内部利益控除の仕訳(本支店会計・帳簿の締切)
本支店会計の決算時の手続きには、本支店合併精算表を使用して本支店合併財務諸表を作成すると同時に、本店及び各支店の会計帳簿を締め切る手続を行う必要があります。本店及び各支店の会計帳簿の締め切るために行う手続は以下のとおりです。
損益振替 | 本店及び各支店の収益・費用を損益勘定に振り替え、各店舗のごとの利益を算定します | 損益振替 |
総合損益勘定への振替 | 本店及び各支店の損益勘定に振替えられた利益を、本店の総合損益勘定へと集計します。 | 総合損益勘定への振替 |
内部利益の控除 | 期末商品在庫などに含まれている内部利益を総合損益勘定から消去(控除)します。 | 当ページ下記参照 |
資本振替 | 総合損益勘定で集計された全社利益を繰越利益剰余金勘定へと振替ます | 資本振替 |
本店及び各支店の当期純利益(または当期純損失)は各店舗の帳簿に設けられた『損益』勘定から本店の帳簿に設けられた『総合損益』勘定へと振り替えられます。
ただし、この『総合損益』勘定へと集計された各店舗の当期純利益の中には、いまだに実現していない内部利益が含まれるため、次の段階の手続きとしてこれを控除することが必要となります。
内部利益とは、本店が支店に商品を送付する時に本店の仕入原価に一定の利益を加算して(振替価格で)送付している場合、あるいは支店が一定の利益を加算して本店に商品を送付している場合において、この商品が期末に在庫として残っていれば、商品を送付した側が加算した利益はいまだ実現していない利益ことになります(本支店間で商品を送付しただけでは企業外部から見た場合、単なる社内の商品の移動であり利益は発生していません)。
上記のような利益を内部利益といい、正しい全社利益を算定するためには期首商品・期末商品に含まれている内部利益は控除することが必要となります。
1.期末商品に含まれている内部利益の控除
期末在庫商品に含まれている内部利益は以下の仕訳によりこれを控除することになります。
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 |
---|---|---|---|
繰延内部利益控除 | 繰延内部利益 |
上記仕訳の借方の『繰延内部利益控除』は当期純利益から未実現の内部利益を控除するための勘定であり、貸方の『繰延内部利益』は期末商品に含まれている未実現の内部利益を間接的に控除し、これを翌期に繰り越すための勘定です。
さらに『繰延内部利益控除』は、以下の仕訳により本店・支店の当期純利益が集計されている『総合損益』勘定へと振り替え、これを全社利益から控除します。
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 |
---|---|---|---|
総合損益 | 繰延内部利益控除 |
2.期首商品に含まれている内部利益の控除
前期から繰り越されてきた『繰越内部利益』勘定の残高は、期首商品(前期の期末商品)に含まれている前期の未実現利益を表しますが、これは当期に実現したものと考え以下の仕訳によりこれを消去します。
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 |
---|---|---|---|
繰延内部利益 | 繰延内部利益戻入 |
上記仕訳の『繰延内部利益戻入』は前期の内部利益が当期に実現したことを表し、これを当期の利益に加算するための勘定です。したがって、以下の仕訳により本店・支店の当期純利益が集計されている『総合損益』勘定へと振り替え、これを全社利益へ加算します。
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 |
---|---|---|---|
繰延内部利益戻入 | 総合損益 |
(具体例-内部利益控除)
本年度において、本店は仕入原価に10%の利益を付加して支店に商品を送付している。支店の期末商品に含まれる本店仕入分は22,000円分である。また前期から繰り越されてきた繰延内部利益(期首商品に含まれている内部利益)の残高は3,000円であった。帳簿を締め切るに当たり期首商品・期末商品に含まれている内部利益に関する必要な仕訳を示しなさい。
1.期末商品に含まれている内部利益の処理
(計算過程)
本年度において、本店は支店に商品を送付する際、本店の仕入価格の10%の利益を付加した価格をもって送付している。また支店の期末商品に含まれている本店送付分は22,000円分である。したがって支店の期末商品に含まれている内部利益は
期末商品に含まれる内部利益:22,000円×0.1/1.1=2,000円
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 |
---|---|---|---|
繰延内部利益控除 | 2,000 | 繰延内部利益 | 2,000 |
総合損益 | 2,000 | 繰延内部利益控除 | 2,000 |
期末商品に含まれている内部利益は『繰越内部利益』として翌期に繰り越され、翌期の決算期において、翌期の実現利益として処理します。
2.期首商品に含まれている内部利益の処理
期首商品(前期の期末商品)に含まれている内部利益は『繰越内部利益』として前期から当期に繰り越されてきており、これを当期の実現利益として処理します。当設問において前期から繰り越されてきた『繰越内部利益』は3,000円となりますので仕訳は以下のようになります。
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 |
---|---|---|---|
繰延内部利益 | 3,000 | 繰延内部利益戻入 | 3,000 |
繰越内部利益戻入 | 3,000 | 総合損益 | 3,000 |
総合損益勘定の貸方に振り替え、前期の未実現の内部利益を当期の実現利益として当期の利益に加算します。
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