最頻値法と期待値法(将来キャッシュ・フローの見積り)について
減損会計を適用する場合、減損損失を認識するかどうかの判定、および使用価値の算定に際し、資産又は資産グループの生み出す将来キャッシュ・フローの見積額を算定することが必要となります。
将来キャッシュ・フローの見積もりに当たっては、企業に固有の事情を反映した合理的で説明可能な仮定及び予測に基づいて見積ることが必要となります(具体的な留意点に関しての詳細は固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第36項をご参照ください)。
また、現在の資産又は資産グループ使用状況及び合理的な使用計画等を考慮して将来キャッシュ・フローの見積もりを行いますので、計画されていない将来の設備の増強や事業の再編の結果として生ずる将来キャッシュ・フローは、見積りに含めることはできません。さらに、将来の用途が定まっていない遊休資産については、現在の状況に基づき将来キャッシュ・フローを見積ることが必要です(固定資産の減損に係る会計基準二4(1)(2)、同注解・注5参照)。
実際の将来キャッシュ・フローの見積金額算定方法については最頻値法と期待値法との2つの方法があります(固定資産の減損に係る会計基準二4(3))。
最頻値法 | 生起する可能性の最も高い単一の金額を将来キャッシュ・フローの見積金額とする方法です。 |
期待値法 | 生起しうる複数の将来キャッシュ・フローをそれぞれの確率で加重平均した金額を将来キャッシュ・フローの見積金額とする方法です。 |
資産又は資産グループに関連して間接的に生ずる支出については、関連する資産又は資産グループに合理的な方法により配分し、当該資産又は資産グループの将来キャッシュ・フローの見積りに際し控除します。利息の支払額並びに法人税等の支払額などについては将来キャッシュ・フロー含めません(固定資産の減損に係る会計基準二4(3)(4))。
なお、減損損失を認識するかどうかの判定の際における将来キャッシュ・フローの見積もり期間については資産の経済的残存使用年数又は資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数と20年のいずれか短い方となりますが、使用価値算定の際の見積もり期間については資産の経済的残存使用年数又は資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数となります(詳細は経済的残存耐用年数が20年超の場合の割引前将来キャッシュ・フローをご参照ください)。
また使用価値算定の際には将来キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクについて、将来キャッシュ・フローの見積りと割引率のいずれかに反映させるひつようがあります(固定資産の減損に係る会計基準注解・注6参照)。当該リスクを将来キャッシュ・フローの見積りに反映させる場合、上記の方法により算定された将来キャッシュ・フローから当該リスクに相当する金額を控除することが必要となります。
(具体例-将来キャッシュフローの算定・最頻値法と期待値法)
当社が保有する機械Aについて減損の兆候が見られたため、減損損失の認識の判定をおこなう。機械Aの将来キャッシュフロー金額およびそれぞれ生起するであろう確率は以下のように見積もられた。将来キャッシュフローの見積額について最頻値法を採用した場合と期待値法を採用した場合の金額をそれぞれ算定しなさい。
(機械Aの将来キャッシュ・フローの金額と生起する確率)
キャッシュ・フロー金額 | 生起する確率 |
8,000円 | 20% |
10,000円 | 70% |
14,000円 | 10% |
1.最頻値法
最頻値法とは、生起する可能性の最も高い単一の金額を将来キャッシュ・フローの見積金額とする方法です。したがって、上記の3つのケースのうち、生起する可能性の最も高いのは将来キャッシュ・フロー10,000円(生起する確率70%)であるため、将来キャッシュ・フローの見積金額は10,000円となります。
2.期待値法
期待値法とは、生起しうる複数の将来キャッシュ・フローをそれぞれの確率で加重平均した金額を将来キャッシュ・フローの見積金額とする方法です。したがって、上記の3つのケースをそれぞれの確率で加重平均し、将来キャッシュ・フローを算定します。
期待値法による将来CF:8,000円×20%+10,000円×70%+14,000円×10%=10,000円
したがって、期待値法による将来キャッシュ・フローの見積金額も10,000円となります。
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