株式交換の仕訳の基礎(個別財務諸表上の処理)

株式交換とは、株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることをいいます(会社法第2条31参照)。

株式交換によって、その発行済み株式のすべてを他の会社に取得されることになりますので、取得された当該会社は他の会社の完全子会社、いっぽう取得した方の会社は完全親会社となります。

株式交換(株式交換完全親会社が取得企業となる場合)の個別財務諸表上における会計処理は、株式交換完全親会社は株式交換完全子会社の株主などに交付した株式の株式交換日の時価などをもとに株式交換完全子会社の取得原価を算定し、これを『子会社株式』などの勘定科目を使って資産として計上します。
企業結合の対価として、株式交換完全親会社が新株を発行した場合には、払込資本(資本金又は資本剰余金)の増加として処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第110項以下参照)。

たとえば、株式交換に伴って株式交換完全親会社が株式交換完全子会社の株主に時価1,000円分の新株を交付し、これをすべて資本金とした場合の仕訳は以下のようになります。

(仕訳-株式交換完全親会社の仕訳)
借方 金額 貸方 金額
子会社株式 1,000 資本金 1,000

借方の株式交換による被取得会社(株式交換完全子会社)の取得原価は、株式交換完全子会社の株主に交付した株式の株式交換日における時価などをもとに算定します。
また貸方の増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)については、会社法の規定に基づき決定することになります。

いっぽう、株式交換完全子会社にとっては資産の移動などはありませんので個別財務諸表における仕訳は必要はありません(株式交換完全親会社が株式交換完全子会社の新株予約権者に新株予約権を交付する場合などの取り扱いについては企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第115-2、404-2項等参照)。

なお、取得と判定された企業結合においてはパーチェス法が採用され、取得対価と受け入れた資産・負債の純額との差額をのれん(または負ののれん)として認識することになりますが、株式交換の個別財務諸表においては、被取得企業の資産・負債の受入を行いませんので、個別財務諸表においてのれんは計上されません(連結上でのれんの計上をおこないます。企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第116項参照)

(具体例-株式交換の個別上の仕訳)

A社(取得企業)を完全親会社、B社を完全子会社とする株式交換を行った。B社の株式交換直前の貸借対照表は以下の通りである。A社の株式交換時における個別上の仕訳を示しなさい。

(B社の貸借対照表)
諸資産 5,000 諸負債 2,000
資本金 1,800
利益剰余金 1,200

1.A社およびB社の発行済み株式はそれぞれ100株である。
2.A社はB社株主にA社の株式を交付する。その際、株式交換における交換比率は1:0.5、A社株式の株式交換日における時価は1株当たり100円、B社の諸資産の時価は6,000円、諸負債の時価は2,000円であるものとする。

3.A社の増加資本はすべて資本金として計上するものとする。

(計算過程)
B社の株主に交付するA社株式数:B社株式数100株×交換比率0.5=50株
B社の取得原価:交付するA社株式50株×交換日におけるA社株式の時価@100円=5,000円

(仕訳-A社の株式交換時の仕訳)
借方 金額 貸方 金額
子会社株式 5,000 資本金 5,000

完全親会社A社にとっての完全子会社B社の取得原価は株式交換時における交付株式の時価などをもとに算定します。上記ではB社株主にたいしA社株式を50株交付しており、これに株式交換時におけるA社株式の時価@100円を乗じた5,000円がB社の取得原価となります。

(関連項目)
吸収合併の仕訳の基礎(企業結合会計)
株式移転の仕訳の基礎(個別財務諸表上の処理)
株式交換の対価として自己株式を処分した時の仕訳(個別財務諸表)
株式交換-段階取得の場合の仕訳(個別財務諸表)

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