減損損失の認識の判定について(基本)
1.減損損失の認識の判定について
減損の兆候があると判断された資産又は資産グループについては減損損失を認識するかどうかの判定(減損処理を行うかどうかの判定)をおこなうことになります。減損損失を認識するかどうかの判定については、資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比較することによって行い、資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、減損損失を認識することになります(固定資産の減損に係る会計基準二2(1)参照)。
割引前将来CF≧帳簿価額→減損損失を認識しない
割引前将来CF<帳簿価額→減損損失を認識する |
減損損失の認識の判定において、割引後将来CFではなく、割引前将来CFを用いるのは、収益性の低下の判断においてより確実なのもののみを減損の認識対象とするためです。すなわち減損損失の測定は、将来CFの見積りに大きく依存しますが、将来CFが約定されている金融資産などとは異なり、成果の不確定な事業用資産の減損は、測定が主観的にならざるを得ません。そのような特質をもつ事業用資産に対する減損の認識については、減損の存在が相当程度に確実な場合に限ってのみ認識することが適当であると考えられるためです。
2.キャッシュ・フローの見積もり期間について
減損損失を認識するかどうかを判定するために割引前将来キャッシュ・フローを見積る期間は、資産の経済的残存使用年数又は資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数と20年のいずれか短い方となります。
資産又は資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数が20年を超える場合には、20年経過時点の回収可能価額を算定し、20年目までの割引前将来キャッシュ・フローに加算することになります(固定資産の減損に係る会計基準二2(2)、固定資産の減損に係る会計基準注解 注3・注4参照)。
なお、資産又は資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数が、当該資産の減価償却計算に用いられている税法耐用年数等に基づく残存耐用年数と著しい相違がある等の不合理と認められる事情のない限り、当該残存耐用年数を経済的残存使用年数とみなすことができます(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第21項、第100項参照)。
(具体例-減損の認識の判定)
当社が保有する機械(取得原価15,000円、減価償却累計額4,500円)について、減損の兆候があると判断された。これを受けて当該機械の割引前将来CFの見積もりをおこなったところ、当該機械の残存耐用年数は5年であり、当該機械の使用により毎年2,000円のキャッシュフローが生じるものと見積もられた。また5年後に当該機械を売却した時の売却収入の見積額は1,500円とされた。
当該機械について減損損失の認識するかどうかの判定を行いなさい。
(計算過程)
減損損失を認識するかどうかの判定の際は、割引前将来CFと帳簿価額との比較をおこないます。その結果、割引前将来CFの方が大きい場合は減損損失の認識を行わないと判定し、逆に、帳簿価額の方が大きい場合は減損損失の認識を行うと判定します。
帳簿価額:取得原価15,000円-減価償却累計額4,500円=10,500円 割引前将来CF:2,000円×5年+1,500円=11,500円 帳簿価額10,500円<割引前将来CF11,500円 |
したがって、割引前将来CFが帳簿価額を上回っているため、当該機械については減損損失を認識しないと判定します(減損処理をおこないません)。
(関連項目)
減損会計の手順について
経済的残存耐用年数が20年超の場合の割引前将来キャッシュ・フロー
減損損失の測定について(基本)
最頻値法と期待値法(将来キャッシュ・フローの見積り)について
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