退職給付費用と退職給付引当金(年金資産がある場合)

企業外部に積み立てられた年金資産が存在する場合、年金資産は退職給付の支払のためのみに使用されることが制度的に担保されていることなどから、これを他の一般の資産と同様に企業の貸借対照表に資産として計上することには問題があり、財務諸表の利用者に誤解を与えるおそれと考えられることなどから、年金資産の額は退職給付引当金の計上額の計算にあたって、退職給付債務からこれを差し引くこととしています。
また、年金資産の運用によって生じると期待される期待運用収益は、年金資産を増加させるものであることから、その計上額の処理に当たっては退職給付費用から差し引くこととしています。

したがって、年金資産がある場合の退職給付引当金および退職給付費用の計上額は以下のように算定します(退職給付に関する会計基準第13・14・39項等参照)。

(年金資産がある場合の退職給付引当金と退職給付費用の算定)
退職給付引当金※=退職給付債務-年金資産
退職給付費用=勤務費用+利息費用-期待運用収益

(※注)なお、年金資産の額が退職給付債務の額を上回る場合には、これを前払年金費用として貸借対照表の固定資産の部に計上することになります。また、上記において差異等は存在しないものとしています。

(具体例-年金資産がある場合の退職給付引当金)

期首の退職給付債務を100,000円、年金資産を20,000円、勤務費用を5,000円、退職給付計算の割引率を3%、長期期待運用収益率を2%とした場合において、当期末時点における退職給付引当金の残高を計算し、当期の退職給付引当金計上に関する仕訳を示しなさい(年金基金への拠出額及び差異等はないものとする)。

(計算過程)

・勤務費用:5,000円
・利息費用:100,000円(期首退職給付債務)×3%(割引率)=3,000円
・期待運用収益:20,000円(期首年金資産)×2%(長期期待運用収益率)=400円

・期末の退職給付債務:100,000円(期首の退職給付債務)+5,000円(勤務費用)+3,000円(利息費用)=108,000円

・期末の年金資産:20,000円(期首年金資産)+400円(期待運用収益)=20,400円

∴退職給付費用計上額:5,000円(勤務費用)+3,000円(利息費用)-400円(期待運用収益)=7,600円

・期末の退職給付引当金=108,000円(期末退職給付債務)-20,400円(期末年金資産)=87,600円

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
退職給付費用 7,600 退職給付引当金 7,600

退職給付費用は損益計算書上、売上原価又は販売費及び一般管理費に計上します(退職給付に関する会計基準第14・28項参照)。

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