年金資産(掛金の拠出と退職給付の支払)の仕訳

1.年金資産の概要

年金資産とは、特定の退職給付制度のために、その制度について企業と従業員との契約(退職金規程等)等に基づき企業外部に積み立てられた資産であり、一定の要件を満たしたものをいいます(退職給付に関する会計基準第7項参照。なお厚生年金基金制度・確定給付企業年金制度において保有する資産は年金資産にあたりますが、厚生年金基金制度及び確定給付企業年金制度における業務経理に係る資産は年金資産に含まれません。退職給付に関する会計基準の適用指針第17項等参照)。

2.年金資産(掛け金の拠出・退職給付の支払い)の会計処理

この年金資産は退職給付の支払のためのみに使用されることが制度的に担保されていることなどから、これを他の一般の資産と同様に企業の貸借対照表に資産として計上することには問題があり、財務諸表の利用者に誤解を与えるおそれがあると考えられることなどから、年金資産の額は退職給付引当金の計上額の計算にあたって、退職給付債務からこれを差し引くこととしています。したがって、年金資産がある場合の退職給付引当金の計上額は以下のように算定します(退職給付に関する会計基準第69項等参照)。

(年金資産がある場合の退職給付引当金の算定)
退職給付引当金※=退職給付債務-年金資産

(※注)なお、年金資産の額が退職給付債務の額を上回る場合には、これを前払年金費用として貸借対照表の固定資産の部に計上することになります(退職給付に関する会計基準第13・27・39(3)項等参照)。

したがって、企業が年金基金に掛け金を拠出した時など、年金資産の額が増加した時は『退職給付引当金』勘定(負債)を減額させることによって記帳します。

(仕訳-年金資産の増加)
借方 金額 貸方 金額
退職給付引当金 1,000 現金 1,000

いっぽう、年金基金から退職給付が支給され、年金資産が減額した時は同時に退職給付債務も同額減少するため、簿記上の仕訳処理は無しとなります(貸借同額のため)。なお、理解のため仮に仕訳を切ると下記のようになります。

(仕訳-年金資産の減少)
借方 金額 貸方 金額
退職給付引当金
(退職給付債務)
1,000 退職給付引当金
(年金資産)
1,000
(具体例-年金資産)

1.退職年金基金へ現金30,000円を拠出した。

(仕訳-掛金の拠出)
借方 金額 貸方 金額
退職給付引当金 30,000 現金 30,000

掛金の拠出によって年金資産が増加します。年金資産の増加額は資産計上するのではなく、退職給付引当金(負債)の計上額の計算にあたって、これを差し引くことになりますので、退職給付引当金勘定(負債)減額します。

2.従業員が退職し、退職年金基金から退職一時金として50,000円が支払われた。

(仕訳-退職給付の支払)
借方 金額 貸方 金額
仕訳なし

年金基金から退職給付が支給され、年金資産が減額した時は同時に退職給付債務も同額減少するため、簿記上の仕訳処理は無しとなります(貸借同額のため)。

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