新株予約権付社債(一括法)の仕訳・会計処理

新株予約権付社債の発行者側の会計処理には区分法と一括法の2つの方法があります。このうち一括法とは、新株予約権付社債発行に伴う払込金額を、社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分せず、普通社債の発行に準じて処理する方法をいい、転換社債型新株予約権付社債について適用することができる方法です。(金融商品に関する会計基準第36項、払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理第18項等参照)。

1.新株予約権付社債発行時の処理(一括法)

一括法のおいて、新株予約権付社債を発行した時の会計処理は、払込金額を社債の対価部分と新株予約権の対価部分とに区分することなく、全体を普通社債の発行に準じて処理することになります。

たとえば、新株予約権付社債(社債の対価部分90円、新株予約権の対価部分10円)を発行し、払込金額100円を受け取った時の処理を一括法で記帳した場合は以下のようになります。

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
現金 100 社債 100

一括法では、上記の通り払込金額について社債の対価部分と新株予約権の対価部分とを区分することなく全体を普通社債の発行に準じて処理することになります。
なお、社債の発行価額と額面金額との差額については償却原価法を適用することが必要となります(詳細は償却原価法解説ページをご参照ください)。

2.新株予約権行使時の会計処理(一括法)

一括法は転換社債型新株予約権付社債において採用される処理方法です。したがって新株予約権権利行使時の払込は代用払込(社債の償還)をもって行われることになりますので、新株予約権が行使された時は、権利行使された新株予約権付社債の帳簿価額を資本金等に振替えて処理することになります。

たとえば、上記1の新株予約権について半分が行使され、全額を資本金とした場合の処理は以下のようになります。

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
社債 50 資本金 50

3.新株予約権の未行使分の会計処理(一括法)

区分法においては、新株予約権が行使されずに権利行使期間を経過した場合は未行使の新株予約権の帳簿価額を『新株予約権』勘定から『新株予約権戻入益』(特別利益)勘定に振り替えて処理しますが、一括法においては、上記1の通り、新株予約権勘定を計上していませんので権利未行使のまま権利行使期間が満了しても別途仕訳を行う必要はありません

たとえば、上記1・2の新株予約権について残りの半分について権利行使が行われず、権利行使期間を満了した時は以下のように記帳します。

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
仕訳なし
(具体例-新株予約権付社債・一括法)

1.当社は×1年1月1日(期首)に以下の条件において転換社債型新株予約権付社債を発行し、払込額は当座預金とした。新株予約権付社債を一括法で処理(以下同様)した時の発行時の仕訳を示しなさい

(新株予約権付社債)
額面金額:1,000,000円
払込金額:1,000,000円
社債の対価部分:900,000円
新株予約権の対価部分:100,000円
社債の償還日:×5年12月31日(償還日まで5年)
社債の利率:0%

(仕訳-発行時)
借方 金額 貸方 金額
当座預金 1,000,000 社債 1,000,000

2.×2年1月1日において上記新株予約権のうち60%が行使された。なお増加する純資産額は全額を資本金とした。

(計算過程)
新株予約権付社債の権利行使部分:1,000,000円×60%=600,000円

(仕訳-権利行使時)
借方 金額 貸方 金額
社債 600,000 資本金 600,000

3.新株予約権の権利行使期間が満了した。権利未行使部分は上記新株予約権のうち40%部分であった。

(仕訳-権利行使期間満了)
借方 金額 貸方 金額
仕訳なし

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