投資消去差額(のれん・負ののれん)の基礎

ある会社が他の会社の支配を獲得してを子会社とした場合、支配獲得日において企業集団の財務諸表(連結財務諸表)を作成することが必要となります。

この連結財務諸表を作成するにあたり、親会社の子会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本を相殺消去することになりますが、この親会社の子会社に対する投資と子会社の資本(純資産)との間に差額がある場合、この差額を投資消去差額いいます。

たとえば、親会社が子会社の発行した株式の100%を120,000円で取得し、その子会社に対する支配を獲得した日における両社の個別財務諸表が以下のようであったとします。

親会社の個別貸借対照表
諸資産 500,000 諸負債 400,000
子会社株式 120,000 資本金 220,000
子会社の個別貸借対照表
諸資産 100,000 資本金 100,000

親会社の子会社に対する投資は、親会社と子会社を1つの企業集団としてとらえた場合、これは企業集団内部での資金の移動にすぎないため、企業集団としての財務諸表(連結財務諸表)を作成するに当たっては、これを相殺消去する必要があります。

ここでは親会社の子会社に対する投資は「子会社株式 120,000円」、子会社の純資産は「資本金 100,000円」ですのでこれを相殺消去することになりますが、この両者の間には20,000円の差額があります。これが投資消去差額となります。

(仕訳-投資と資本との相殺)
借方 金額 貸方 金額
資本金 100,000 子会社株式 120,000
20,000

親会社が子会社の支配を獲得した時において、上記のような投資消去差額が発生した時の会計処理は、投資消去差額が仕訳の右左どちらに出るかにより以下のように異なる処理を行うことになります(連結財務諸表に関する会計基準第24項、企業結合に関する会計基準第32項・第33項参照)。

(投資消去差額の会計処理の基礎)
投資消去差額が借方に発生する場合 上記の仕訳例のように投資消去差額が向かって左側(借方)に発生する場合には、これを『のれん』という無形固定資産の勘定科目を使って資産として貸借対照表に計上します。
投資消去差額が貸方に発生する場合 いっぽう投資消去差額が向かって右側(貸方)に発生する場合には、これを『負ののれん発生益』という特別利益の勘定科目を使って発生時の利益として処理します。

上記の設例では、投資消去差額が向かって左側(借方)に発生していますので、『のれん』という資産勘定を使って次のように仕訳されます。

(仕訳-投資と資本との相殺)
借方 金額 貸方 金額
資本金 100,000 子会社株式 120,000
のれん 20,000

借方に計上された『のれん』は無形固定資産となりますので、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却することになります(企業結合に関する会計基準 第32項参照)。

いっぽう、上記の設例で子会社株式の金額が90,000円あったとした場合、右側(貸方)に投資消去差額が発生することになります。
貸方に発生した投資消去差額は『負ののれん発生益』という勘定科目を使って以下のように仕訳します。

(仕訳-投資と資本との相殺)
借方 金額 貸方 金額
資本金 100,000 子会社株式 90,000
負ののれん発生益 10,000

負ののれん発生益』は特別利益の勘定科目ですので、右側に発生した投資消去差額は発生した時の利益として処理されることになります。

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