証券売却損益の表示)
有価証券の分類 表示科目 表示区分
売買目的有価証券 有価証券売却損(益) 営業外費用(収益)
満期保有目的の債券 投資有価証券売却損(益) 営業外費用(収益)
子会社株式・関連会社株式 関係会社株式売却損(益) 特別損失(利益)
その他有価証券 投資有価証券売却損(益) 営業外費用(収益)

『有価証券売却損(益)』と『投資有価証券売却損(益)』に関しては、損失と利益とを相殺した純額で計上します。また臨時偶発的な理由による売却損益に関しては特別損失または特別利益の区分の表示します。

(関連項目)
有価証券の分類・評価
有価証券の貸借対照表における表示
有価証券の取得・購入時の仕訳
約定日基準(有価証券の売買契約の認識)についての会計処理
修正受渡日基準(有価証券の売買契約の認識)についての会計処理
端数利息(有価証券の売買)に関する計算と仕訳

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