株式交換の対価として自己株式を処分した時の仕訳(個別財務諸表)
株式交換において、株式交換完全親会社が株式交換完全子会社の株主に自己株式を処分(交付)した場合の個別財務諸表上における会計処理は、株式交換完全親会社は株式交換完全子会社の株主に交付した株式(交付した新株と自己株式の合計)の株式交換日の時価などをもとに株式交換完全子会社の取得原価を算定し、これを『子会社株式』などの勘定科目を使って資産として計上します。
また、増加すべき株主資本の額(新株発行と自己株式処分の対価の額)から処分した自己株式の帳簿価額を控除した額を払込資本の増加(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金の増加。なお当該差額がマイナスとなる場合にはその他資本剰余金の減少)として処理することになります(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第112項以下参照)。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
子会社株式 | 取得原価※ | 自己株式 | 帳簿価額 |
資本金など | 差額※※ |
※ 子会社株式の取得原価は株式交換完全親会社が株式交換の対価とし株式交換完全子会社の株主に交付する株式の株式交換時の時価などをもとに算定します。
※※ 増加すべき株主資本(交付した株式の時価)から処分した自己株式の帳簿価額を控除した額を払込資本の増加(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金の増加。当該差額がマイナスとなる場合にはその他資本剰余金の減少)として処理することになります。
なお、増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定することになります(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第112項中段参照)。
(具体例-株式交換・自己株式処分時の個別上の仕訳)
A社(取得企業)を完全親会社、B社を完全子会社とする株式交換を行った。B社の株式交換直前の貸借対照表は以下の通りである。A社の株式交換時における個別上の仕訳を示しなさい。
諸資産 | 5,000 | 諸負債 | 2,000 |
資本金 | 1,800 | 利益剰余金 | 1,200 |
1.A社はB社株主にA社の株式100株を交付する。なお交付する株式のうち20株はA社が保有する自己株式(帳簿価額800円)を処分するものとする。
2.A社株式の株式交換日における時価は1株当たり50円、B社の諸資産の時価は6,000円、諸負債の時価は2,000円であった。
3.A社の増加資本は自己株式の帳簿価額を控除し、すべて資本金として計上するものとする。
(計算過程)
B社の取得原価:交付するA社株式100株×交換日におけるA社株式の時価@50円=5,000円
払込資本(資本金)の増加額:B社の取得原価5,000円-処分する自己株式の帳簿価額800円=4,200円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
子会社株式 | 5,000 | 資本金 | 4,200 |
自己株式 | 800 |
完全親会社A社にとっての完全子会社B社の取得原価は株式交換時における交付株式の時価などをもとに算定します。上記ではB社株主にたいしA社株式を100株交付しており、これに株式交換時におけるA社株式の時価@50円を乗じた5,000円がB社の取得原価となります。
また、払込資本(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)の増加額は、増加すべき株主資本(交付した株式の時価)の額から処分した自己株式の帳簿価額を控除した差額をもって算定します。本設例においては子会社株式の取得価額(交付した株式100株の株式交換時における時価5,000円)から処分した自己株式の帳簿価額800円を控除した差額4,200円を払込資本(本設問では資本金)の増加額として計上することになります。
(関連項目)
株式交換の仕訳の基礎(個別財務諸表上の処理)
株式交換-段階取得の場合の仕訳(個別財務諸表)
合併の対価として自己株式を処分した時の処理(企業結合会計)
自己株式を処分した時の仕訳・会計処理
スポンサードリンク