貸倒引当金の仕訳(洗替法・差額補充法)
売掛金や受取手形などの債権は、将来において回収不能(貸倒れ)となる可能性があります。そこで、将来における回収不能額を見積もり、当期の費用として計上するために設定されるのが貸倒引当金です。
これは、将来の貸倒れによる損失の原因は、当期に発生した金銭債権に関する事象にあるわけですから、当期に原因があるものとして当期の費用として処理することが必要となるため、貸倒引当金の設定が必要となります。
貸倒引当金を設定した時は、『貸倒引当金繰入額』という費用勘定を使って記帳し、将来の貸倒れ見積額を当期の費用として計上し、相手勘定は『貸倒引当金』という評価勘定(特定の資産に対するマイナス勘定)を使って記帳することになります。
(具体例-貸倒引当金)
期末における売掛金残高1,000,000円に対し、2%の貸倒引当金を設定した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金繰入 | 20,000 | 貸倒引当金 | 20,000 |
なお、貸倒引当金繰入の損益計算書における表示は、売掛金・受取手形などの営業債権に対するものは販売費及び一般管理費、貸付金などの営業債権以外の債権に対するものは営業外費用として表示します。
翌期以降の会計処理(洗替法と差額補充法)
設定した貸倒引当金について、翌期以降の取り扱いについては洗替法と差額補充法とがあります。それぞれの方法の特徴は以下の通りとなります。
洗替法 | 前期末に計上された貸倒引当金について、『貸倒引当金戻入』勘定という収益勘定を使って取崩し、改めて当期末の債権に対する貸倒引当金を全額計上しなおす方法です。 |
差額補充法 | 前期末に計上された貸倒引当金の当期末残高と、当期末に計上すべき貸倒引当金との差額について、後者の方が多きときは『貸倒引当金繰入』勘定、前者の方が大きいときは『貸倒引当金戻入』勘定を使って不足分のみ補充調整をする方法です。 |
『貸倒引当金戻入』は損益計算書上、営業外収益として表示します。
上記の方法のうち、会計上は差額補充法を選択する必要があります。
また、税法上は洗替法を原則(法人税法52条)としていますが、差額補充法を採用することもできます(法人税法基本通達11-1-1)。ただし、税法上は貸倒引当金を設定することができるのは中小法人等や銀行などに限られているため、税法上、大規模法人に関しては貸倒引当金を設定する事はできません(法人税法第52条第1項、なお経過措置を除く)。
(具体例1-貸倒引当金・洗替法)
1.第1期期末における売掛金残高1,000,000円に対し、2%の貸倒引当金を設定した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金繰入 | 20,000 | 貸倒引当金 | 20,000 |
2.翌第2期において、売掛金10,000円が貸倒れた。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 10,000 | 売掛金 | 10,000 |
3.第2期期末における売掛金残高1,500,000円に対し、2%の貸倒引当金を設定した(洗替法)。期末における貸倒引当金残高は10,000円である。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 10,000 | 貸倒引当金戻入 | 10,000 |
貸倒引当金繰入 | 30,000 | 貸倒引当金 | 30,000 |
上記の通り、貸倒引当金の設定対象となった債権に関して貸倒れが発生した時は、貸倒引当金を減少させますが、貸倒額が貸倒引当金設定を超えるときは、超える部分について『貸倒損失』などとして処理します(詳細は前期以前発生した債権が貸倒れたときの仕訳を参照ください)。また、当期に発生した貸倒引当金が貸倒れたときはすべて『貸倒損失』として処理します。
なお上記の仕訳のほかに、実務上は下記のように期中に発生した貸倒はすべて『貸倒損失』を使って処理し、期末(または期首)において前期から繰り越されてきた貸倒引当金全額を『貸倒引当金戻入』として処理することもあります(どちらの処理によっても損益は変わりません)。
(具体例2-貸倒引当金・洗替法、期中貸倒れをすべて貸倒損失として処理した場合)
2.翌第2期において、売掛金10,000円が貸倒れた。なお、当社は期中における貸倒れは貸倒損失として処理している。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒損失 | 10,000 | 売掛金 | 10,000 |
3.第2期期末における売掛金残高1,500,000円に対し、2%の貸倒引当金を設定した(洗替法)。期末における貸倒引当金残高は10,000円である。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 20,000 | 貸倒引当金戻入 | 20,000 |
貸倒引当金繰入 | 30,000 | 貸倒引当金 | 30,000 |
(具体例3-貸倒引当金・差額補充法)
1.第1期期末における売掛金残高1,000,000円に対し、2%の貸倒引当金を設定した。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金繰入 | 20,000 | 貸倒引当金 | 20,000 |
2.翌第2期において、売掛金10,000円が貸倒れた。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 10,000 | 売掛金 | 10,000 |
3.第2期期末における売掛金残高1,500,000円に対し、2%の貸倒引当金を設定した(差額補充法)。期末における貸倒引当金残高は10,000円である。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 20,000 | 貸倒引当金戻入 | 20,000 |
貸倒引当金繰入 | 30,000 | 貸倒引当金 | 30,000 |
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