繰延税金資産・繰延税金負債の計上時の処理
一時差異等に係る税金の額は、将来の会計期間において回収又は支払が見込まれない税金の額を除き、繰延税金資産又は繰延税金負債として計上しなければなりません(税効果会計に係る会計基準 第二・二1参照)。
税効果会計の適用に伴い、貸借対照表上は、将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金等に対しては繰延税金資産を、将来加算一時差異に対しては繰延税金負債を計上し、損益計算書上は、それらの差額を期首と期末で比較した増減額を法人税等調整額として計上します。ただし、資産又は負債の評価替えにより生じた評価差額を直接純資産の部に計上する場合には、当該評価差額に係る繰延税金資産又は繰延税金負債の金額を当該評価差額から控除して計上することになります(税効果会計に係る会計基準 第二・二3、個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針第15項参照)。
(具体例1-将来減算一時差異に対して繰延税金資産を計上する場合)
減価償却超過額10,000円(将来減算一時差異)の税効果会計に関する仕訳を示しなさい。なお法定実効税率は40%とする(以下同様)
(計算過程)
10,000円×40%=4,000円(繰延税金資産)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
繰延税金資産 | 4,000 | 法人税等調整額 | 4,000 |
減価償却超過額(将来減算一時差異)10,000円に対して法定実効税率40%を乗じて、これを繰延税金資産として貸借対照表に計上します。相手勘定は法人税等徴税額となります。
(具体例2-将来加算一時差異に対して繰延税金負債を計上する場合)
利益処分による特別償却5,000円(将来加算一時差異)の税効果会計に関する仕訳を示しなさい。
(計算過程)
5,000円×40%=2,000円(繰延税金負債)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
法人税等徴税額 | 2,000 | 繰延税金負債 | 2,000 |
利益処分による特別償却(将来加算一時差異)5,000円に対して法定実効税率40%を乗じて、これを繰延税金負債として貸借対照表に計上します。相手勘定は法人税等徴税額となります。
損益計算書上においては、繰延税金資産と繰延税金負債との差額を期首と期末で比較した増減額を法人税等調整額として計上します。上記具体例1・2の例において、仮に期首の繰延税金資産と繰延税金負債との差額が1,000円であるとした場合、損益計算書上の法人税等調整額の計上額は以下のように算定します。
4,000円(期末の繰延税金資産)-2,000円(期末の繰延税金負債)-1,000円(期首の差額)=1,000円
(具体例3-評価差額に対して税効果会計を適用する場合)
投資有価証券の評価益2,000円の期末評価と税効果に関する仕訳を示しなさい。
(計算過程)
2,000円×40%=800円(繰延税金負債)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
投資有価証券 | 2,000 | その他有価証券評価差額金 | 2,000 |
その他有価証券評価差額金 | 800 | 繰延税金負債 | 800 |
上記の仕訳は下記のようにまとめても構いません。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
投資有価証券 | 2,000 | その他有価証券評価差額金 | 1,200 |
- | - | 繰延税金負債 | 800 |
投資有価証券の評価差額のように資産又は負債の評価替えにより生じた評価差額を直接純資産の部に計上する場合には、当該評価差額に係る繰延税金資産又は繰延税金負債の金額を当該評価差額から控除して計上することになります。したがって、上記の仕訳の繰延税金負債の相手勘定は法人税等徴税額ではなくその他有価証券評価差額金となっております。
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