逆取得と判定された吸収合併の仕訳の基礎(個別財務諸表)

2016年10月23日 at 8:30 PM

ある会社が他の会社を吸収合併する場合において、存続する会社ではなく、消滅する会社の株主の方が合併後の企業に対する支配権を獲得するなど、存続する企業とは異なる方の企業が取得企業と判定される企業結合を逆取得といいます。

段階取得の場合における合併仕訳の基礎(個別財務諸表)

2016年9月11日 at 6:02 PM

吸収合併など取得が複数の取引により達成されることを段階取得といいます。段階取得における被取得企業の取得原価の算定および個別財務諸表における会計処理の手順は以下のようになります(企業結合に関する会計基準 第25項(1)、企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第46項等参照)。

1.被取得企業の取得原価を算定する

取得が複数の取引により達成された場合における被取得企業の取得原価の算定は、個別財務諸表上、支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額をもって、被取得企業の取得原価とします。
例えば、取得企業(吸収合併存続会社)の株式が交付され、取得企業が吸収合併直前に被取得企業の株式を保有していた場合の取得の対価は、取得企業が交付する取得企業の株式の時価と合併期日の被取得企業の株式(抱合せ株式といいます)の帳簿価額を合算し算定されることになります。

企業の取得原価=対価として交付する株式の企業結合日における時価+抱合せ株式の簿価

なお、企業結合日直前の被取得企業の株式の帳簿価額については、以下の点に留意する必要があります(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第46項下段参照)。

1.被取得企業の株式をその他有価証券に分類し、期末に時価による評価替えを行っていても、被取得企業の株式の帳簿価額は、時価による評価前の価額となります(したがって、通常は時価評価差額の振り戻し後の金額となります)。ただし、その他有価証券の評価差額の会計処理として部分純資産直入法を採用しており、当該有価証券について評価差損を計上している場合には、時価による評価後の価額を使用します。

2.被取得企業の株式に対して投資損失引当金を計上している場合には、当該金額を控除した価額となります。

3.被取得企業の株式を企業結合日前に減損処理している場合には、減損処理後の帳簿価額を基礎として算定します。

2.のれん又は負ののれんを計上する

取得原価は被取得企業から受け入れた資産及び引き受けた負債のうち、企業結合日時点において識別可能なもの(識別可能資産及び負債)の企業結合日時点の時価を基礎として当該資産及び負債に配分します(企業結合に関する会計基準 第28項参照)。
取得原価が、受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額(資産の時価と負債の時価との差額)を上回る場合にはその超過額はのれんとし、下回る場合には、その不足額は負ののれんとして処理することになります。

企業の取得原価-(受け入れた資産の時価-引き受けた負債の時価)=のれん※

※ 取得原価が受け入れた資産の時価と負債の時価との差額(資産負債の純額)を上回る場合にはのれん、下回る場合には負ののれんとして処理します。

3.増加する払込資本の額と内訳の決定

段階取得の場合、増加する払込資本は新たに交付する株式の企業結合時における時価をもとに算定します。

払込資本の増加額=新たに交付した株式の時価

なお段階取得の場合においては、払込資本の増加と同時に取得企業が吸収合併直前保有していた被取得企業の株式(抱き合わせ株式)の帳簿価額を減額することになります。

(具体例-段階取得(個別会計上)の場合)

A社(取得企業)はB社を吸収合併した。合併期日は×1年4月1日(A社の決算日は毎年3月31日)であり、B社の合併直前の貸借対照表は以下の通りである。A社の個別財務諸表における合併仕訳を示しなさい。

(B社の貸借対照表)
諸資産 5,000 諸負債 2,000
資本金 1,800
利益剰余金 1,200

1.A社は過年度においてB社株式40株(その他有価証券)を取得している。
2.B社株式の取得原価は1株当たり25円、×1年3月31日におけるB社株式の時価は30円(税効果会計は考慮しない)。
3.合併に際し、A社はB社の株主に対し160株のA社株式を交付した。
4.A社株式の企業結合日における時価は1株当たり28円、B社の諸資産の時価は6,000円、諸負債の時価は2,000円であった。
5.A社の増加する払込資本はすべて資本金として計上するものとする。

(計算過程1-B社株式の評価差額の振り戻し)
被取得企業の株式をその他有価証券に分類し、期末に時価による評価替えを行っていても、被取得企業の取得原価を算定するうえにおいて被取得企業の株式の帳簿価額は、時価による評価前の価額となります。したがって時価評価差額の振り戻しを行います。

前期末に計上された評価差額:(@30円-@25円)×40株=200円

(仕訳-A社の合併受入仕訳)
借方 金額 貸方 金額
その他有価証券評価差額金 200 投資有価証券 200

この仕訳により、B社株式の帳簿価額は1,000円(=@25円×40株)となり、時価評価前の価格となります。

(計算過程2-取得原価及びのれんの算定)
B社の取得原価:交付するA社株式160株×企業結合日におけるA社株式の時価@28円+B社株式の帳簿価額1,000円=5,480円
B社から受け入れた諸資産に配分される取得原価:6,000円(企業結合日における時価)
B社から引き受けた諸負債に配分される取得原価:2,000円(企業結合日における時価)
受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額:資産6,000円-負債2,000円=4,000円
のれん計上額:取得原価5,480円-資産負債に配分された純額4,000円=1,480円(正ののれん)
増加する払込資本の額(すべて資本金となります):新たに交付した株式の時価=4,480円

(仕訳-A社の個別上の合併受入仕訳)
借方 金額 貸方 金額
諸資産 6,000 諸負債 2,000
のれん 1,480 投資有価証券 1,000
資本金 4,480

なお連結会計上は、支配を獲得するに至った個々の取引すべての企業結合日における時価をもって、被取得企業の取得原価を算定することになります。この時、当該被取得企業の取得原価と、支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額(個別上の取得原価)との差額は、連結会計上、当期の段階取得に係る損益として処理することになります(企業結合に関する会計基準 第25項(2)等参照)。

(関連項目)
取得原価の算定 とパーチェス法の基礎(企業結合会計)
吸収合併の仕訳の基礎(企業結合会計)
企業結合に係る特定勘定の仕訳の基礎
合併の対価として自己株式を処分した時の処理(企業結合会計)

合併の対価として自己株式を処分した時の処理(企業結合会計)

2016年9月2日 at 7:40 PM

吸収合併などの企業結合の対価として、新株式を交付する代わりに(または新株式の交付と合わせて)自己株式を処分することがあります。
企業結合の対価として自己株式を処分する場合の手順は以下の通りです。

吸収合併の仕訳の基礎(企業結合会計)

2016年8月28日 at 8:52 PM

合併とは2つ以上の会社が1つの会社になることをいいます。