経済的残存耐用年数が20年超の場合の割引前将来キャッシュ・フロー

減損の兆候があると判断された資産又は資産グループについては減損損失を認識するかどうかの判定(減損処理を行うかどうかの判定)をおこなうことになります。減損損失を認識するかどうかの判定については、資産又は資産グループから得られる割引将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比較することによって行い、資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、減損損失を認識することになります(固定資産の減損に係る会計基準二2(1)参照)。

(減損損失を認識するかどうかの判定)
割引前将来CF≧帳簿価額→減損損失を認識しない

割引前将来CF<帳簿価額→減損損失を認識する

減損損失の認識および測定は、将来キャッシュ・フローの見積りに大きく依存することになりますが、将来キャッシュ・フローの見積もりについて、たとえば土地などの場合には使用期間が無限になりうることになり、また一般に長期間にわたる将来キャッシュ・フローの見積りは不確実性が高くなるため、その見積期間を制限する必要があります。このため、減損損失を認識するかどうかを判定するために割引前将来キャッシュ・フローを見積る期間は、資産の経済的残存使用年数又は資産グループ中の主要な資産(資産グループの将来キャッシュ・フロー生成能力にとって最も重要な構成資産をいいます)の経済的残存使用年数と20年のいずれか短い方をその対象期間とすることになります(固定資産の減損に係る会計基準二2(2)参照)。

資産又は資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数が20年を超える場合には、21年目以降に見込まれる将来キャッシュ・フローに基づいて、20年経過時点の回収可能価額(正味売却価額と使用価値のうちいずれか大きい方をいいます)を算定し、これを20年目までの将来キャッシュ・フローに加算し、減損損失の認識の判定のための割引前将来キャッシュ・フローを算定します(固定資産の減損に係る会計基準注解・注4参照)。

(資産又は資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数が20年以内の場合)
割引前将来CFの見積もり期間=資産または主要な資産の経済的残存耐用年数

割引前将来CF=経済的残存耐用年数に基づく将来CFの合計

(資産又は資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数が20年を超える場合)
割引前将来CFの見積もり期間=20年

割引前将来CF=20年間の将来CFの合計+20年経過時点における回収可能価額

(具体例-減損の認識の判定・経済的残存耐用年数が20年を超える場合)

当社が保有する建物(取得原価10,000,000円、減価償却累計額800,000円)について、減損の兆候があると判断された。これを受けて当該建物の割引前将来CFの見積もりをおこなったところ、当該機械の経済的残存耐用年数は23年であり、当該建物の使用により20年間において毎年450,000円のキャッシュフローが生じるものと見積もられた。また21年目以降のキャッシュフローの見積もりは毎年300,000円であり、正味売却価値(処分価値)は20年目で売却した時は500,000円、23年目で売却した時100,000円であると見積もられた。なお使用価値算定のさいの割引率は2%とする。
当該建物について減損損失の認識するかどうかの判定を行いなさい。

(計算過程)

建物の帳簿価額:取得原価10,000,000円-累計額800,000円=9,200,000円
20年目までの将来CFの合計:430,000円×20年=8,600,000円
20年目経過時点における正味売却価額:500,000円
20年目経過時点における使用価値:300,000円/1.02+300,000円/(1.02)^2+(300,000円+100,000円)/(1.02)^3=959,398円
回収可能価額:正味売却価額500,000円<使用価値959,398円 ∴959,398円
割引前将来CF:20年目までの将来CF8,600,000円+回収可能価額959,398円=9,559,398円

帳簿価額9,200,000円<割引前将来CF9,559,398円

したがって、割引前将来CFが帳簿価額を上回っているため、当該建物については減損損失を認識しないと判定します(減損処理をおこないません)。

(関連項目)
減損会計の手順について
減損損失の認識の判定について(経済邸残存耐用年数が20年以内の場合)
減損損失の測定について(基本)

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