最終仕入原価法(棚卸資産の評価方法)の仕訳・会計処理

棚卸資産の評価方法(払出単価の決定方法)のうち、最終仕入原価法とは、法人税法施行令第28条第1項において以下のように規定しています。

最終仕入原価法 期末棚卸資産をその種類等の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、当該事業年度終了の時から最も近い時において取得をしたものの一単位当たりの取得価額をその一単位当たりの取得価額とする方法をいう。

最終仕入原価法は、決算日に最も近い仕入原価や製造原価をもって、すべての期末棚卸資産を評価する方法です。この方法によった場合、期末棚卸資産の一部だけが実際取得原価で評価されるものの、その他の部分は時価に近い価額で評価されることとなる場合が多いと考えられ、無条件に取得原価基準に属する方法として適用を認めることは適当ではありません。よって棚卸資産の評価に関する会計基準において認められている方法ではありません(期末棚卸資産の大部分が最終の仕入価格で取得されているときのように期間損益の計算上弊害がないと考えられる場合や、期末棚卸資産に重要性が乏しい場合においてのみ容認されています。棚卸資産の評価に関する会計基準34-4参照)。

ただし、法人税法上は法定評価方法されており、法人が棚卸資産の評価方法を届け出なかった場合は最終仕入原価法により評価することが求めらます(法人税法施行令第29条第1項、第31条第1項参照)。
また実務における簡便性から、中小企業などを中心に広く採用されている方法です。

(最終仕入原価法における期末商品評価)
期末棚卸資産価額=期末棚卸資産数量×最終仕入原価
(具体例-最終仕入原価法)

当社は商品販売を営む中小企業である。当社では棚卸資産の評価方法として最終仕入原価法を採用しており、期末に棚卸を行った結果、期末商品数量は50個であり、期末に最も近い仕入単価は@120円であった。当社の商品に関する決算整理仕訳を示しなさい(期首商品はゼロ)。

(計算過程)
最終仕入原価法は、期末の在庫数量に、最終仕入単価を乗じることにより期末棚卸資産を評価します。

期末商品棚卸高=50個×120円=6,000円

(仕訳・決算時)
借方 金額 貸方 金額
繰越商品 6,000 仕入 6,000

なお、この方法は売価還元法などと同様、期末棚卸資産を簡易に算定するための方法であり、期中払出単価を算定するための方法ではありません。

最終仕入原価法のメリットとデメリット

上記の通り、最終仕入原価法は期末在庫の一部のみを実際の取得原価で評価し、他の部分は実際の取得原価よりも時価に近い価額で評価する方法であり、取得原価基準に属する方法として認められるものではありません。したがって会計基準においては、原則としてその適用は認められず、期末棚卸資産の大部分が最終の仕入価格で取得されている場合や、期末棚卸資産に重要性が乏しい場合においてのみ容認される方法です。
しかし法人税法上は法定評価方法とされており、また実務的に非常に簡易な方法であるため多くの中小企業において採用されている方法であるといえます。
最終仕入原価法を採用するメリット・デメリットをまとめると以下のようになります。

メリット 期末在庫数量に最終仕入原価を乗じて期末在庫を評価するものであり、実務的に非常に簡便である。
デメリット 期末在庫数量が最終仕入数量を上回る場合、上回った部分に関しては、実際の取得原価ではなく時価に近い価額での評価となり、取得原価基準による評価とは認められない。

(関連項目)
棚卸資産の取得原価の算定
棚卸資産の評価方法(払出単価の算定方法)について

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