新株予約権が権利行使された時の会計処理

新株予約権とは、株式会社に対して行使することにより当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利をいいます(会社法第2条第21号参照)。
新株予約権の権利者が新株予約権を行使した時、発行者は当該会社の株式の時価に関わらず、あらかじめ定められた価格で株式を発行することが必要となります。
新株予約権を発行した時の会計処理の流れは以下の通りとなります。

(新株予約権の会計処理)
内容 参照ページ
発行時 新株予約権者から払い込まれた金額を『新株予約権』(純資産)勘定で記帳します。 新株予約権を発行した時の会計処理
権利行使時 発行時の払込額と行使時の払込額(行使価額)の合計を資本金勘定などに振り替えます。 このページの下部参照
満了時 権利行使期間が満了した時(失効した時)は失効分を『新株予約権勘定』から『新株予約権戻入益』(特別利益)勘定に振り替えます。 新株予約権の満了時の会計処理

会社が新株予約権の保有者に新株予約権の権利を行使された時は、新株予約権発行時の払込額と新株予約権の権利行使価額の合計を、新株式の発行価額として資本金勘定に振り替えます(なお払込金額の2分の1以下の金額の範囲内で資本金に組み入れないこともできます。詳細は増資時(新株発行時)の仕訳をご参照ください)。

また、新株式を発行するかわりに会社が保有している自己株式を移転することもできます。この場合、新株予約権発行時の払込額と新株予約権の権利行使価額の合計額と移転する自己株式の帳簿価額との差額は『自己株式処分差益』または『自己株式処分差損』勘定を使って記帳します。自己株処分差益勘定等はその他資本剰余金として純資産の部に表示されます。

(具体例1-新株予約権の権利行使時・新株発行)

当社が下記の条件で発行した新株予約権のうち、60%(6個)分について権利が行使された。当社ではこれに対し、新株を発行し、全額を資本金として払込額は当座預金とした。権利行使時の処理を仕訳しなさい。

(発行条件)
1.新株予約権発行額総額100,000円(新株予約権10個)
2.新株予約権1個につき発行する株式は20株
3.権利行使期間はX1年4月からX1年9月まで
4.権利行使価額は1株当たり2,000円

(計算過程)

上記新株予約権のうち、60%(6個)分の権利が行使されているため、権利行使に際し払い込まれた金額は

6個×20株×2,000円=240,000円

となります。これに新株予約権発行時の払込額60,000円(=100,000円×60%)を加算した300,000円が新株式の発行価額となります。

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
当座預金 240,000 資本金 300,000
新株予約権 60,000

上記の設例では新株式の発行価額の全額を資本金としていますが、仮に資本金組み入れ額を会社法規定の最低額(50%以上)とした場合の仕訳は以下の通りとなります。

(仕訳・資本金組み入れ額が会社法規定の最低限度額の場合)
借方 金額 貸方 金額
当座預金 240,000 資本金 150,000
新株予約権 60,000 資本準備金 150,000
(具体例2-新株予約権の権利行使時・自己株式の移転)

当社が下記の条件で発行した新株予約権のうち、60%(6個)分について権利が行使された。当社ではこれに対し、自己株式(簿価280,000円)を移転し、払込額は全額を当座預金とした。

(発行条件)
1.新株予約権発行額総額100,000円(新株予約権10個)
2.新株予約権1個につき発行する株式は20株
3.権利行使期間はX1年4月からX1年9月まで
4.権利行使価額は1株当たり2,000円

(計算過程)

上記新株予約権のうち、60%(6個)分の権利が行使されているため、権利行使に際し払い込まれた金額は

6個×20株×2,000円=240,000円

となります。これに新株予約権発行時の払込額60,000円(=100,000円×60%)を加算した300,000円が自己株式移転の対価となります。

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
当座預金 240,000 自己株式 280,000
新株予約権 60,000 自己株式処分差益 20,000

『自己株式処分差益』勘定は『その他資本剰余金』勘定を使用することもあります。

(関連項目)
新株予約権を取得した側の仕訳・会計処理

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