ノンキャンセラブルとフルペイアウト(概要と具体的判定基準)
ファイナンス・リース取引とは、リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引(ノンキャンセラブル)で、借手が、当該契約に基づき使用する物件(リース物件)からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引(フルペイアウト)をいいます(リース取引に関する会計基準 第5項参照)。
リース取引は、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引とに大別されます。
オペレーティング・リース取引はファイナンス・リース取引以外のリース取引をいいますので、両者の区分は当該リース取引がファイナンスリース該当するか否かによって判断します。
あるリース取引がファイナンス・リース取引に該当するかどうかはファイナンス・リース取引の2要件であるノンキャンセラブルとフルペイアウトの要件を満たすかどうかで判断し、この要件を共に満たす場合はファイナンス・リース取引、片方でも満たさない場合はオペレーティング・リース取引と判断します。
リース取引がファイナンス・リース取引に該当するかどうかについては、その経済的実質に基づいて判断すべきものであり、その際以下の点を考慮することが必要となります(リース取引に関する会計基準第36項、同適用指針第6・7項参照)。
ノンキャンセラブル | 法的形式上は解約可能であるとしても、解約に際し相当の違約金を支払わなければならない等の理由から、事実上解約不能と認められるリース取引は解約不能のリース取引に準ずるリース取引として扱います。 |
フルペイアウト | 「リース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受する」とは、当該リース物件を自己所有するとするならば得られると期待されるほとんどすべての経済的利益を享受することをいい、また「リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担する」とは、当該リース物件の取得価額相当額、維持管理等の費用、陳腐化によるリスク等のほとんどすべてのコストを負担することをいいます。 |
リース取引がファイナンス・リース取引に該当するかどうかについては、上記の点を考慮しその経済的実質に基づいて判断すべきものですが、具体的な判定基準として次のいずれかに該当する場合には、ファイナンス・リース取引と判定されます(借手側の判定基準。リース取引に関する会計基準の適用指針第9項参照)。
現在価値基準 | リース料総額の割引現在価値※≧借手の見積現金購入価額×90% |
経済的耐用年数基準 | 解約不能のリース期間≧経済的耐用年数×75% |
※ 現在価値の算定のために用いる割引率は、借手が貸手の計算利子率を知り得る場合は当該利率とし、知り得ない場合は借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率を使用します(利子率に関する詳細は貸手の計算利子率と借手の追加借入率とはをご参照ください)。
(具体例-ファイナンス・リース取引の判定)
当社は×1年4月1日(期首)において、リース会社と以下の業務用機械に関するリース契約を締結した。当該リース取引がファイナンス・リース取引に該当するかどうかを判定しなさい。
(リース取引の諸条件)
1.リース期間:4年(当該期間においてはリース契約は解約不能である)
2.リース料:毎年3月31日に1年分のリース料10,000円を支払う(リース料総額は40,000円)
3.借手の見積現金購入価額:36,000円
4.経済的耐用年数:6年
5.借手の追加借入利子率4%(借手は貸手の計算利子率を知り得ない)
(計算過程)
リース取引の諸条件を上記の現在価値基準および経済的耐用年数基準に当てはめて当該リース取引がファイナンス・リース取引に該当するか否か判定します。
(現在価値基準)
当社(借手)は貸手の計算利子率を知り得ないため、借手の追加借入利子率である4%を用いてリース料総額を現在価値に割り引き、割引現在価値を算定します。 現在価値36,299円/借手の見積現金購入価額 36,000円=100.8%≧90% |
(経済的耐用年数基準)
解約不能のリース期間4年/経済的耐用年数6年=66.6%<75% |
上記より、当該リース取引は経済的耐用年数基準を満たしませんが、現在価値基準を満たしており、この基準によりファイナンス・リース取引に該当すると判定されます。
(関連項目)
ファイナンスリース取引とオペレーティングリース取引
所有権移転ファイナンスリースと所有権移転外ファイナンス・リース取引
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