未成工事支出金(仕掛品)の仕訳・会計処理

建設業における会計処理や仕訳においては一般の商品売買業などとは異なる勘定科目を使用します。

建設業会計における『未成工事支出金』勘定とは、完成工事原価(売上原価)に計上していない工事費用をいい、製造業・工業簿記における『仕掛品』勘定に該当するものをいいます。
『未成工事支出金』勘定は、製造業における『仕掛品』勘定にするものですので、貸借対照表上は流動資産の区分に表示します。

(具体例-未成工事支出金)

建設業を営む当社は、×1年において、ビルの建設工事の請負契約を500,000円で受注した。工事は×1年より着工し、完成は×2年の期末となる予定である。また当該工事の見積工事原価総額は450,000円であり、各期の原価の発生額の内訳は以下の通りである。当該工事を工事完成基準で処理した場合の各期末の仕訳を示しなさい(商的工業簿記を前提とすること)。

(各期の工事原価の発生額の内訳)
×1年 ×2年
材料費 80,000円 100,000円
労務費 100,000円 120,000円
経費 20,000円 30,000円

各期の工事原価の発生額は当初の見積工事原価総額450,000円と一致する。

×1年期末の処理

×1年末時点において、工事は未だに完成していません。したがって×1年に発生した原価を『材料費』などの費目別勘定から『未成工事支出金』勘定(流動資産)へと振り替え、発生した原価を資産として翌期へ繰り越します。

(仕訳-未成工事支出金の集計)
借方 金額 貸方 金額
未成工事支出金 200,000 材料費 80,000
労務費 100,000
経費 20,000

商的工業簿記を前提とする限り、各期に発生した原価は決算時において『材料』などの費目別勘定から『未成工事支出金』勘定へと振替ます。また本問では工事完成基準を採用していますので、『未成工事支出金』に集計された原価は資産として翌期に繰り越すことになります(工事進行基準を採用している場合は各決算期に『未成工事支出金』に集計された原価を『完成工事原価』(売上原価)勘定に振替えて各期の費用として処理することになります)。

×2年期末の処理

×2年末において当該工事が完成し引き渡しが行われますので、×2年において工事収益及び工事原価の計上を行うことになります。まずは×2年に発生した原価について未成工事支出金へ集計することから行います。

(仕訳-未成工事支出金の集計)
借方 金額 貸方 金額
未成工事支出金 250,000 材料費 100,000
労務費 120,000
経費 30,000

次に工事収益の計上を行います。工事完成基準では完成・引き渡し時において工事収益の全額を計上することになりますので、×2年において工事の請負金額の全額について収益計上を行います。

(仕訳-完成工事高の計上)
借方 金額 貸方 金額
完成工事未収入金 500,000 完成工事高 500,000

最後に、これまでの発生した原価を『未成工事支出金』勘定(仕掛品)から『完成工事原価』勘定(売上原価)へと振替ます。完成時までに発生した原価は『未成工事支出金』勘定に集計されているため、これを全額『完成工事原価』という費用勘定へ振り替えます。

(仕訳-工事原価の振替)
借方 金額 貸方 金額
完成工事原価 450,000 未成工事支出金 450,000

『未成工事支出金』勘定に集計された各期の原価発生額の合計を、完成・引き渡しが行われた時に『完成工事原価』勘定へ振り替え、完成・引き渡し時の費用として処理することになります(工事進行基準を採用している場合は各期の期末に費用処理します)。

(関連項目)
建設業会計の勘定科目・費用の一覧

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