自己株式を処分した時の仕訳・会計処理
自社が発行した株式を取得した時の当該株式を自己株式といいます。自己株式は資本の払い戻しとしての性格を有することから、他社が発行した株式(有価証券)とは異なる扱いが必要となります。
自己株式に関する会計処理のポイントは以下の通りです(企業会計基準第1号 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準第4項以下参照)。
内容 | 参照ページ | |
取得時 | 取得した自己株式は、取得原価をもって評価し、純資産の部の株主資本から控除します。 | 自己株式を取得した時の会計処理 |
決算時 | 期末に保有する自己株式は、純資産の部の株主資本の末尾に自己株式として一括して控除する形式で表示します。 | 自己株式の決算時の会計処理 |
処分時 | 自己株式の処分対価と帳簿価額との差額を『自己株式処分差益』または『自己株式処分差損』勘定として処理します。 | このページの下部参照 |
消去時 | 自己株式を消却した場合には、消却手続が完了したときに、消却の対象となった自己株式の帳簿価額をその他資本剰余金から減額します | 自己株式消去時の会計処理 |
所有する自己株式を他者に譲渡することを自己株式の処分といいます。自己株式を処分した時は自己株式の帳簿価額を減額しますが、処分する自己株式の処分対価と帳簿価額との差額は『自己株式処分差益』または『自己株式処分差損』(あわせて自己株式処分差額といいます)勘定を使って記帳します。
自己株式処分差益は純資産の部においてその他資本剰余金に計上し、自己株式処分差損はその他資本剰余金から減額します。その他資本剰余金から減額した結果、その他資本剰余金の残高が負の値となった場合には、会計期間末において、その他資本剰余金を零とし、当該負の値をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額することになります。
なお、自己株式処分のために要した手数料は『支払手数料』などの勘定を使い、損益計算書上は営業外費用として表示します(企業会計基準第1号 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準第4・5・6・9・10・12・14項参照)。
(具体例1-自己株式の処分)
当社は保有する自己株式1,000株(簿価50,000円)のうち、300株を1株当たり55円で処分した。代金は、処分に際し要した手数料300円を差し引いたのち、直ちに当座預金とした。
(計算過程)
自己株式処分差額は
300株×55円-15,000円=1,500円(自己株式処分差益)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
当座預金 | 16,200 | 自己株式 | 15,000 |
支払手数料 | 300 | 自己株式処分差益 | 1,500 |
(具体例2-自己株式の処分・その他資本剰余金が負の値となったとき)
当社のその他資本剰余金に関する決算整理前残高試算表の残高は以下の通りである。自己株式処分差額に関する会計期末の仕訳を示しなさい(なお、自己株式処分差額以外のその他資本剰余金は無いものとする)。
(決算整理前残高試算表)
自己株式処分差益 1,500円(借方残)
自己株式処分差損 2,000円(貸方残)
繰越利益剰余金 5,000円(借方残)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
自己株式処分差益 | 1,500 | 自己株式処分差損 | 2,000 |
繰越利益剰余金 | 500 | - | - |
期末において、自己株式処分差益より自己株式処分差損の方が大きく、その他資本剰余金が負の値となるため、当該負の値をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額しています(自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準第12項参照)。
(関連項目)
新株発行と自己株式処分を同時に行った時の会計処理
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