支配獲得日の仕訳の基本形と連結貸借対照表

ある会社が他の会社の支配を獲得してを子会社とした場合、支配獲得日において企業集団の財務諸表(連結財務諸表)を作成することが必要となります。

ここでは支配獲得日において連結財務諸表を作成するうえで必要な仕訳(連結修正仕訳)と連結貸借対照表作成の手順について、非常に簡単な数値を使いながらその基本的なカタチをご説明いたします。

数値例-100%子会社の支配獲得時の仕訳の基本形

A会社がB会社の発行した株式の100%を120,000円で取得してB社を子会社とした。支配を獲得した日における両社の個別財務諸表が以下のようであったとき、支配獲得日において必要な連結上の仕訳を示すとともに、連結貸借対照表を作成しなさい。
なお、A社・B社の資産負債の時価は帳簿価額と一致しているものとする。

A社の個別貸借対照表
諸資産 500,000 諸負債 400,000
B会社株式 120,000 資本金 220,000
B社の個別貸借対照表
諸資産 100,000 資本金 100,000

1.親会社と子会社の個別財務諸表の合算
支配獲得日において連結財務諸表(連結貸借対照表)を作成する場合、まず親会社と子会社の個別財務諸表(貸借対照表)を合算します。
なお親会社と子会社との個別貸借対照表を合算するにあたり、子会社の資産・負債の帳簿価額が時価と異なる場合、子会社の資産・負債の帳簿価額を時価に修正(評価替えといいます)する必要がありますが、本設例では時価と帳簿価額とは一致しているとの前提がありますので、評価替えの手続きは必要がありません。

親会社と子会社の個別財務諸表の合算は、単純に資産と負債とを合算すればよいですので、合算後の貸借対照表は以下のようになります。

A社・B社の単純合算後の貸借対照表
諸資産 600,000 諸負債 400,000
B社株式 120,000 資本金(A社) 220,000
資本金(B社) 100,000

上記の資産・負債はA社とB社の資産と負債を以下のように合算して算定しています。

諸資産:A社の諸資産500,000円+B社の諸資産100,000円=600,000円
諸負債:A社の諸負債400,000円+B社の諸負債0円=400,000円

なお、この後の手続きを行う上で必要な数値を抜き出しやすくするため、親会社が保有する子会社の株式(B社株式 120,000円)と子会社の純資産(B社の資本金100,000円)は他の資産や負債・純資産とは合算せずに表示してあります。

2.投資と資本との相殺消去
親会社の子会社に対する投資と子会社の純資産とは、これを一つの企業集団としてみた場合、企業集団内部の資金移動にすぎません。したがって、連結財務諸表を作成するにあたり親会社の子会社に対する投資(A社の所有しているB社株式120,000円)と子会社の純資産(B社の資本金100,000円)とを相殺することになります。
なお、親会社の保有する子会社株式と子会社の純資産の金額との間に差額がある場合、これは投資消去差額といい、『のれん』または『負ののれん発生益』として処理します。

(仕訳-投資と資本との相殺消去)
借方 金額 貸方 金額
資本金(B社) 100,000 B社株式 120,000
のれん 20,000

親会社の子会社に対する投資(B社株式120,000円)と子会社の純資産(B社の資本金100,000円)とを相殺消去します。差額が投資消去差額となりますが、この差額が借方に計上される場合は『のれん』という資産勘定を使って処理し、逆に貸方に計上される場合には『負ののれん発生益』という特別利益の勘定を使って処理することになります。
上記の仕訳では差額は借方に20,000円が計上されますので、これは『のれん』という資産として処理されることになります。

3.連結貸借対照表の作成
最後に支配獲得日の連結貸借対照表を作成します。作成方法は上記1で作成した貸借対照表(A社とB社の貸借対照表とを単純合算した表)に上記2の連結修正仕訳を加味すればよいことになります。

支配獲得日の連結貸借対照表
諸資産 600,000 諸負債 400,000
のれん 20,000 資本金 220,000

(関連項目)
部分所有の場合の支配獲得日の仕訳と連結貸借対照表
評価差額の仕訳と処理の流れ(支配獲得日の手続き)
資本連結における評価差額と税効果会計の基礎(連結会計)

スポンサードリンク