リース資産の取得原価(リース資産・リース債務の計上額)の算定
ファイナンス・リース取引については、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行います。したがって、借手はリース契約開始時において、リース物件を固定資産として計上するとともに、同額をリース債務として負債計上することになります(リース取引に関する会計基準第10項等参照)。
リース資産・リース債務の計上額(リース資産の取得原価)については、当該リース取引が所有権移転ファイナンス・リース取引または所有権移転外ファイナンス・リース取引別に、また借手にとって当該リース物件の貸手の購入価額等が明らかか否かによって以下のように異なります(リース取引に関する会計基準の適用指針第22・37項等参照)。
所有権移転外ファイナンス・リース取引 | 1.借手において当該リース物件の貸手の購入価額等が明らかな場合は、リース料総額の割引現在価値と貸手の購入価額等とのいずれか低い額
2.貸手の購入価額等が明らかでない場合は、リース料総額の割引現在価値と借手の見積現金購入価額とのいずれか低い額 |
所有権移転ファイナンス・リース取引 | 1.借手において当該リース物件の貸手の購入価額等が明らかな場合は、貸手の購入価格等
2.貸手の購入価額等が明らかでない場合は、リース料総額の割引現在価値と借手の見積現金購入価額とのいずれか低い額 |
※ 現在価値の算定のために用いる割引率は、借手が貸手の計算利子率を知り得る場合は当該利率とし、知り得ない場合は借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率を使用します(リース取引に関する会計基準の適用指針 第17項参照)。
なお、残価保証がある場合(所有権移転外ファイナンス・リース取引)は残価保証額を、割安購入選択権がある場合(所有権移転ファイナンス・リース取引)はその行使価額をリース料総額に含めます。
(具体例-リース資産・リース債務計上額の算定)
当社は×1年4月1日(期首)に以下の条件でリース契約(所有権外移転ファイナンス・リース取引に該当する)を締結した。リース資産・リース債務計上額を算定し、×1年4月1日のリース取引開始時の仕訳を示しなさい。
1.借手の見積現金購入価額36,000円 (貸手の購入価額等は不明) 2.リース料の支払は毎年3月31日に1年分のリース料10,000円を後払い 3.リース期間は4年である 4.当社(借手)の追加借入利子率は年8%(貸手の計算利子率は不明) 5.リース取引開始日はX1年4月1日、当社の決算日は3月31日である |
ファイナンス・リース取引については、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行います。すなわち、リース物件の取得価額相当額について『リース資産』勘定及び『リース債務』として資産・負債にそれぞれ計上します。
なお借手のリース資産・リース債務計上額について、所有権移転外ファイナンス・リース取引の場合は、次のいずれかによることになります。
・貸手の購入価額等が明らかな場合はリース料総額の割引現在価値と貸手の購入価額等のうち、いずれか低い金額
・貸手の購入価額等が明らかでない場合はリース料総額の割引現在価値と借手の見積現金購入価額のうち、いずれか低い金額
本設問では借手である当社は貸手の購入価格等を知り得ないため、以下の金額により計上額を算定することになります。
(計算過程)
・リース料総額の割引現在価値:10,000円/(1+0.08)+10,000円/(1+0.08)^2年+10,000円/(1+0.08)^3年+10,000円/(1+0.08)^4年=33,120円
・借手の見積現金購入価額:36,000円
∴33,120円(割引計算に用いる利率は借手の追加借入利子率によります)。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
リース資産 | 33,120 | リース債務 | 33,120 |
(関連項目)
ファイナンスリース取引とオペレーティングリース取引
ノンキャンセラブルとフルペイアウト(概要と具体的判定基準 )
所有権移転ファイナンスリースと所有権移転外ファイナンス・リース取引
ファイナンス・リース取引(リース料の支払いが前払いの場合)の仕訳
リース資産(リース物件)の減価償却費の算定
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