残価保証がある場合(ファイナンス・リース取引)の仕訳・会計処理

残価保証とは、リース契約(所有権移転外ファイナンス・リース取引)において、リース期間の終了時に、当該リース物件の処分価額が契約上取り決めた保証価額に満たない場合において、借手に対して課せられる、その不足額補填義務をいいます(リース取引に関する会計基準の適用指針第15項参照)。
リース契約上に残価保証の取決めがある場合の借手の会計処理については、以下の点に注意することが必要となります(リース取引に関する会計基準の適用指針第15・22・27・29項等参照)。

(残価保証-借手の会計処理)
リース資産計上時 リース取引の判定、およびリース資産・リース負債計上時において、残価保証がある場合はリース料総額に残価保証額を含める。
リース資産償却時 所有権移転外ファイナンス・リース取引のリース資産の償却計算はリース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとして行うが、リース契約上に残価保証の取決めがある場合は、当該残価保証額を残存価額として計算する。
リース契約終了時 リース契約に残価保証の取決めがある場合は、貸手に対する不足額の確定時に、当該不足額をリース資産売却損等として処理する。

実際の仕訳は下記具体例でご参照ください。

(具体例-残価保証がある場合の所有権移転外ファイナンスリース取引)

当社は×1年4月1日(期首)に以下の条件でリース契約(所有権外移転ファイナンス・リース取引に該当する)を締結した。以下の時点における仕訳をそれぞれ示しなさい。

1.×1年4月1日(リース取引開始時)
2.×2年3月31日(リース料支払時)
3.×2年3月31日(決算整理仕訳)
4.×5年3月31日(リース契約終了時)

1.リース期間4年
2.借手の見積現金購入価額36,000円 (貸手の購入価額等は不明)
3.リース料の支払は毎年3月31日に1年分のリース料10,000円を後払い
4.リース物件の経済的耐用年数は5年
5.当社(借手)の減価償却方法は定額法である。
6.当社(借手)の追加借入利子率は年8%(貸手の計算利子率は不明)
7.リース取引開始日はX1年4月1日、当社の決算日は3月31日である
8.リース契約にはリース期間終了時に借手がリース物件の処分価額を1,000円まで保証する条項(残価保証)が付されている。
9.リース期間終了後にリース物件は800円で処分された。
1.×1年4月1日(リース取引開始時)の仕訳

ファイナンス・リース取引については、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行います。すなわち、リース物件の取得価額相当額について『リース資産』勘定及び『リース債務』として資産・負債にそれぞれ計上します。
なお借手の資産(負債)計上価額について、所有権移転外ファイナンス・リース取引の場合は、次のいずれかによることになります。

・貸手の購入価額等が明らかな場合はリース料総額の割引現在価値と貸手の購入価額等のうち、いずれか低い金額
・貸手の購入価額等が明らかでない場合はリース料総額の割引現在価値と借手の見積現金購入価額のうち、いずれか低い金額

本設問では残価保証の取り決めがあるため、リース料総額には残価保証額1,000円を含めて計算することになります。
借手である当社は貸手の購入価格等を知り得ないため、以下の金額により計上額を算定することになります。

(計算過程)
・リース料総額の割引現在価値:10,000円/(1+0.08)+10,000円/(1+0.08)^2年+10,000円/(1+0.08)^3年+(10,000円+1,000円)/(1+0.08)^4年=33,856円

・借手の見積現金購入価額:36,000円

∴33,856円(割引計算に用いる利率は借手の追加借入利子率によります)。

(仕訳・リース取引開始時)
借方 金額 貸方 金額
リース資産 33,856 リース債務 33,856

※ 本設問では省略していますが、リース取引の判定(フルペイアウトの判定)時における現在価値基準においても残価保証がある場合はリース総額に残価保証を含めて判定することになります。

2.×2年3月31日(リース料支払時)

所有権移転外ファイナンス・リース取引において、借手がリース料を支払った時はリース取引開始時において計上したリース債務を減額して処理します。なお支払ったリース料についてはリース債務の元本相当額の返済部分のほかに利息分が含まれることになりますので、支払ったリース料のうち利息部分に該当する金額については『支払利息』勘定を使って費用処理します。
支払ったリース料のうち元本返済部分と支払利息部分との区分については、まずリース債務の未返済元本残高に一定の利率を乗じて支払利息を算定し、これをリース料支払額から控除してリース債務元本の返済額を算定します。なお当該利率は、リース料総額の現在価値が、リース取引開始日におけるリース資産(リース債務)の計上価額と等しくなる利率として求めらます(本設例では借手追加借入利子率8%を使用して割引計算を行い、これをリース債務として計上しているため当該利率を使用します)。

(計算過程)
支払利息:未返済元本残高33,856円×利率8%×12月/12月=2,708円
元本返済額:リース料支払額10,000円-支払利息2,708円=7,292円

(仕訳・リース料支払時)
借方 金額 貸方 金額
リース債務 7,292 現金預金 10,000
支払利息 2,708
3.×2年3月31日(決算整理仕訳)

ファイナンス・リース取引のリース物件については通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行います。リース物件についてはこれを資産計上しているため、決算時において減価償却費の計上が必要となります。
所有権移転外ファイナンス・リース取引に係るリース資産の減価償却方法については、リース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとして算定しますが、本設問では残価保証があるため残価保証額1,000円を残存価額として算定することになります

(計算過程)
減価償却費:(リース資産33,856-残価保証1,000円)÷リース期間4年×12月/12月=8,214円

(仕訳・減価償却費)
借方 金額 貸方 金額
減価償却費 8,214 減価償却累計額 8,214
4.×5年3月31日(リース取引終了時)

通常、リース取引終了時においては、リース資産の償却は完了し、リース債務も完済しているため、リース資産返済に関する処理以外に特に仕訳は必要ありません。ただし、リース契約に残価保証の取決めがある場合は、貸手に対する不足額の確定時(リース契約終了時)に、当該不足額をリース資産売却損等として処理する必要があります。
(本設問では、×5年3月期の決算整理仕訳は省略しています。上記3をご参照ください)。

(リース資産返済に関する処理)
(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
減価償却累計額 32,826 リース資産 33,826
その他流動資産 1,000

※ 残価保証額を残存価額として償却していますので、償却期間終了時に残価保証額がリース資産の簿価として残存しています。この残存価額(残価保証額)については、いったんこれをその他の流動資産として計上します。

(残価保証支払額の確定時)
(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
リース資産売却損 200 未払金 200
リース債務 1,000 その他流動資産 1,000

※ リース資産の処分価値は800円となります。したがって、残価保証額1,000円と処分価値800円との差額について、これを貸手に対し支払わなければならないため、『リース資産売却損』として損失処理し、債務を『未払金』として計上します。
なお上記の仕訳は以下のようにまとめて行うことが可能です。

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
減価償却累計額 32,826 リース資産 33,826
リース債務 1,000 未払金 200
リース資産売却損 200

参考:リース債務の返済スケジュール

期間 期首残高 支払利息 元本返済 期末残高
×2年3月期 33,856 2,708 7,292 26,564
×3年3月期 26,564 2,125 7,875 18,689
×4年3月期 18,689 1,495 8,505 10,184
×5年3月期 10,184 816 9,184 1,000

※ 最終年で端数調整しています。

(関連項目)
ファイナンスリース取引とオペレーティングリース取引
所有権移転ファイナンスリースと所有権移転外ファイナンス・リース取引
所有権移転ファイナンスリース取引の借手側の仕訳・会計処理
ファイナンスリース取引を中途解約した時の仕訳・勘定科目
維持管理費用相当額(ファイナンスリース取引)の借手の仕訳・会計処理
割安購入選択権がある場合のリース取引の仕訳・会計処理

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