取得原価の算定とパーチェス法の基礎(企業結合会計)
取得とされた企業結合においては、結合当事企業のうち、いずれが取得企業かを決定することになります(企業結合に関する会計基準 第9項参照)。
結合当事企業のうち、いずれが取得企業となるかを決定すると、取得企業は被取得企業または取得した事業の取得原価を算定し、取得原価をもって資産や負債などを受け入れるための処理を行うことになります。
この時、取得企業にとっての被取得企業又は取得した事業の取得原価は、原則として、取得の対価(支払対価)となる現金や資産あるいは交付した株式の企業結合日における時価で算定することになります(パーチェス法 企業結合に関する会計基準 第23・24項参照)。
企業の取得原価=対価として交付する現金や株式の企業結合日における時価 |
なお、取得原価は被取得企業から受け入れた資産及び引き受けた負債のうち、企業結合日時点において識別可能なもの(識別可能資産及び負債)の企業結合日時点の時価を基礎として当該資産及び負債に配分します(企業結合に関する会計基準 第28項参照)。
取得原価が、受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額(資産の時価と負債の時価との差額)を上回る場合にはその超過額はのれんとし、下回る場合には、その不足額は負ののれんとして処理することになります。
企業の取得原価-(受け入れた資産の時価-引き受けた負債の時価)=のれん※ |
※ 取得原価が受け入れた資産の時価と負債の時価との差額(資産負債の純額)を上回る場合にはのれん、下回る場合には負ののれんとして処理します。
(具体例-パーチェス法の基礎)
A社(取得企業)はB社を吸収合併した。B社の合併直前の貸借対照表は以下の通りである。A社の合併仕訳を示しなさい。
諸資産 | 5,000 | 諸負債 | 2,000 |
資本金 | 1,800 | 利益剰余金 | 1,200 |
1.合併に際し、A社はB社の株主に対し100株のA社株式を交付した。
2.A社株式の企業結合日における時価は1株当たり50円、B社の諸資産の時価は6,000円、諸負債の時価は2,000円であった。
3.A社の増加資本はすべて資本金として計上するものとする。
(計算過程)
B社の取得原価:交付するA社株式100株×企業結合日におけるA社株式の時価@50円=5,000円
B社から受け入れた諸資産に配分される取得原価:6,000円(企業結合日における時価)
B社から引き受けた諸負債に配分される取得原価:2,000円(企業結合日における時価)
受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額:資産6,000円-負債2,000円=4,000円
のれん計上額:取得原価5,000円-資産負債に配分された純額4,000円=1,000円(正ののれん)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
諸資産 | 6,000 | 諸負債 | 2,000 |
のれん | 1,000 | 資本金 | 5,000 |
取得企業であるA社において、被取得企業B社の取得原価は対価として交付する株式の企業結合日における時価となりますので、交付する株式100株に企業結合日の時価@50円を乗じた5,000円となります。
また受け入れる諸資産・諸負債は企業結合日におけるそれぞれの時価をもとに取得原価を配分しますので、それぞれ6,000円と2,000円とになります。
B社の取得原価と諸資産・諸負債の純額との差額はのれんとして計上しますが、本設問では取得原価5,000円に対し資産・負債の純額は4,000円となっているため、取得原価の方が超過しており、正ののれんが計上されます。
なお、B社の取得原価の金額だけA社の資本が増加しますが、本設問においてはこれを全額資本金とするとありますので、資本金を5,000円増加させることになります。
(関連項目)
のれんの仕訳と会計処理の基礎(企業結合会計)
企業結合に係る特定勘定の仕訳の基礎
合併の対価として自己株式を処分した時の処理(企業結合会計)
株式交換の仕訳の基礎(個別財務諸表上の処理)
スポンサードリンク