割引・割戻・値引の違い(売上・仕入取引の記帳)

仕入れや売上などの商品売買取引において、割戻・割引・値引のそれぞれの概要は以下のようになります(簿記用語)。

(割戻・割引・値引とは)
割戻とは 割戻とは、たとえば一定の期間内に一定の取引量や金額を超える取引を行った場合などにおいて、売手が販売代金の一部を減額することなどを言います(いわゆるリベートの一種です)。割戻を行った時の仕訳は商品販売時や購入時の逆仕訳を行い、販売時や購入時に行ったの仕訳の一部(割戻額分)を取り消します。
割引とは 割引とは、買手が商品売買時の掛代金を決済日前に支払ったとき、支払日から決済日までの金利に相当する金額を買主に返却(代金の減額)することをいいます。掛代金の早期決済による金利の払い戻しとしての性格を持つものですから、値引や割戻のように仕入高や売上高の減額修正(逆仕訳)は行わず、『仕入割引』『売上割引』勘定を使って記帳します。これらの割引額は利息的な性格を持つものですから、財務取引として損益計算書上は営業外取引の区分に記載されます。
割引とは 値引とは、商品の売買後において、販売した商品の販売価格の値引を行うことをいいます。

それぞれ、売手の立場から見たものを「売上割戻」「売上割引」「売上値引」といいます。
また買手の立場から見たものを「仕入割戻」「仕入割引」「仕入値引」といいます。

割戻と値引に関しては商品売買取引における事後的な価格の調整と考えて、商品売買時の仕訳の逆仕訳(借方・貸方が逆の仕訳)をおこない、商品売買時の仕訳を取り消す処理を行います(三分法の場合)。
いっぽう割引については、掛代金の早期決済による金利の払い戻しとしての性格を持つものとして、金融取引などと同様に『売上割引』(営業外費用)や『仕入割引』(営業外収益)勘定を使って記帳します。

(具体例1-割戻・値引)

A社(売手)がB社(買手)に販売している商品について、一定期間内の取引金額が所定の額に達したためA社はB社に対し、100,000円の割引を行った。割引額は掛け代金と相殺するものとし、この時におけるA社とB社の仕訳を示しなさい。

(仕訳-売手のA社)
借方 金額 貸方 金額
売上 100,000 売掛金 100,000
(仕訳-買手のA社)
借方 金額 貸方 金額
買掛金 100,000 仕入 100,000

値引に関する記帳も割戻と同様になります。
割戻や値引時の記帳については、商品売買時の逆仕訳を行い、値引額や割戻額相当額について、商品売買時の仕訳を取り消します(なお分記法の場合は分記法における売上取引の仕訳(返品・値引・割戻)をご参照ください)。

(具体例2-割引)

B社(買手)はA社(売手)に対し、掛け代金200,000円を決済日の1か月前に支払った。A社はB社に対し5,000円の割引を行い、掛け代金から割引額を控除した残額につき現金で支払いを受けた。この時におけるA社とB社の仕訳を示しなさい。

(仕訳-売手のA社)
借方 金額 貸方 金額
現金 195,000 売掛金 200,000
売上割引 5,000
(仕訳-買手のB社)
借方 金額 貸方 金額
買掛金 200,000 現金 195,000
仕入割引 5,000

割引は掛け代金の早期決済に対する金利相当額の減額であり、金融取引と同様と考えられることから、これらを仕入や売上の価格調整として逆仕訳処理を行うのではなく、割引額について別途に営業外損益として処理します。
なお「仕入割引」は営業外収益であり、「売上割引」は営業外費用となります。「仕入」や「売上」の言葉に惑わされて収益と費用を逆しないようにご注意ください。

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