減損の兆候とは

減損の兆候とは、資産又は資産グループについて、減損が生じている可能性を示す事象をいいます。減損の兆候がある場合には、当該資産又は資産グループについて、減損損失を認識するかどうかの判定を行うことになります。減損の兆候としては、例えば次の事象が考えられます(なお、減損会計の手順については減損会計の手順についてを合わせてご参照ください)。

(減損の兆候)
1.資産又は資産グループが使用されている営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが、継続してマイナスとなっているか、あるいは、継続してマイナスとなる見込みであること。

営業活動から生ずる損益」は、営業上の取引に関連して生ずる損益であり、これには当該資産又は資産グループの減価償却費や本社費等の間接的に生ずる費用が含まれ、また、損益計算書上は原価性を有しないものとして営業損益に含まれていない項目でも営業上の取引に関連して生じた損益(例えば、たな卸資産の評価損)であれば含まれます。実務的には、営業活動から生ずる損益は、企業の管理会計上の損益区分に基づいて行われます(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針(以下、適用指針)第12-1項、第78項参照)。

継続してマイナス」とは、おおむね過去2期がマイナスであったことを指しますが、当期の見込みが明らかにプラスとなる場合は該当しません。また、「継続してマイナスとなる見込み」とは、前期と当期以降の見込みが明らかにマイナスとなる場合を指します(適用指針第12-2項、第79項参照)。
なお、事業の立上時など予め合理的な事業計画が策定されており、当該計画にて当初より継続してマイナスとなることが予定されている場合において、実際のマイナスの額が当該計画にて予定されていたマイナスの額よりも著しく下方に乖離していないときには、減損の兆候には該当しません(適用指針第12-4項参照)。

2.資産又は資産グループが使用されている範囲又は方法について、当該資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化が生じたか、あるいは、生ずる見込みであること。

資産又は資産グループが使用されている範囲又は方法について、例えば、以下のような当該資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化が生じたか、又は、生ずる見込みである場合には、減損の兆候となります(適用指針第13項、第82~87項参照)。
1.資産又は資産グループが使用されている事業を廃止又は再編成すること。
2.当初の予定よりも著しく早期に資産又は資産グループを除却や売却などにより処分すること。
3.資産又は資産グループを当初の予定又は現在の用途と異なる用途に転用すること。
4.資産又は資産グループが遊休状態になり、将来の用途が定まっていないこと。
5.資産又は資産グループの稼働率が著しく低下した状態が続いており、著しく低下した稼働率が回復する見込みがないこと。
6.資産又は資産グループに著しい陳腐化等の機能的減価が観察できること。
7.建設仮勘定に係る建設について、計画の中止又は大幅な延期が決定されたことや当初の計画に比べ著しく滞っていること。

3.資産又は資産グループが使用されている事業に関連して、経営環境が著しく悪化したか、あるいは、悪化する見込みであること。

経営環境が著しく悪化した」場合とは、例えば、以下のような場合が該当します(個別具体的な経営環境の悪化は個々の企業の状況に応じて判断することが必要です。適用指針第14項、第88項参照)。
1.材料価格の高騰や、製・商品店頭価格やサービス料金、賃料水準の大幅な下落、製・商品販売量の著しい減少などが続いているような市場環境の著しい悪化
2.技術革新による著しい陳腐化や特許期間の終了による重要な関連技術の拡散などの技術的環境の著しい悪化
3. 重要な法律改正、規制緩和や規制強化、重大な法令違反の発生などの法律的環境の著しい悪化

4.資産又は資産グループの市場価格が著しく下落したこと。

市場価格が著しく下落したこと」には、少なくとも市場価格が帳簿価額から50%程度以上下落した場合が該当します。
また、「市場価格」とは、市場において形成されている取引価格、気配又は指標その他の相場などを指しますが、固定資産については、市場価格を把握することが困難な場合が多いため、一定の評価額や適切に市場価格を反映していると考えられる指標(実勢価格や査定価格などの評価額や、土地の公示価格や路線価など)が容易に入手できる場合には、これらを、減損の兆候を把握するための市場価格とみなして使用します(適用指針第15項、第89~91項参照)

減損の兆候は企業のおかれた経営環境や発生した事象により個別具体的に判断するものであり、必ずしも画一的な基準が存在しているものではありません。
企業は、通常の企業活動において実務的に入手可能なタイミングにおいて利用可能な情報に基づき、減損の兆候がある資産又は資産グループを識別することとなります(適用指針第11項、第76項・第77項参照)。

(関連項目)
減損会計の手順について
減損損失の認識の判定について(基本)
減損損失の測定について(基本)

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