企業結合に係る特定勘定の仕訳の基礎
取得とされた企業結合においては、結合当事企業のうち、いずれが取得企業かを決定することになります(企業結合に関する会計基準 第9項参照)。
取得企業は交付する現金や株式の時価などをもとに被取得企業の取得原価を算定し、これを被取得企業から受け入れる識別可能な資産や負債へ配分することになりますが(パーチェス法)、この時、 取得後に発生することが予測される特定の事象(リストラ・組織再編など)に対応した費用又は損失であって、その発生の可能性が取得の対価の算定に反映されている(契約条項などで明確にされている場合などに限る)場合には、これを『企業結合に係る特定勘定』(負債)として認識することになります(企業結合に関する会計基準第30項参照、企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第62,63,64項等参照)。
(具体例-企業結合に係る特定勘定)
A社(取得企業)はB社を吸収合併した。B社の合併直前の貸借対照表は以下の通りである。A社の合併仕訳を示しなさい。
諸資産 | 5,000 | 諸負債 | 2,000 |
資本金 | 1,800 | 利益剰余金 | 1,200 |
1.合併に際し、A社はB社の株主に対し80株のA社株式を交付した。
2.A社株式の企業結合日における時価は1株当たり50円、B社の諸資産の時価は6,000円、諸負債の時価は2,000円であった。
3.A社の増加資本はすべて資本金として計上するものとする。
4.合併後においてB社で予定されているリストラ費用は1,000円であり、これは合併に関する合意文書で明確にされており、当該費用の発生は取得の対価の算定に反映されている。
(計算過程)
B社の取得原価:交付するA社株式80株×企業結合日におけるA社株式の時価@50円=4,000円
B社から受け入れた諸資産に配分される取得原価:6,000円(企業結合日における時価)
B社から引き受けた諸負債に配分される取得原価:2,000円(企業結合日における時価)
リストラ費用の予定額:1,000円(負債に計上)
受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額:資産6,000円-負債2,000円-リストラ費用1,000円=3,000円
のれん計上額:取得原価4,000円-資産負債に配分された純額3,000円=1,000円(正ののれん)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
諸資産 | 6,000 | 諸負債 | 2,000 |
のれん | 1,000 | 企業結合に係る特定勘定 | 1,000 |
資本金 | 4,000 |
『企業結合に係る特定勘定』の貸借対照表における表示区分は、原則として、固定負債の区分へ表示し、その主な内容及び金額を連結貸借対照表及び個別貸借対照表に注記することになりますが、認識の対象となった事象が貸借対照表日後1年内に発生することが明らかなものは流動負債として表示することになります(企業結合に関する会計基準第30項参照、企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第62項等参照)。
なお認識の対象となった事象が発生したときは、下記の仕訳により『企業結合に係る特定勘定』の取り崩しを行います。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
企業結合に係る特定勘定 | 1,000 | 企業結合に係る特定勘定の取崩益 | 1,000 |
(関連項目)
のれんの仕訳と会計処理の基礎(企業結合会計)
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