吸収合併の仕訳の基礎(企業結合会計)
合併とは2つ以上の会社が1つの会社になることをいいます。
合併には吸収合併(合併当事企業のうちの1つの会社が存続し、残りの会社が解散することによって解散する会社の資産や負債を吸収する形態)と新設合併(合併当事企業のすべての会社が解散し、合併によって新しく設立された会社が合併によって消滅する会社の資産や負債を引き継ぐ形態)とがあります。
取得と判定された合併の会計処理はパーチェス法が採用されます。パーチェス法による合併処理は以下の手順で行います(合併後に存続する会社が取得企業となる場合の吸収合併を前提としています)。
1.合併存続会社は消滅会社より引き継いだ資産及び負債を、合併時における時価で引き継ぎます。
2.合併存続企業は合併の対価として支払った現金や発行した株式などの合併時点における時価を基礎として消滅企業の取得原価を算定します。 3.引き継いだ資産及び負債の時価の純額と消滅会社の取得原価との差額をのれんとして計上します。 |
(具体例-吸収合併における合併受入仕訳の基礎)
A社(取得企業)はB社を吸収合併した。B社の合併直前の貸借対照表は以下の通りである。A社の合併仕訳を示しなさい。
諸資産 | 5,000 | 諸負債 | 2,000 |
資本金 | 1,800 | 利益剰余金 | 1,200 |
1.合併に際し、A社はB社の株主に対し100株のA社株式を交付した。
2.A社株式の合併期日における時価は1株当たり50円、B社の諸資産の時価は6,000円、諸負債の時価は2,000円であった。
3.A社の増加資本はすべて資本金として計上するものとする。
(計算過程)
B社の取得原価:交付するA社株式100株×合併期日におけるA社株式の時価@50円=5,000円
B社から受け入れた諸資産の価額:6,000円(合併期日における時価)
B社から引き受けた諸負債の価額:2,000円(合併期日における時価)
受け入れた資産及び引き受けた負債の純額:資産6,000円-負債2,000円=4,000円
のれん計上額:取得原価5,000円-資産負債の純額4,000円=1,000円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
諸資産 | 6,000 | 諸負債 | 2,000 |
のれん | 1,000 | 資本金 | 5,000 |
吸収合併における存続企業(取得企業)であるA社において、消滅企業B社の取得原価は対価として交付する株式の合併期日における時価となりますので、交付する株式100株に合併期日の時価@50円を乗じた5,000円となります。
また受け入れる諸資産・諸負債は合併期日における時価をもとに算定しますので、それぞれ6,000円と2,000円とになります。
B社の取得原価と諸資産・諸負債の純額との差額はのれんとして計上しますが、本設問では取得原価5,000円に対し資産・負債の純額は4,000円となっているため、差額の1,000円がのれんとして計上されます。
なお、B社の取得原価の金額だけA社の資本が増加しますが、本設問においてはこれを全額資本金とするとありますので、資本金を5,000円増加させることになります。
(関連項目)
のれんの仕訳と会計処理の基礎(企業結合会計)
合併の対価として自己株式を処分した時の処理(企業結合会計)
株式交換の仕訳の基礎(個別財務諸表上の処理)
逆取得と判定された吸収合併の仕訳の基礎(個別財務諸表)
吸収合併(共同支配企業の形成)の仕訳・会計処理
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