ファイナンスリース取引を中途解約した時の仕訳・勘定科目
ファイナンス・リース取引を中途解約した場合の借手の会計処理は、計上されたリース資産の未償却残高を『リース資産除却損』として処理します(リース取引に関する会計基準の適用指針第30・44項参照)。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
減価償却累計額 | リース資産 | ||
リース資産除却損 |
さらに、貸手に対して中途解約による規定損害金を支払いう場合には、リース債務未払残高(未払利息の額を含む)と当該規定損害金の額との差額を支払額の確定時に『リース債務解約損』等として損益に計上することになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
リース債務 | 現金預金 | ||
リース債務解約損 | (※) |
※ 差額が貸方残の場合は『リース債務解約益』勘定を使用します。
これらの『リース資産除却損』と『リース債務解約損』などは、『リース解約損』等の科目で損益計算書上合算して表示することができます(リース取引に関する会計基準の適用指針 設例1参照)。
(具体例-所有権外移転ファイナンスリース取引・借手)
当社は×1年4月1日(期首)に以下の条件でリース契約(所有権外移転ファイナンス・リース取引に該当する)を締結したが、X4年3月31日において当該リース契約を中途解約した。×4年3月31日解約時の仕訳を示しなさい(×4年3月期におけるリース料の支払いや減価償却費の計上に関する仕訳はすでに行われているものとする)。
1.リース期間4年 2.借手の見積現金購入価額36,000円であり、追加借入率は年8%である 3.リース料総額の割引現在価値は33,120円である。 4.リース料の支払は毎年3月31日に1年分のリース料10,000円を後払い 5.リース物件の経済的耐用年数は5年 6.当社(借手)の減価償却方法は定額法であり、残存価額0円として算定する 7.リース取引開始日はX1年4月1日、当社の決算日は3月31日である 8.借手が当該リース契約を中途解約する場合には、貸手に対し規定損害金として未経過リース料の全額を現金で支払うものとする。 |
上記の条件よりリース債務の返済スケジュールは以下の通りとなります
期間 | 期首残高 | 支払利息 | 元本返済 | 期末残高 |
×2年3月期 | 33,120 | 2,650 | 7,350 | 25,770 |
×3年3月期 | 25,770 | 2,062 | 7,938 | 17,832 |
×4年3月期 | 17,832 | 1,426 | 8,574 | 9,258 |
×5年3月期 | 9,258 | 742 | 9,258 | 0 |
注) 一部端数調整しています。
1.×4年3月31日中途解約時の仕訳-リース資産除却損の計上
ファイナンス・リース取引を中途解約した場合の借手の会計処理は、計上されたリース資産の未償却残高を『リース資産除却損』として処理します。
所有権移転外ファイナンス・リース取引に係るリース資産の減価償却費は、リース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとして算定するため、中途解約時におけるリース資産の未償却残高およびリース資産除却損の算定は以下のようになります。
(計算過程)
・リース資産の取得原価:33,120円
・×4年3月期末時点における減価償却累計額:取得原価33,120円×経過年数3年/リース期間4年=24,840円
・×4年3月期末時点における未償却残高(除却損):取得原価33,120円-減価償却累計額24,840円=8,280円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
減価償却累計額 | 24,840 | リース資産 | 33,120 |
リース資産除却損 | 8,280 |
2.×4年3月31日中途解約時の仕訳-リース債務解約損の計上
ファイナンス・リース取引を中途解約した場合において、借手が貸手に対して中途解約による規定損害金を支払いう場合には、リース債務未払残高(未払利息の額を含む)と当該規定損害金の額との差額を支払額の確定時に『リース債務解約損』等として損益に計上することになります。
本設問において『リース債務解約損』の計上額の算定は以下のようになります。
(計算過程)
・×4年3月期末時点におけるリース債務:9,258円(上記の返済スケジュールより)
・×4年3月期末時点における規定損害金:未経過リース料の全額(1年分)であり、10,000円
∴リース債務解約損=規定損害金10,000円-リース債務残高9,258円=742円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
リース債務 | 9,258 | 現金 | 10,000 |
リース債務解約損 | 742 |
上記のリース資産除却損8,280円とリース債務解約損742円とは、リース解約損9,022円として損益計算書上合算して表示することができます。
(関連項目)
所有権移転ファイナンスリースと所有権移転外ファイナンス・リース取引
所有権移転ファイナンスリース取引の借手側の仕訳・会計処理
所有権移転外ファイナンスリース取引の借手側の仕訳・会計処理
ファイナンス・リース取引(リース料の支払いが前払いの場合)の仕訳
残価保証がある場合(ファイナンス・リース取引)の仕訳・会計処理
維持管理費用相当額(ファイナンスリース取引)の借手の仕訳・会計処理
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