貸倒懸念債権に対する貸倒引当金の算定(財務内容評価法)

売掛金や貸付金などの債権に対し貸倒引当金を設定する場合、債務者の財政状態及び経営成績などに応じて債権を、一般債権・貸倒懸念債権・破産更生債権等に区分し、それぞれの区分に応じた方法で貸倒引当金を算定することになります。
このうち貸倒懸念債権とは、経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権をいいます。貸倒懸念債権については債権の状況に応じて、次のいずれかの方法で貸倒引当金を設定します。ただし同一の債権については、債務者の財政状態及び経営成績の状況等が変化しない限り、同一の方法を継続して適用します(金融商品に関する会計基準 第28項(2)参照)。

評価方法 内容 参照先
財務内容評価法 債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額について債務者の財政状態及び経営成績を考慮して貸倒見積高を算定する方法 当ページ下記参照
キャッシュ・フロー見積法 債権の元本の回収及び利息の受取りに係るキャッシュ・フローを合理的に見積ることができる債権については、債権の元本及び利息について元本の回収及び利息の受取りが見込まれるときから当期末までの期間にわたり当初の約定利子率で割り引いた金額の総額と債権の帳簿価額との差額を貸倒見積高とする方法 キャッシュ・フロー見積法の仕訳

財務内容評価法に関する仕訳

財務内容評価法は債権額から担保の処分見込み額等を控除し、その残額について債務者の財政状態・経営成績などを考慮して貸倒見積高を設定する方法です。これは、債権の回収原資として、担保処分を見越している場合などに使用される方法となります。また、キャッシュ・フロー見積法を採用するためには将来キャッシュフローを合理的に見積もる必要がありますので、将来キャッシュフローの合理的な見積もりができない場合なども財務内容評価法によることになります。

(具体例-貸倒懸念債権・財務内容評価法)

取引先A社に対する貸付金1,000,000円を貸倒懸念債権として、財務内容評価法で貸倒引当金を設定する。A社の担保の処分見込額は200,000円であり、貸倒引当金の設定率は50%と判断した。

(計算過程)
1,000,000円(債権価額)-200,000円(担保の処分見込額)=800,000円
800,000円×50%=400,000円

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
貸倒引当金繰入 400,000 貸倒引当金 400,000

財務内容評価法の貸倒設定率に関しては、簿記検定や各種試験では通常与えられます。
なお、財務内容評価法を採用する場合には、債務者の支払能力を総合的に判断する必要があります。債務者の支払能力は、債務者の経営状態、債務超過の程度、延滞の期間、事業活動の状況、銀行等金融機関及び親会社の支援状況、再建計画の実現可能性、今後の収益及び資金繰りの見通し、その他債権回収に関係のある一切の定量的・定性的要因を考慮することにより判断されます。ただし、一般事業会社においては、債務者の支払能力を判断する資料を入手することが困難な場合もあり、例えば、貸倒懸念債権と初めて認定した期には、担保の処分見込額及び保証による回収見込額を控除した残額の50%を引き当て、次年度以降において、毎期見直す等の簡便法を採用することも考えられます。ただし、個別に重要性の高い貸倒懸念債権については、可能な限り資料を入手し、評価時点における回収可能額の最善の見積りを行うことが必要となります(金融商品会計に関する実務指針 第114項参照)。

(関連項目)
一般債権に対する貸倒引当金の算定(貸倒実績率法)
破産更生債権等に対する貸倒引当金の算定(財務内容評価法)

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