圧縮記帳(積立金方式)の仕訳・会計処理
圧縮記帳とは、国庫補助金や工事負担金・保険金などで取得した固定資産について、補助金や保険金で受け取った金銭相当額など(圧縮限度額)を固定資産の取得原価から減額し、圧縮損を計上することなどにより、補助金収入などに対する課税を一時的に回避する方法をいいます。
圧縮記帳の経理方法については一般的に以下の2つの方法があります。
直接減額方式 | 固定資産の取得原価を直接減額し、これを『固定資産圧縮損』(特別損失)として費用計上(損金経理)します。 | 直接減額方式 |
積立金方式 | 固定資産の取得原価を減額するのではなく、圧縮限度額の範囲内の金額を当該事業年度の確定した決算において積立金として積み立てます。 | 当ページ下記参照 |
積立金方式とは、国庫補助金や保険差益などの圧縮限度額を損金経理(費用として計上)するのではなく、これを決算時において積立金として積み立てるものであり、このような経理処理をした場合であっても税務上は損金に算入することが認められています(法人税法第42条第1項等参照)。
たとえば、建物の取得原価のうち、圧縮限度額1,000円を積立金方式で処理した場合は決算時に以下のような記帳をおこないます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
繰越利益剰余金 | 1,000 | 圧縮積立金 | 1,000 |
直接控除方式では、固定資産の取得原価を減額し、これを損金経理することにより損金(税務上の経費)に算入しました。しかし本来費用性のない圧縮損のような費用を損益計算に計上することには、適正な期間損益計算を目的とする会計上の観点からは問題があります。また固定資産の取得原価も実際の取得原価とは異なります。
積立金方式では、圧縮損を損益計算書に計上することはなく、また固定資産の取得原価も実際の取得原価で表示されることから、会計上の観点からより合理的な処理方法であると考えられています。
なお決算時に積み立てられた圧縮積立金は、減価償却費(税務上の減価償却費と会計上の減価償却費との差額)に応じて取り崩すか売却や除却に応じてその全額を取り崩すことになります(取崩額は税務上の益金となります)。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
圧縮積立金 | 100 | 繰越利益剰余金 | 100 |
また、会計上は積立金方式を採用した場合であっても、税務上は固定資産の取得原価から圧縮損を控除した金額をもとに減価償却を行います。したがって積立金方式を採用した場合においては、税務上と企業会計上の資産の金額に相違が発生しますので税効果会計の対象となる点に注意が必要です(直接控除方式では会計上も固定資産を減額していますので差異はありません)。
(具体例-圧縮記帳・積立金方式)
1.×1年4月1日、当社は建物を取得するための国庫補助金10,000円を現金で受け取った。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 10,000 | 国庫補助金受贈益 | 10,000 |
2.×1年4月10日、上記1の国庫補助金と自己資金を原資に建物20,000円を取得し、代金は現金で支払った。当該建物について国庫補助金10,000円分については圧縮記帳(積立金方式)行うこととする。なお、本問においては税効果会計は考慮しないものとする。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
建物 | 20,000 | 現金 | 20,000 |
3.×2年3月31日決算日において、上記建物の減価償却費の計上を行った。なお当該建物の減価償却費の算定は定額法で行い、耐用年数は4年(償却率0.250)として計算するものとする。
決算時の処理1-減価償却費の算定
(計算過程)
まず、減価償却費の算定を行います。積立金方式の場合、固定資産の減額処理は行いませんので、減価償却費は固定資産の取得原価(取得に要した金額)をもとに減価償却費を算定します。
建物減価償却費:取得原価20,000円×0.250×12/12=5,000円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
減価償却費 | 5,000 | 減価償却累計額 | 5,000 |
決算時の処理2-圧縮積立金の積み立て
次に、圧縮限度額(国庫補助金受贈益相当額)を積立金として計上します。積立金方式の場合、圧縮記帳の必要な経理処理(積立金の積み立て)は固定資産の取得時ではなく、決算時に行う点にご注意ください。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
繰越利益剰余金 | 10,000 | 圧縮積立金 | 10,000 |
決算時の処理3-圧縮積立金の取り崩し
最後に、当期の減価償却額(税務上の減価償却費と会計上の減価償却費との差額)に応じて圧縮積立金の取り崩しを行います。
(計算過程)
圧縮積立金10,000円×0.250=2,500円→圧縮積立金取り崩し額
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
圧縮積立金 | 2,500 | 繰越利益剰余金 | 2,500 |
(関連項目)
圧縮記帳・積立金方式の税効果会計適用に関する仕訳
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