圧縮記帳・積立金方式の税効果会計適用に関する仕訳

圧縮記帳を積立金方式によって処理した場合、会計上の固定資産の価額と税務上(課税所得算定上)の固定資産の価額とには以下のように差額が生じます。

会計上の固定資産価額=取得原価
税務上の固定資産価額=取得原価-圧縮額

圧縮記帳を積立金方式によった場合、会計上は固定資産の減価償却は取得原価をもとに行うことになります。いっぽう、課税所得算定上は経理方法に関わらず減価償却は圧縮記帳後の固定資産価額をもとに算定することになりますので、会計上と税務(課税所得算定上)の資産価額に差額が生じることになります。
上記の会計上の税務上の差額は、将来において課税所得を増額させる(課税所得算定上の減価償却費の方が会計上の減価償却費より小さくなるため、課税所得を増加させることになります)ことになるため、税効果会計を適用し、将来加算一時差異として、当該差異(圧縮額)に法定実効税率を乗じた金額を『繰延税金負債』として計上します。

たとえば、建物の取得原価のうち、圧縮限度額1,000円を積立金方式で処理した場合において、法定実効税率を40%として税効果会計を適用した時の記帳は以下のようになります

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
繰越利益剰余金 600 圧縮積立金 600
法人税等調整額 400 繰延税金負債 400

なお、当該一時差異について、繰延税金負債を計上することによりその同額が法人税等調整額に計上され、繰越利益剰余金の金額は税効果会計を適用する前に比べて減少することになります。したがって、圧縮積立金は、純資産の部に繰延税金負債控除後の純額をもって計上することになります(法人税等調整額の計上と圧縮積立金の純額計上により、直接控除方式を適用した時の剰余金残高と一致します。個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針第20項・第38項参照)。

(具体例-圧縮記帳・税効果会計の適用)

1.×1年4月1日、当社は建物を取得するための国庫補助金10,000円を現金で受け取った。

(仕訳-補助金収入)
借方 金額 貸方 金額
現金 10,000 国庫補助金受贈益 10,000

2.×1年4月10日、上記1の国庫補助金と自己資金を原資に建物20,000円を取得し、代金は現金で支払った。当該建物について国庫補助金10,000円分については圧縮記帳(積立金方式)行うこととする。なお、本問においては法定実効税率を40%とし税効果会計を適用するものとする。

(仕訳-圧縮記帳)
借方 金額 貸方 金額
建物 20,000 現金 20,000

3.×2年3月31日決算日において、上記建物の減価償却費の計上を行った。なお当該建物の減価償却費の算定は定額法で行い、耐用年数は4年(償却率0.250)として計算するものとする。

決算時の処理1-減価償却費の算定

(計算過程)
まず、減価償却費の算定を行います。積立金方式の場合、固定資産の減額処理は行いませんので、減価償却費は固定資産の取得原価(取得に要した金額)をもとに減価償却費を算定します。

建物減価償却費:取得原価20,000円×0.250×12/12=5,000円

(仕訳-減価償却)
借方 金額 貸方 金額
減価償却費 5,000 減価償却累計額 5,000
決算時の処理2-圧縮積立金・繰延税金負債の積み立て

次に、圧縮限度額(国庫補助金受贈益相当額)を積立金として計上します。積立金方式の場合、圧縮記帳の必要な経理処理(積立金の積み立て)は固定資産の取得時ではなく、決算時に行う点にご注意ください。
また、税効果会計を適用する場合は純資産の部に計上する積立金については、繰延税金負債控除後の純額を積み立てることとなります。

(計算過程)

圧縮積立金=10,000円×(1-40%)=6,000円
繰延税金負債=10,000円×40%=4,000円

(仕訳-積立金の積立・税効果)
借方 金額 貸方 金額
繰越利益剰余金 6,000 圧縮積立金 6,000
法人税等調整額 4,000 繰延税金負債 4,000
決算時の処理3-圧縮積立金・繰延税金負債の取り崩し

最後に、当期の減価償却額(税務上の減価償却費と会計上の減価償却費との差額)に応じて圧縮積立金・繰延税金負債の取り崩しを行います。

(計算過程)
圧縮積立金10,000円×0.250×(1-40%)=1,500円→圧縮積立金取り崩し額
税効果適用10,000円×0.250×40%=1,000円→繰延税金負債の取り崩し額

(仕訳-積立金の取り崩し)
借方 金額 貸方 金額
圧縮積立金 1,500 繰越利益剰余金 1,500
繰延税金負債 1,000 法人税等調整額 1,000

2と3の仕訳は説明上分けていますがまとめて行っても構いません。

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