貸付金・借入金に関し発生した電子記録債権債務の仕訳・勘定科目

電子記録債権とは、電子記録債権法(2008年12月施行)により創設された、新しい類型の金銭債権をいいます。電子記録債権では、その発生又は譲渡について、電子記録(磁気ディスク等をもって電子債権記録機関が作成する記録原簿への記録事項の記録)を要件としており、手形債券などのデメリット(支払事務手続にかかるコスト、保管・搬送等にかかるリスクなど)を解消し、新しい類型の債権・債務として広く利用されています(実務対応報告第27号 電子記録債権に係る会計処理及び表示についての実務上の取扱い「目的」等参照)。

電子記録債権の会計処理については、その経済的機能などから手形債権に準じて取り扱うことが適当であると考えられており、その電子記録債権の元となった取引や債権の違いにより、以下のように異なる会計処理が行われることになります(実務対応報告第27号 電子記録債権に係る会計処理及び表示についての実務上の取扱い「会計処理」等参照)。

(電子記録債権の会計処理)
売掛金・買掛金などの通常の営業取引に伴って発生する電子記録債権・債務 『電子記録債権』『電子記録債務』勘定を使って記帳し、売掛金や買掛金とは区分して表示します。
貸付金・借入金などの金銭債権債務に伴って発生する電子記録債権・債務(当ページ下記参照 『貸付金』『借入金』勘定を使って記帳し、貸付金や借入金などに含めて表示します。
有価証券・固定資産の売買などの通常の営業取引以外の取引よって発生した債権債務に伴って発生する電子記録債権・債務 『営業外電子記録債権』『営業外電子記録債務』勘定を使って記帳し、未収金や未払金とは区分して表示します。

貸付金や借入金等については、証書貸付と手形貸付とを区分せず、ともに『貸付金』や『借入金』などの科目に含めて表示していることから、これらに関連して電子記録債権・債務が発生しても手形債権に準じて取り扱うため、科目の振り替えは行いません。

(具体例-貸付金・借入金に係る電子記録債権)

1.A社(貸主)はB社(借主)に金銭消費貸借契約により現金100,000円を貸し付けた。A社およびB社の仕訳を示しなさい(以下同様)。

(仕訳-A社)
借方 金額 貸方 金額
貸付金 100,000 現金 100,000
(仕訳-B社)
借方 金額 貸方 金額
現金 100,000 借入金 100,000

2.発生記録によりA社のB社に対する貸付金を電子記録債権とした。

(仕訳-A社)
借方 金額 貸方 金額
仕訳なし
(仕訳-B社)
借方 金額 貸方 金額
仕訳なし

貸付金や借入金の関連して発生した電子記録債権・債務は貸付金や借入金と区分しませんので、振り替えための仕訳は必要はありません。

3.B社は電子記録債務100,000円を当座預金口座から決済し、A社の当座預金口座に振り込まれた(以下同様)。

(仕訳-A社)
借方 金額 貸方 金額
当座預金 100,000 貸付金 100,000
(仕訳-B社)
借方 金額 貸方 金額
借入金 100,000 当座預金 100,000

なお、仮にA社(債権者)が電子記録債権を現金98,000円で譲渡し、譲渡記録を行った場合の仕訳は以下のようになります。

(仕訳-A社)
借方 金額 貸方 金額
現金 98,000 貸付金 100,000
貸付債権売却損 2,000
(仕訳-B社)
借方 金額 貸方 金額
仕訳なし

(関連項目)
手形貸付金・手形借入金(金融手形)の仕訳
売掛金に関し発生した電子記録債権を譲渡した時の仕訳・会計処理
営業外取引に関し発生した電子記録債権債務の仕訳・勘定科目

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