減損損失の測定について(基本)

1.減損損失の測定・計上について

減損損失を認識するかどうかの判定の結果、減損損失を認識すべきであると判定された資産又は資産グループについては、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として当期の損失(特別損失)として処理します(固定資産の減損に係る会計基準 二3参照)。

(減損損失の計上額)
減損損失=固定資産の帳簿価額-回収可能価額

なお、減損処理を行った資産については、翌期以降は減損損失を控除した帳簿価額に基づき減価償却を行います(詳細は減損処理後の減価償却費の算定をご参照ください)。
また、減損損失の戻りいれ処理について、減損基準においては減損の存在が相当程度確実な場合に限って減損損失を認識及び測定することとしていること、また、戻入れは事務的負担を増大させるおそれがあることなどから、減損損失の戻入れは行いません(固定資産の減損に係る会計基準 三参照)。

2.回収可能価額について

回収可能価額とは、資産又は資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額をいいます。正味売却価額および使用価値とは以下のように算定します(固定資産の減損に係る会計基準注解 注1参照、固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第28項・第31項等参照)。

(回収可能価額の算定)
正味売却価額 正味売却価額とは、資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を控除して算定される金額をいいます。

時価とは公正な評価額をいい、通常の場合それは観察可能な市場価格をいい、市場価格が観察できない場合には合理的に算定された価額(不動産鑑定評価基準に基づく価格など)をいいます。
また、処分費用見込額は類似の資産に関する過去の実績や処分を行う業者からの情報などを参考に、現在価値として見積って算定します。

使用価値 使用価値とは、資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値をいいます。

継続的使用によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの見積もりに当たっては、企業に固有の事情を反映した合理的で説明可能な仮定及び予測に基づいて見積ることになります。また使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フロー将来時点の正味売却価額となります。
使用価値の算定のために将来キャッシュ・フローを見積る期間は、資産の経済的残存使用年数又は資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数とします。

なお通常は使用価値は正味売却価額より高いと考えられるため、減損損失の測定において、明らかに正味売却価額が高いと想定される場合や処分がすぐに予定されている場合などを除き、必ずしも現在の正味売却価額を算定する必要はありません(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第28項参照)。
また資産グループの使用価値を算定する際、将来キャッシュ・フローを見積る期間(主要な資産の経済的残存使用年数)経過時点においても経済的残存使用年数が存在する他の資産については、当該経過時点における回収可能価額については、原則として当該時点における他の資産の正味売却価額を使用します(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第34項参照)。

(具体例-減損損失の測定)

当社が保有する機械Aについて減損の兆候が見られた、減損処理に関する必要な仕訳を示しなさい(当期の減価償却費はすでに計上しているものとする。また減損損失の計上額は機械勘定から直接減額する直接法によるものとする)。

(機械A)
取得原価:10,000,000円
減価償却累計額:4,000,000円
残存年数:3年
現時点における時価:4,200,000円
処分費用見込額:100,000円
今後3年間の割引前CF:毎年1,800,000円
3年後の見積もり売却価額:0円
割引率:2%

1.減損損失を認識するかどうかの判定

まず、減損損失を認識するかどうかの判定を行います。減損損失を認識するかどうかの判定は、決算時点における割引前将来CFと帳簿価額との比較によって行います。

帳簿価額:取得原価10,000,000円-累計額4,000,000円=6,000,000円
割引前将来CF:1,800,000円×3年=5,400,000円

帳簿価額6,000,000円>割引前CF5,400,000円
∴減損損失を認識する

なお、減損損失を認識するかどうかの判定は減損損失の認識の判定について(基本)をご参照ください。

2.減損損失の測定

減損損失を認識すると判定したため、計上すべき減損損失を測定します。減損損失は帳簿価額から回収可能価額(正味売却価額と使用価値のうちいずれか大きい方)を控除して算定するため、これらの要素を計算します。

正味売却価額:時価4,200,000円-処分費用100,000円=4,100,000円
使用価値:1,800,000/(1+0.02)+1,800,000/(1+0.02)^2+1,800,000/(1+0.02)^3=5,190,990円
回収可能価額:正味売却価額4,100,000円<使用価値5,190,990円 ∴5,190,990円

減損損失:帳簿価額6,000,000円-回収可能価額5,190,990円=809,010円

したがって仕訳は以下のようになります。

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
減損損失 809,010 機械 809,010

なお、減損損失を間接法により記帳する場合の仕訳は以下の通りです。

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
減損損失 809,010 減損損失累計額 809,010

(関連項目)
減損会計の手順について
減損損失の表示(直接控除と間接控除)

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