割安購入選択権がある場合のリース取引の仕訳・会計処理

割安購入選択権とは、借手が当該リース物件について、リース期間終了後又はリース期間の中途で、名目的な価額又はその行使時点のリース物件の価額とくらべて著しく有利な価額で買い取ることができる権利をいい、割安購入選択権の付され、その行使が確実に予想されるファイナンス・リース取引は所有権移転ファイナンス・リース取引と判定されることになります(リース取引に関する会計基準の適用指針 第10項(2)等参照)。

割安購入選択権の付された所有権移転ファイナンス・リース取引の会計処理はリース料総額にその行使価額を含めて処理することになります(リース取引に関する会計基準の適用指針 第37(2)等参照)。

(具体例-割安購入選択権がある場合の所有権移転ファイナンスリース取引)

当社は×1年4月1日(期首)に以下の条件でリース契約(所有権移転ファイナンス・リース取引に該当する)を締結した。以下の時点における仕訳をそれぞれ示しなさい。

1.×1年4月1日(リース取引開始時)
2.×2年3月31日(リース料支払時)
3.×2年3月31日(決算整理仕訳)
4.×5年3月31日(リース契約終了時)

1.当該リース取引については割安購入選択権(行使価額1,000円)が付されており、当社はリース期間終了時に行使する予定である。
2.リース期間4年
3.借手の見積現金購入価額36,000円 (貸手の購入価額等は不明)
4.リース料の支払は毎年3月31日に1年分のリース料10,000円を後払い
5.リース物件の経済的耐用年数は5年
6.当社(借手)の減価償却方法は定額法であり、残存価額は10%として算定する
7.当社(借手)の追加借入利子率は年8%(貸手の計算利子率は不明)
8.リース取引開始日はX1年4月1日、当社の決算日は3月31日である
1.×1年4月1日(リース取引開始時)の仕訳

ファイナンス・リース取引については、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行います。すなわち、リース物件の取得価額相当額について『リース資産』勘定及び『リース債務』として資産・負債にそれぞれ計上します。
なお借手の資産(負債)計上について、所有権移転ファイナンス・リース取引の場合は、当該リース物件の貸手の購入価額等が明らかな場合は、貸手の購入価格等を使用し、明らかでない場合はリース料総額の割引現在価値および借手の見積現金購入価額のうちいずれか低い金額によって計上することになります。

本設問では割安購入選択権が付されているため、リース料総額にはその行使価額1,000円を含めて計算することになります。
借手である当社は貸手の購入価格等を知り得ないため、以下の金額により計上額を算定することになります。

(計算過程)
・リース料総額の割引現在価値:10,000円/(1+0.08)+10,000円/(1+0.08)^2年+10,000円/(1+0.08)^3年+(10,000円+1,000円)/(1+0.08)^4年=33,856円

・借手の見積現金購入価額:36,000円

∴33,856円(割引計算に用いる利率は借手の追加借入利子率によります)。

(仕訳・リース取引開始時)
借方 金額 貸方 金額
リース資産 33,856 リース債務 33,856
2.×2年3月31日(リース料支払時)

所有権移転ファイナンス・リース取引において、借手がリース料を支払った時はリース取引開始時において計上したリース債務を減額して処理します。なお支払ったリース料についてはリース債務の元本相当額の返済部分のほかに利息分が含まれることになりますので、支払ったリース料のうち利息部分に該当する金額については『支払利息』勘定を使って費用処理します。
支払ったリース料のうち元本返済部分と支払利息部分との区分については、まずリース債務の未返済元本残高に一定の利率を乗じて支払利息を算定し、これをリース料支払額から控除してリース債務元本の返済額を算定します。なお当該利率は、リース料総額の現在価値が、リース取引開始日におけるリース資産(リース債務)の計上価額と等しくなる利率として求めらます(本設例では借手追加借入利子率8%を使用して割引計算を行い、これをリース債務として計上しているため当該利率を使用します)。

(計算過程)
支払利息:未返済元本残高33,856円×利率8%×12月/12月=2,708円
元本返済額:リース料支払額10,000円-支払利息2,708円=7,292円

(仕訳・リース料支払時)
借方 金額 貸方 金額
リース債務 7,292 現金預金 10,000
支払利息 2,708
3.×2年3月31日(決算整理仕訳)

ファイナンス・リース取引のリース物件については通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行います。リース物件についてはこれを資産計上しているため、決算時において減価償却費の計上が必要となります。
所有権移転ファイナンス・リース取引に係るリース資産の減価償却費は、自己所有の固定資産に適用する減価償却方法と同一の方法により算定します。すなわち、リース物件以外の自己所有の固定資産と同様の方法により、経済的使用可能予想期間(経済的耐用年数)をもとに償却計算をおこないます。

(計算過程)
減価償却費:(リース資産33,856円-33,856円×10%)÷経済的耐用年数5年×12月/12月=6,094円

(仕訳・決算時)
借方 金額 貸方 金額
減価償却費 6,094 減価償却累計額 6,094
4.×5年3月31日(リース期間終了時)

本設例ではリース期間終了時に割安購入選択権を行使することとなっているため、最終回の支払額は支払リース料10,000円と割安購入選択権の行使価額1,000円の合計である11,000円となります。
(本設問では、×5年3月期の決算整理仕訳は省略しています。上記3をご参照ください)。

(仕訳・リース期間終了時)
借方 金額 貸方 金額
リース債務 9,184 現金預金 11,000
リース債務
(行使価額分)
1,000
支払利息 816

※上記仕訳の借方の『リース債務』はまとめて記帳してもかまいません。

参考:リース債務の返済スケジュール

期間 期首残高 支払利息 元本返済 期末残高
×2年3月期 33,856 2,708 7,292 26,564
×3年3月期 26,564 2,125 7,875 18,689
×4年3月期 18,689 1,495 8,505 10,184
×5年3月期 10,184 816 10,184 0

※ 最終年の支払額は支払リース料10,000円と割安購入選択権の行使価額1,000円との合計である11,000円となっております。
計算過程で生じる端数は最終年で調整しています。

(関連項目)
ファイナンスリース取引とオペレーティングリース取引
所有権移転ファイナンスリースと所有権移転外ファイナンス・リース取引
リース資産の取得原価(リース資産・リース債務の計上額)の算定
残価保証がある場合(ファイナンス・リース取引)の仕訳・会計処理
維持管理費用相当額(ファイナンスリース取引)の借手の仕訳・会計処理

スポンサードリンク