ファイナンスリース取引の貸手(取引開始日に売上計上する方法)の仕訳
ファイナンス・リース取引について、貸手は通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行うことになりますが、当該リース取引が所有権移転ファイナンス・リース取引および所有権移転外ファイナンス・リース取引と判定された場合の会計処理については、取引実態に応じ、次3つの方法のうち、いずれかの方法により継続的に処理することになります(リース取引に関する会計基準第9項、リース取引に関する会計基準の適用指針第51・61項参照)。
1.リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法 | 貸手はリース取引開始日に、リース料総額で売上高を計上し、同額をリース債権※として計上します。また同時に、リース物件の現金購入価額により売上原価を計上します。 | 当ページ下記参照 |
2.リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法 | 貸手はリース取引開始日に、リース物件を現金購入価額により、リース債権※として計上します。 各期に計上する収益は、その受取時において売上高として計上し、当該金額からリース期間中の各期に配分された利息相当額を差し引いた額をリース物件の売上原価として計上します。 |
リース取引の貸手(受取時に売上高を計上する方法)の仕訳 |
3.売上高を計上せずに利息相当額を各期へ配分する方法 | 貸手はリース取引開始日に、リース物件の現金購入価額により、リース債権※を計上します。 各期に計上する収益は、その受取時において利息相当額部分とリース債権の元本回収額部分とに区分し、前者を受取利息として各期の収益に配分します。 |
リース取引の貸手(受取利息を計上する方法)の仕訳 |
※上記の『リース債権』について、所有権移転外ファイナンスリース取引の場合は『リース投資資産』勘定を使って処理します。
上記1または2の方法を採用する場合には、割賦販売取引において採用している方法との整合性を考慮し、いずれかの方法を選択します。
なお、所有権移転ファイナンスリース取引の借手の会計処理は所有権移転ファイナンスリース取引の借手側の仕訳・会計処理、所有権移転外ファイナンスリース取引の借手の会計処理は所有権移転外ファイナンスリース取引の借手側の仕訳・会計処理をご参照ください。
リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法の会計処理
1.リース取引開始時の仕訳
ファイナンス・リース取引の貸手の会計処理について、リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法を採用した場合、貸手はリース取引開始時においてリース料総額を『リース債権』勘定(資産)と『売上高』勘定(収益)として計上し、同時にリース物件の現金購入価額を『売上原価』勘定(費用)として計上します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
リース債権 | (リース料総額) | 売上高 | (リース料総額) |
売上原価 | (現金購入価額) | 買掛金 | (現金購入価額) |
※所有権移転外ファイナンス・リース取引の場合、貸手の債権計上に使用する勘定科目は『リース債権』勘定ではなく、『リース投資資産』勘定を使用しますのでご注意ください。
2.リース料受取時の仕訳
貸手が借手からリース料を受け取った時は受取額について『リース債権』勘定(または『リース投資資産』)を減額し、リース取引に関する債権を減少させます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
現金預金 | (リース料受取額) | リース債権 | (リース料受取額) |
3.決算時(利息繰延べ処理)の仕訳
リース取引開始時において計上された売上高(リース料総額)と売上原価(リース物件の購入価額)との差額については、利息相当額として取り扱うことになります。 利息相当額はリース取引開始時に全額収益計上するのではなく、リース期間の各期に配分し、各期の損益として処理します。したがって、決算時において翌期以降の期間に対応する利息相当額について『繰延リース利益繰入』『繰延リース利益』勘定を使用し、これを利益から控除し、翌期へ繰り延べます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
繰延リース利益繰入 | (繰延額) | 繰延リース利益 | (繰延額) |
なお、翌期以降に配分された利息相当額については『繰延リース利益戻入益』勘定を使って各期において収益計上を行います。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
繰延リース利益 | (配分額) | 繰延リース利益戻入益 | (配分額) |
利息相当額をリース期間中の各期に配分する方法は、原則として利息法により、またこの場合に用いる利率は、貸手の計算利子率とします(計算利子率とは、リース料総額と見積残存価額の合計額の現在価値が、当該リース物件の現金購入価額と等しくなるような利率をいいます。具体的な計算方法が下記具体例をご参照ください。リース取引に関する会計基準第14項、リース取引に関する会計基準の適用指針第53項参照)。
また『繰延リース利益』は貸借対照表上において『リース投資資産』から減額し、『繰延リース利益繰入』『繰延リース利益戻入益』は損益計算書上において売上総利益の調整項目とします。
4.重要性が乏しい場合の処理(所有権移転外ファイナンス・リース取引-定額法の採用)
所有権移転外ファイナンス・リース取引について、貸手としてのリース取引に重要性が乏しいと認められる場合(未経過リース料及び見積残存価額の合計額の期末残高が当該期末残高及び営業債権の期末残高の合計額に占める割合が10%未満である場合など)で、当該企業がリース業を主業としているものではない場合、利息相当額の総額をリース期間中の各期に配分する方法として利息法ではなく、より簡便な定額法を採用することができます(リース取引に関する会計基準の適用指針第53項参照)。
(具体例-リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法・ファイナンスリース取引の貸手)
当社(リース会社)は×1年4月1日(期首)に以下の条件でリース契約(所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当する)を締結した。以下の時点における仕訳をそれぞれ示しなさい。
1.×1年4月1日(リース取引開始時)
2.×2年3月31日(リース料受取時)
3.×2年3月31日(決算整理仕訳)
1.リース期間4年 2.リース物件の貸手の現金購入価額420,000円であり、代金は掛けとした 3.リース物件の見積残存価額が0円である。 4.リース料の受取りは毎年3月31日に1年分のリース料120,000円を後受けする 5.リース取引開始日はX1年4月1日、当社の決算日は3月31日である 6.貸手の計算利子率は5.5638%である |
1.×1年4月1日(リース取引開始時)の仕訳
所有権移転外ファイナンス・リース取引の貸手の会計処理について、リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法では、貸手はリース取引開始時においてリース料総額を『リース投資資産』勘定(資産)と『売上高』勘定(収益)として計上し、同時にリース物件の現金購入価額を『売上原価』勘定(費用)として計上します。
(計算過程)
リース料総額:1年分のリース料120,000円×4年=480,000
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
リース投資資産 | 480,000 | 売上高 | 480,000 |
売上原価 | 420,000 | 買掛金 | 420,000 |
所有権移転ファイナンスリース取引の場合は上記の『リース投資資産』勘定は『リース債権』勘定を使用しますのでご注意ください。
2.×2年3月31日(リース料受取時)
所有権移転外ファイナンス・リース取引の貸手の会計処理について、リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法では、貸手が借手からリース料を受け取った時は受取額について『リース投資資産』勘定を減額し、リース取引に関する債権を減少させます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 120,000 | リース投資資産 | 120,000 |
3.×2年3月31日(決算整理仕訳)
リース取引開始時において計上された売上高(リース料総額)と売上原価(リース物件の購入価額)との差額については、利息相当額として取り扱うことになります。 利息相当額は利息法によりリース期間各期に配分し、各期の損益として処理します。したがって、決算時において翌期以降の期間に対応する利息相当額について『繰延リース利益繰入』『繰延リース利益』勘定を使用し、これを利益から控除し、翌期へ繰り延べます。
利息法によるリース投資資産の回収スケジュールについては計算利子率5.5638%を使用して策定した場合、以下のようになります。
期間 | 期首残高 | 利息相当額 | 元本回収 | 期末残高 |
×2年3月期 | 420,000 | 23,368 | 96,632 | 323,368 |
×3年3月期 | 323,368 | 17,992 | 102,008 | 221,360 |
×4年3月期 | 221,360 | 12,316 | 107,684 | 113,676 |
×5年3月期 | 113,676 | 6,324 | 113,676 | 0 |
利息法による利息相当額の配分計算について、たとえば×2年3月期(当期)の利息相当額および元本回収額などは計算利子率を使用し、以下のように算定されます。
(計算過程)
当期分の利息相当額:期首元本420,000円×計算利子率5.5638%=23,368円
当期の元本回収額:受取リース料120,000円-当期の利息相当額23,368円=96,632円
当期末のリース投資資産:期首元本420,000円-当期元本回収額96,632円=323,368円
利息相当額の合計:リース料総額480,000円-リース投資資産当初残高420,000円=60,000円
翌期以降の利息配分額:60,000円-当期分の利息相当額23,368円=36,632円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
繰延リース利益繰入 | 36,632 | 繰延リース利益 | 36,632 |
繰延リース利益繰入は損益計算書上において売上総利益の調整項目となり、繰延リース利益は貸借対照表上においてリース投資資産から減額します。
(関連項目)
ファイナンスリース取引とオペレーティングリース取引
所有権移転ファイナンスリースと所有権移転外ファイナンス・リース取引
所有権移転ファイナンスリース取引の借手側の仕訳・会計処理
所有権移転外ファイナンスリース取引の借手側の仕訳・会計処理
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