修正受渡日基準(有価証券の売買契約の認識)についての会計処理

有価証券の売買契約時において、どの時点から当事者が有価証券の譲渡を認識(買手は有価証券の発生を認識し、売手は有価証券の消滅を認識するといいます)するかについて、以下の2通りの方法があります(金融商品会計に関する実務指針 第22項参照)。

認識基準 内容 参照先
約定日基準 売買約定日に買手は有価証券の発生を認識し、売手は有価証券の消滅を認識します。有価証券の売買認識に関する原則的方法となります。 約定日基準についての仕訳・会計処理
修正受渡日基準 買手は約定日から受渡日までの時価の変動のみを認識し、また、売手は売却損益のみを約定日に認識する方法をいいます。保有目的区分ごとにこの方法を採用するか決定します。 当ページ下記参照

上記の方法は、約定日から受渡日までの期間が市場の規則又は慣行に従った通常の期間である場合に採用されるものであり、約定日から受渡日までの期間が通常の期間よりも長い場合、売買契約は先渡契約であり、買手も売手も約定日に当該先渡契約による権利義務の発生を認識することになります。
受渡しに係る通常の期間とは、原則として、我が国の上場有価証券については、証券取引所の定める約定日から受渡日までの日数など、金融商品の種類ごとに、かつ、市場又は取引慣行ごとに、通常受渡しに要する日数をいいます(金融商品会計に関する実務指針 第23項参照)。
なお、約定日基準によっても修正受渡日基準によっても計上される損益に違いはありません。

修正受渡日基準に関する仕訳・会計処理について

修正受渡日基準では、買手・売手ともに約定日ではなく受渡日において有価証券の発生・消滅を認識します。ただし、買手は受渡日までの時価の変動差額のみを、売手は売却損益のみを認識することになります。

(具体例-修正受渡日基準・売買目的有価証券)

A社(売手)が保有する売買目的有価証券を以下のスケジュールでB社(買手)に売却した。当該有価証券はB社においても売買目的有価証券として認識している。A社・B社における修正受渡日基準による仕訳を示しなさい(評価差額の処理は洗替法を採用)。

(売買スケジュール)
3月30日:A社とB社において、A社保有の有価証券(簿価5,500円)を6,000円で売買する契約を締結した。
3月31日:A社・B社ともに決算日であり、上記有価証券の時価は6,300円であった。
4月1日:A社・B社ともに期首振替処理を行った。
4月2日:A社はB社に有価証券を引き渡し、代金6,000円を現金で受け取った。

1.売買目的有価証券-売手の仕訳

(仕訳-A社(売手)3月30日)
借方 金額 貸方 金額
有価証券 500 有価証券売却益 500
(仕訳-A社(売手)3月31日)
借方 金額 貸方 金額
仕訳なし
(仕訳-A社(売手)4月1日)
借方 金額 貸方 金額
仕訳なし
(仕訳-A社(売手)4月2日)
借方 金額 貸方 金額
現金 6,000 有価証券 6,000

売買目的有価証券については、売却時に時価(売却価額)評価し、この時点で売却損益を計上しますが、実務上は帳簿価額のままとし、期末に売却価額で評価することも認められています(下記の具体例・その他有価証券と同様の処理です。金融商品会計に関する実務指針 設例1参照)。修正受渡日基準においては有価証券本体の消滅の認識は受渡日に行います。

2.売買目的有価証券-買手の仕訳

(仕訳-B社(買手)3月30日)
借方 金額 貸方 金額
仕訳なし
(仕訳-B社(買手)3月31日)
借方 金額 貸方 金額
有価証券 300 有価証券評価益 300
(仕訳-B社(買手)4月1日)
借方 金額 貸方 金額
有価証券評価益 300 有価証券 300
(仕訳-B社(買手)4月2日)
借方 金額 貸方 金額
有価証券 6,000 現金 6,000

修正受渡日基準の場合、買手は受渡日に有価証券の発生を認識します。ただし、約定日から受渡日までの価格変動分に関しては、買手のリスクとして評価損益を計上することになります。

(具体例-修正受渡日基準・その他有価証券)

A社(売手)が保有するその他有価証券を以下のスケジュールでB社(買手)に売却した。当該有価証券はB社においてもその他有価証券として認識している。A社・B社における修正受渡日基準による仕訳を示しなさい(評価差額の処理は洗替法を採用。ただし、税効果会計に関しては考慮しない)。

(売買スケジュール)
3月30日:A社とB社において、A社保有の有価証券(簿価5,500円)を6,000円で売買する契約を締結した。
3月31日:A社・B社ともに決算日であり、上記有価証券の時価は6,300円であった。
4月1日:A社・B社ともに期首振替処理を行った。
4月2日:A社はB社に有価証券を引き渡し、代金6,000円を現金で受け取った。

1.その他有価証券-売手の仕訳

(仕訳-A社(売手)3月30日)
借方 金額 貸方 金額
仕訳なし
(仕訳-A社(売手)3月31日)
借方 金額 貸方 金額
投資有価証券 500 投資有価証券売却益 500
(仕訳-A社(売手)4月1日)
借方 金額 貸方 金額
仕訳なし
(仕訳-A社(売手)4月2日)
借方 金額 貸方 金額
現金 6,000 有価証券 6,000

その他有価証券については、期末に時価評価しますので、期末に売却損益(売却価額=時価として評価します)を認識します。なお、期首振替仕訳は必要ありません(金融商品会計に関する実務指針 設例1参照)。 上記の売買目的有価証券と同様、修正受渡日基準においては有価証券本体の消滅の認識は受渡日に行います。

2.その他有価証券-買手の仕訳

(仕訳-B社(買手)3月30日)
借方 金額 貸方 金額
仕訳なし
(仕訳-B社(買手)3月31日)
借方 金額 貸方 金額
投資有価証券 300 その他有価証券評価差額金 300
(仕訳-B社(買手)4月1日)
借方 金額 貸方 金額
その他有価証券評価差額金 300 投資有価証券 300
(仕訳-B社(買手)4月2日)
借方 金額 貸方 金額
投資有価証券 6,000 現金 6,000

上記の売買目的有価証券と同様、修正受渡日基準の場合は買手は受渡日に投資有価証券の発生を認識します。ただし、約定日から受渡日までの価格変動分に関しては、買手のリスクとして評価差額を計上することになります。

(関連項目)
有価証券の取得・購入時の仕訳
有価証券を売却した時の仕訳
端数利息(有価証券の売買)に関する計算と仕訳

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