低価基準・低価法(棚卸資産の評価基準)に関する会計処理

商品や製品など、通常の販売目的(販売するための製造目的を含む)で保有する棚卸資産は、先入先出法総平均法などによって算定された取得原価により、帳簿上計上されていますが、この帳簿価額を期末において市場における評価額などと比較し、当該評価額が取得原価(帳簿価額)よりも下落している場合には、帳簿価額を引き下げる必要があります。これは低価基準(または低価法)と呼ばれる棚卸資産の評価基準であり、この時の簿価の引き下げ額は当期の費用として処理することが求めらます(棚卸資産の評価に関する会計基準7参照)。

帳簿価額と比較される期末の評価額には、正味売却価額と再調達原価との2つがあり、その内容は以下の通りです(棚卸資産の評価に関する会計基準5、6参照)。

(正味売却価額と再調達原価)
正味売却価額
(正味実現可能価額)
正味売却価額とは、売価から見積追加製造原価及び見積販売直接経費を控除したものをいいます(なお、売価とは購買市場と売却市場とが区別される場合における売却市場の時価をいいます)。
再調達原価 再調達原価とは、購買市場と売却市場とが区別される場合における購買市場の時価に、購入に付随する費用を加算したものをいいます。

上記のうち、期末における棚卸資産の評価としては、原則として、正味売却価額と取得原価とを比較しますが、製造業における原材料等のように再調達原価の方が把握しやすく、正味売却価額が当該再調達原価に歩調を合わせて動くと想定される場合には、継続して適用することを条件として、再調達原価(最終仕入原価を含む)を取得原価とを比較することもできます(棚卸資産の評価に関する会計基準10参照)。

なお、売却市場において市場価格が観察できないときには、合理的に算定された価額を売価とします。これには、期末前後での販売実績に基づく価額を用いる場合や、契約により取り決められた一定の売価を用いる場合なども含みます。また、営業循環過程から外れた滞留又は処分見込等の棚卸資産について、合理的に算定された価額によることが困難な場合には、正味売却価額まで切り下げる方法に代えて、その状況に応じ、次のような方法により収益性の低下の事実を適切に反映するよう処理することになります(棚卸資産の評価に関する会計基準8、9参照)。

(1) 帳簿価額を処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む。)まで切り下げる方法
(2) 一定の回転期間を超える場合、規則的に帳簿価額を切り下げる方法

また、従来より品質低下・陳腐化評価損と低価法評価損とはその取扱いに違いがありましたが、これらは発生原因は相違するものの、正味売却価額が下落することにより収益性が低下しているという点からみれば相違がないことから、会計上は同様に処理することになります(棚卸資産の評価に関する会計基準38、39参照)。

低価基準の会計処理

低価基準の会計処理に関しては、期末に棚卸資産の帳簿価額(原価)と正味売却価額などとを比較し、正味売却価額が帳簿価額を下回っている場合は当該差額を『商品評価損』勘定により当期の費用として処理します。
なお当該評価差額は翌期に戻入れを行う方法(洗替え法)と行わない方法(切放し法)のいずれかの方法により処理します。

(具体例-商品評価損)

商品について、期末に実地棚卸を行った結果は以下の通りである。決算整理仕訳を示しなさい(期首在庫はゼロである)。

帳簿有高:100個(仕入単価すべて@10円)
実際有高:100個(棚卸減耗分は発生していないが、棚卸において一部の商品に品質低下が見られた。品質低下の見られた商品は5個であり、その正味売却価額は@8円である)

(計算過程)
商品5個について品質低下が生じており、正味売却価額が帳簿価額を下回っております。よって評価損を計上し、当期の費用として処理することが必要です。

商品評価損:(@10円-@8円)×5個=10円
繰越商品:100個×@10円-10円=990円

(決算時)
借方 金額 貸方 金額
繰越商品 1,000 仕入 1,000
商品評価損 10 繰越商品 10

低価基準の会計処理として、洗替え法を採用している場合は翌期首に以下の仕訳が必要となります。

(翌期)
借方 金額 貸方 金額
繰越商品 10 商品評価損 10

なお、洗替え法と切放法とは棚卸資産の種類ごとに選択適用することができます。また、売価の下落要因を区分把握できる場合には、物理的劣化や経済的劣化、若しくは市場の需給変化の要因ごとに選択適用することもできます。ただし、いったん採用した方法は、原則として、継続して適用しなければならない点にご注意ください(棚卸資産の評価に関する会計基準14参照)。

商品評価損の損益計算書における表示

通常の販売目的で保有する棚卸資産について、収益性の低下による簿価切下額は売上原価の内訳項目として表示しますが、棚卸資産の製造に関連し不可避的に発生すると認められるときには製造原価として処理します。また、収益性の低下に基づく簿価切下額が、臨時の事象に起因し、かつ、多額であるときには、特別損失に計上します。臨時の事象とは、例えば次のような事象をいいますが、この場合には、上記の会計処理について洗替え法を適用しているばあいでも当該評価損の戻りいれを行うことはできません(棚卸資産の評価に関する会計基準14参照)。

(1) 重要な事業部門の廃止
(2) 災害損失の発生

法人税法における棚卸資産の評価基準についての取り扱い

会計上、棚卸資産の期末評価については低価基準の採用が義務づけられています(棚卸資産の評価に関する会計基準7参照)が、法人税法においては低価基準(低価法)の採用は、原価法との選択適用となっております。選択する評価方法は届け出ることが求められますが、もし、評価方法を届け出なかった時は最終仕入原価法による原価法により評価することになります(法人税法施行令第28条、第29条、第31条参照)。

(関連項目)
棚卸資産の取得原価の算定
棚卸資産の評価方法(払出単価の算定方法)について

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