自己宛為替手形の仕訳

為替手形とは、手形の振出人(ここではAとします、以下同様)が名宛人Bに対し、一定の金額を指図人Cに対して支払うことを依頼する手形をいいます。
自己宛為替手形とは、上記のうち、手形振出人Aと名宛人(支払人)Bとが同一人物の場合に作成される為替手形です。その関係をまとめると以下のようになります。

(自己宛為替手形の登場人物)
A 振出人 手形の作成者です。名宛人B(ここでは自分)に対し、手形金額を指図人Cに対して払うように依頼する人です。
A 名宛人 手形金額の支払者です。振出人A(ここでは名宛人と同一人物)の依頼により、手形金額を指図人Cに対して支払う人です。
C 指図人 手形金額の受取人です。振出人Aの指示により、手形金額を名宛人A(振出人と同一人物)から受け取る人です。

自己宛為替手形は、たとえば本店・支店間において取引先に対する支払元を変更したいときに使用されることがあります。東京の本店Aが大阪の取引先Cから商品を購入し買掛金がある場合、遠方の取引先との決済に関する手間を省略するため、自身の大阪支店Bを名宛人(東京本社と大阪支店は外部から見れば同一人物)とした為替手形を振出し、大阪支店から代金を決済することにより、遠方の取引先に対する代金決済の手間を省略することができます。
なお、自己宛為替手形を振り出したときの振出人・名宛人A、指図人Cそれぞれの仕訳は以下のようになります。

(具体例-自己宛為替手形)

Aは仕入先Cに対する買掛金300,000円の支払のため、自己を名宛人とする為替手形を振出し、Cに交付した。

(仕訳-手形振出人・名宛人A)
借方 金額 貸方 金額
買掛金 300,000 支払手形 300,000

Cに対する買掛金が支払手形(為替手形)に変わります。なお、自己宛為替手形では手形振出人と名宛人とは同一人物のため、名宛人が決済できなかったときに手形振出人が名宛人に代わって手形代金を支払う義務(遡及義務)は生じません。したがって偶発債務に関する仕訳や注記の必要はありません。

(仕訳-指図人C)
借方 金額 貸方 金額
受取手形 300,000 売掛金 300,000

Cにとっては、Aに対する売掛金がAに対する受取手形(為替手形)に変わります。

(関連項目)
自己受為替手形の仕訳

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