電子記録債権の仕訳・勘定科目

電子記録債権とは、電子記録債権法(2008年12月施行)により創設された、新しい類型の金銭債権をいいます。電子記録債権では、その発生又は譲渡について、電子記録(磁気ディスク等をもって電子債権記録機関が作成する記録原簿への記録事項の記録)を要件としており、手形債券などのデメリット(支払事務手続にかかるコスト、保管・搬送等にかかるリスクなど)を解消し、新しい類型の債権・債務として広く利用されています(電子記録債権に係る会計処理及び表示についての実務上の取扱い 目的等参照)。

電子記録債権については、債権者または債務者が債権債務の発生記録を電子債権記録機関に登録することによって発生し、売掛金や買掛金に伴って発生した電子記録債権・債務については『電子記録債権』勘定(流動資産)・『電子記録債務』勘定(流動負債)を使って記帳することになります。

(具体例-電子記録債権・電子記録債務)

1.A社(債務者)はB社(債権者)に対し、買掛金3,000円の債務を有している。この度、当該債権債務の決済を電子債権記録機関を通じて行うため、A社は3,000円の債務について発生記録を行い、B社はその通知を受けた。A社・B社の仕訳を示しなさい。

(仕訳-A社・債務者)
借方 金額 貸方 金額
買掛金 3,000 電子記録債務 3,000
(仕訳-B社・債権者)
借方 金額 貸方 金額
電子記録債権 3,000 売掛金 3,000

債務者A社が買掛金の支払いについて電子債権記録機関で行うため、電子債権記録機関に発生記録を行い、債権者B社はその通知を受けています。したがって債務者A社の『買掛金』は『電子記録債務』へ、債権者B社の『売掛金』は『電子記録債権』へと振り替えられます(掛代金決済のため手形を振出し、債務者は『買掛金』を『支払手形』へ振り替え、債権者は『売掛金』を『受取手形』へと振り替えるのと同様の処理となります)。

2.上記1の電子記録債権・債務について支払期日が到来し、電子記録債権金額3,000円がA社の普通預金口座からB社の普通預金口座へと振り込まれた

(仕訳-A社)
借方 金額 貸方 金額
電子記録債務 3,000 普通預金 3,000
(仕訳-B社)
借方 金額 貸方 金額
普通預金 3,000 電子記録債権 3,000

(関連項目)
電子記録債権を譲渡した時の仕訳・会計処理
貸付金・借入金に関し発生した電子記録債権債務の仕訳・勘定科目
営業外取引に関し発生した電子記録債権債務の仕訳・勘定科目

電子記録債権の表示(応用論点)

電気記録債権については、紙媒体と電子媒体の違いなどはあるものの手形債権の代替として機能することが想定されており、会計処理上においても、今後も並存する手形債権に準じて取り扱うことが適当であると考えられています。したがって、貸借対照表上、手形債権が指名債権とは別に区分掲記される取引(売掛金・買掛金に係る取引など)に関しては、電子記録債権についても売掛金などの指名債権とは別に区分掲記することとし、『電子記録債権』『電子記録債務』など電子記録債権を示す科目をもって表示することになります。
このため、発生記録により売掛金に関連して電子記録債権を発生させた場合には、電子記録債権を示す科目に振り替え、また譲渡記録により当該電子記録債権を譲渡する際に、保証記録も行っている場合には、受取手形の割引高又は裏書譲渡高と同様に、財務諸表に注記を行うことになります。

いっぽう貸付金や借入金等については、現行の企業会計上、証書貸付や手形貸付等に区分掲記せずに『貸付金』や『借入金』などの科目を使用しまとめて表示していることから、それらに関連して電子記録債権が発生しても、電子記録債権・債務を表す科目への振り替えを行わず、『貸付金』や『借入金』に含めて表示することになります。
また、手形債権が指名債権とは別に区分掲記される取引であっても、重要性が乏しい場合には、電子記録債権を区分掲記ではなく手形債権に含めて表示することができます(電子記録債権に係る会計処理及び表示についての実務上の取扱い 会計処理参照)。

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