特殊商品売買の収益認識について

現在の制度会計においては、収益は実現主義によって計上することが要請されています(企業会計原則第二・一A、第二・三B参照)。ここでいう実現とは、以下の2つの条件を満たすことをいいます。

1.財貨又は役務の移転
2.対価としての現金又は現金等価物の取得

上記1の財貨又は役務の移転とは、一般的に商品の販売・引き渡し時点をさし、財貨に対するリスクが買手に移転することを意味します。
一般的な商品売買においては、商品の引き渡しと代金(売掛金を含む)の受け取りは同時に行われるため、販売日を基準として収益計上することができますが(販売基準)、引渡日と代金の受け取りにズレの生じる特殊商品売買の収益認識に関しては特別の配慮が必要となります。
特殊商品売買の収益認識については、企業会計原則注解・注6に規定があり、会計上は以下のように取り扱われることになります。

(特殊商品売買の収益認識)
委託販売 原則:受託者が委託品を販売した日をもって売上収益の実現の日とします(販売基準)。
容認:仕切精算書が販売のつど送付されている場合には、仕切精算書が到達した日に売上収益が実現したものとみなし、この日をもって売上収益を計上することができます(仕切計算書到達日基準)。
試用販売 得意先が買取りの意思を表示することによって売上が実現しますので、買取の意思表示日を持って売上収益を計上します(販売基準)。
予約販売 対価の受取はすでに完了しているため、商品を引き渡すことによって売上収益が実現します。したがって商品等の引渡し日を持って売上収益を計上します(販売基準)。
割賦販売 原則:商品等を引渡した日をもって売上収益の実現の日とします(販売基準)。
容認:割賦販売は、その回収期間の長さや回収における危険性などから、収益認識をより慎重に行うため、割賦金の回収期限の到来の日(回収期限到来基準)又は入金の日(回収基準)をもって売上収益実現の日とすることも認められます。

割賦販売(分割払いの販売形態)は通常の販売と異なり、その代金回収の期間が長期にわたり、かつ、分割払であることから代金回収上の危険が高いため、貸倒引当金及び代金回収費、アフター・サービス費等の引当金の計上について特別の配慮が必要となりますが、その算定に当たっては、不確実性と煩雑さとを伴う場合が多くなります。収益認識をより慎重に行うため、販売基準にかえて回収期限到来基準や回収基準の採用が容認されています。これは収益認識における保守主義の適用であるといえます。

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