維持管理費用相当額(ファイナンスリース取引)の借手の仕訳・会計処理
1.リース料に含まれる維持管理費用相当額について
ファインナンス・リース取引について、借手が支払うリース料の中には、リース物件の固定資産税や保険料など、いわゆる維持管理に伴い発生する費用(維持管理費用相当額)や通常の保守等の役務提供相当額などが含まれる場合があります。これらの維持管理費用相当額などについては、原則として、リース取引(現在価値基準)の判定にあたり、リース料総額から控除することが必要となります。
しかし維持管理費用相当額等について、その金額がリース料に占める割合に重要性が乏しいと判断される場合は、これをリース料総額から控除しないで処理することもできます(リース取引に関する会計基準の適用指針第14・110・111項等参照)。
2.維持管理費用相当額の会計処理(借手)
現在価値基準の判定上において維持管理費用相当額をリース料総額から控除する場合には、リース料支払額から維持管理費用相当額を控除した金額を元本返済額と利息相当額とに区分し、維持管理費用相当額については、その内容を示す科目(『維持管理費』勘定など)で別途に費用に計上することになります(リース取引に関する会計基準の適用指針第25・40・109項等参照)。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
リース債務 | (元本部分) | 現金預金 | (支払額) |
支払利息 | (利息部分) | ||
維持管理費 | (維持管理費用) |
※ 維持管理費相当額については、『維持管理費』などの名称の科目で一括して処理します。固定資産税や保険料など、これをさらに細分する必要はありません(リース取引に関する会計基準の適用指針第109項等参照)。
(具体例-維持管理相当額の控除・借手)
当社は×1年4月1日(期首)に以下の条件でリース契約を締結した。以下の時点における仕訳をそれぞれ示しなさい。
1.×1年4月1日(リース取引開始時)
2.×2年3月31日(リース料支払時)
1.リース期間4年 2.借手の見積現金購入価額36,000円 (貸手の購入価額等は不明) 3.リース料の支払は毎年3月31日に1年分のリース料11,000円を後払い 4.上記3のリース料支払額には維持管理費用相当額は1,000円が含まれている。これはリース料に占める割合に重要性あるものと判断される。 5.リース物件の経済的耐用年数は5年 6.当社(借手)の追加借入利子率は年8%(貸手の計算利子率は不明) 7.リース取引開始日はX1年4月1日、当社の決算日は3月31日である 8.当該リース取引には所有権移転条項や割安購入選択権はなく、またリース物件は特別仕様のものではない。 |
1.×1年4月1日(リース取引開始時)の仕訳
まず、当該リース取引についてこれがファイナンス・リース取引に該当するか否かの判定を行います。なお、現在価値基準による判定において、支払リース料に含まれる維持管理費相当額については重要性があるものと判断しているため、リース料総額から維持管理費相当額(毎年1,000円)を控除することが必要となります。
(現在価値基準)
リース料総額の現在価値:(11,000円-1,000円)/(1+0.08)+(11,000円-1,000円)/(1+0.08)^2年+(11,000円-1,000円)/(1+0.08)^3年+(11,000円-1,000円)/(1+0.08)^4年=33,120円
∴リース料総額の現在価値33,120円>見積現金購入価額36,000円×90%
(経済的耐用年数基準)
リース期間4年>経済的耐用年数5年×75%
上記より、当該リース取引はファイナンス・リース取引に該当し、さらに所有権移転条項などが付されていないことから所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当します。
本設問では、当社は貸手の購入価額等を知り得ず、またリース料総額(維持管理費用相当額を除く)の現在価値(33,120円)が借手の見積現金購入価額(36,000円)より低い価額となるため、リース資産及びリース債務の計上額はリース料総額(維持管理費用相当額を除く)の現在価値(33,120円)となります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
リース資産 | 33,120 | リース債務 | 33,120 |
2.×2年3月31日(リース料支払時)
ファイナンス・リース取引において、借手がリース料を支払った時はリース取引開始時において計上したリース債務を減額して処理します。なお支払ったリース料についてはリース債務の元本相当額の返済部分のほかに利息分が含まれることになりますので、支払ったリース料のうち利息部分に該当する金額については『支払利息』勘定を使って費用処理します。
なお本設例では、現在価値基準の判定上において維持管理費用相当額をリース料総額から控除していますので、支払ったリース料のうち維持管理費相当額を控除し、残額を元本返済部分と利息部分とに区分することになります。
(計算過程)
支払利息:未返済元本残高33,120円×利率8%×12月/12月=2,650円
元本返済額:リース料支払額11,000円-維持管理費相当額1,000円-支払利息2,650円=7,350円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
リース債務 | 7,350 | 現金預金 | 11,000 |
支払利息 | 2,650 | ||
維持管理費 | 1,000 |
(関連項目)
ファイナンスリース取引とオペレーティングリース取引
所有権移転ファイナンスリース取引の借手側の仕訳・会計処理
所有権移転外ファイナンスリース取引の借手側の仕訳・会計処理
ファイナンスリース取引を中途解約した時の仕訳・勘定科目
残価保証がある場合(ファイナンス・リース取引)の仕訳・会計処理
割安購入選択権がある場合のリース取引の仕訳・会計処理
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