転リース取引の仕訳・会計処理

リース物件の所有者から当該物件のリースを受け、さらに同一物件を概ね同一の条件で第三者にリースする取引を転リース取引といいます。

転リース取引を行った場合において、借手としてのリース取引及び貸手としてのリース取引の双方がファイナンス・リース取引に該当するときは、貸借対照表上は貸手としての『リース債権』(または『リース投資資産』)と借手としての『リース債務』の双方を計上することになりますが、支払利息、売上高、売上原価などは計上せずに、貸手として受け取るリース料総額と借手として支払うリース料総額との差額を手数料収入として各期に配分し、『転リース差益』などの勘定科目を使って各期の損益として計上することになります(リース取引に関する会計基準の適用指針第47項参照)。

(仕訳-転リース・貸手としてのリース料回収時の仕訳)
借方 金額 貸方 金額
現金預金 リース債権
預り金 ※1
転リース差益 ※2

※1 転リース取引の会計処理について、借手としてのリース取引及び貸手としてのリース取引の双方がファイナンス・リース取引に該当する場合には、受取リース料と支払リース料との差額のみを手数料収益として計上し、その他の損益を計上しません。したがってリース債権(リース投資資産)の利息相当額部分についてはいったん『預り金』として処理し、これをリース債務に係る利息相当額部分と相殺することになります。

※2 受取リース料と支払リース料との差額を各期の損益として配分し、当期分についてはこれを『転リース差益』として収益計上します。

(仕訳-転リース・借手としてのリース料支払時の仕訳)
借方 金額 貸方 金額
リース債務 現金預金
預り金 ※3

※3 リース債務の利息相当額については、上記の貸手としてリース料受取時に計上した『預り金』勘定を借方に記入し、受取時と支払時に計上した『預り金』勘定を相殺します

なお、『リース債権』(または『リース投資資産』)と『リース債務』勘定については利息相当額控除後の金額で計上することを原則としますが、利息相当額控除前の金額で計上することができもできます(リース取引に関する会計基準の適用指針第47項下段参照)。

(具体例-転リース取引)

当社は×1年4月1日(期首)にA社から機械を賃貸し、これをB社に転リースを行っている。以下の時点における仕訳を示しなさい。
(1) ×1年4月1日 転リース開始時
(2) ×2年3月31日 B社よりリース料受取時
(3) ×2年3月31日 A社へリース料支払時

(A社より賃貸する機械についての条件)
1.当該リース取引は所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当する
2.リース期間4年
3.借手の見積現金購入価額36,000円であり、追加借入率は年3%である
4.リース料の支払は毎年3月31日に1年分のリース料10,000円を後払い
5.リース料総額の割引現在価値は37,170円である。
6.リース料総額と借手の見積現金購入価額とを一致させる利率は4.3518%である
7.リース取引開始日はX1年4月1日、当社の決算日は3月31日である

(B社へ賃貸する機械についての条件)
1.当該リース取引は所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当する
2.リース期間4年
3.リース料の支払は毎年3月31日に1年分のリース料10,100円を受取る
4.貸手側と借手側のリース料の差額 100円が、当社の手数料となる
5.貸手の見積残存価額はゼロ円である

上記の条件よりリース債権・リース債務の回収・返済のスケジュールは以下の通りとなります

期間 期首残高 利息相当額 元本決済額 期末残高
×2年3月期 36,000 1,567 8,433 27,567
×3年3月期 27,567 1,200 8,800 18,767
×4年3月期 18,767 816 9,184 9,583
×5年3月期 9,583 417 9,583 0
1.×1年4月1日(転リース開始時の仕訳)

転リース取引の会計処理において、借手としてのリース取引及び貸手としてのリース取引の双方がファイナンス・リース取引に該当するときは、取引開始時において『リース債権』または『リース投資資産』と『リース債務』とを計上することになります。

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
リース投資資産 36,000 リース債務 36,000

借方の『リース投資資産』は貸手の立場からの債権(所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当しますので『リース投資資産』勘定を使用します)を計上したものであり、貸方の『リース債務』は借手の立場からの債務を計上したものとなります。

2.×2年3月31日(B社よりリース料受取時の仕訳)

転リース取引の会計処理において、借手としてのリース取引及び貸手としてのリース取引の双方がファイナンス・リース取引に該当するときは支払利息、売上高、売上原価などは計上せずに、貸手として受け取るリース料総額と借手として支払うリース料総額との差額を手数料収入として各期に配分し、『転リース差益』などの勘定科目を使って各期の損益として計上することになります。
本問では、×2年度の受取リース料と支払リース料との差額を当期の利益として計上します。
またこの場合、手数料収入以外の収益は計上しませんので、リース料受取額における利息相当額については、いったんこれを『預り金』勘定を使って記帳します。

(計算過程)
転リース差益:受取リース料10,100円-支払リース料10,000円=100円

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
現金 10,100 リース債権 8,433
預り金 1,567
転リース差益 100
3.×2年3月31日(A社へリース料支払時の仕訳)

転リース取引の会計処理において、借手としてのリース取引及び貸手としてのリース取引の双方がファイナンス・リース取引に該当するときは支払利息、売上高、売上原価などは計上せずに、貸手として受け取るリース料総額と借手として支払うリース料総額との差額を手数料収入として各期に配分し、『転リース差益』などの勘定科目を使って各期の損益として計上することになります。
リース料支払額に含まれる利息相当額部分については『預り金』勘定で借方に計上し、上記2の受取リース料に含まれる利息相当額部分と相殺します。

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
リース債務 8,433 現金 10,000
預り金 1,567

(関連項目)
所有権移転ファイナンスリース取引の借手側の仕訳・会計処理
所有権移転外ファイナンスリース取引の借手側の仕訳・会計処理
ファイナンス・リース取引(リース料の支払いが前払いの場合)の仕訳
ファイナンスリース取引を中途解約した時の仕訳・勘定科目
残価保証がある場合(ファイナンス・リース取引)の仕訳・会計処理
維持管理費用相当額(ファイナンスリース取引)の借手の仕訳・会計処理

スポンサードリンク