新株予約権付社債(区分法)の仕訳・会計処理
新株予約権付社債の発行者側の会計処理には区分法と一括法の2つの方法があります。このうち区分法とは、新株予約権付社債発行に伴う払込金額を、社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分した上で、社債の対価部分は普通社債の発行に準じて処理し、新株予約権の対価部分は新株予約権の発行者側の会計処理に準じて処理するする方法をいい、転換社債型新株予約権付社債およびその他の新株予約権付社債のいずれにも適用することができます(金融商品に関する会計基準第36・38項、払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理第18・21項等参照)。
1.新株予約権付社債発行時の処理(区分法)
区分法のおいて、新株予約権付社債を発行した時の会計処理は払込金額を社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分し、それぞれ以下のように処理します。
社債の対価部分:普通社債の発行に準じて処理する
新株予約権の対価部分:新株予約権の発行に準じて処理する
たとえば、新株予約権付社債(社債の対価部分90円、新株予約権の対価部分10円)を発行し、払込金額100円を受け取った時の処理を区分法で記帳した場合は以下のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 100 | 社債 | 90 |
- | - | 新株予約権 | 10 |
なお、社債部分の発行価額と額面金額との差額については償却原価法を適用することが必要となります(詳細は償却原価法解説ページをご参照ください)。
2.新株予約権行使時の会計処理(区分法)
区分法において新株予約権が行使された時は、払込が現金によって行われる場合と代用払込(権利行使の払込を社債をもって行う)によって行われる場合とがあり、それぞれ以下のように処理します。
現金によって払い込まれる場合:権利行使された新株予約権の帳簿価額と払込まれた現金を資本金等に振替えて処理する
代用払込によって行われる場合:権利行使された新株予約権の帳簿価額と社債の帳簿価額を資本金等に振替えて処理する
たとえば、上記1の新株予約権について半分が行使され、権利者から現金50円が払い込まれ、全額を資本金とした場合の処理は以下のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 50 | 資本金 | 55 |
新株予約権 | 5 | - | - |
いっぽう、上記1の新株予約権についてその半分が行使され、その払込について社債があてがわれた(代用払込)時の処理は以下のようになります(転換社債型新株予約権付社債の権利行使)。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
社債 | 45 | 資本金 | 50 |
新株予約権 | 5 | - | - |
3.新株予約権の未行使分の会計処理(区分法)
区分法において、新株予約権が行使されずに権利行使期間を経過した場合は未行使の新株予約権の帳簿価額を『新株予約権』勘定から『新株予約権戻入益』(特別利益)勘定に振り替えて処理します。
たとえば、上記1・2の新株予約権について残りの半分について権利行使が行われず、権利行使期間を満了した時は以下のように記帳します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
新株予約権 | 5 | 新株予約権戻入益 | 5 |
なお、権利行使期間が満了したのちにおいても社債の対価部分については、社債の償還日まで普通社債の会計処理と同様に処理しますので新株予約権の権利行使期間満了時において特別の処理は必要ありません。
(具体例-新株予約権付社債・区分法)
1.当社は×1年1月1日(期首)に以下の条件において新株予約権付社債を発行し、払込額は当座預金とした。新株予約権付社債を区分法で処理(以下同様)した時の発行時の仕訳を示しなさい
(新株予約権付社債)
額面金額:1,000,000円
払込金額:1,000,000円
社債の対価部分:900,000円
新株予約権の対価部分:100,000円
社債の償還日:×5年12月31日(償還日まで5年)
社債の利率:0%
償却原価法の適用:定額法
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
当座預金 | 1,000,000 | 社債 | 900,000 |
- | - | 新株予約権 | 100,000 |
2.×1年12月31日決算日を迎えた。
(計算過程)
償却原価法の適用:(1,000,000円-900,000円)/5年=20,000円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
社債利息 | 20,000 | 社債 | 20,000 |
3.×2年1月1日において上記新株予約権のうち60%が行使され、権利者からの払込額500,000円を当座預金とした。なお増加する純資産額は全額を資本金とした。
(計算過程)
新株予約権の権利行使部分:100,000円×60%=60,000円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
当座預金 | 500,000 | 資本金 | 560,000 |
新株予約権 | 60,000 | - | - |
仮に、上記の権利行使について代用払込が行われた場合の計算過程と仕訳は以下のようになります。
(計算過程)
新株予約権の権利行使部分:100,000円×60%=60,000円
社債の権利行使部分:(900,000円+20,000円)×60%=552,000円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
社債 | 552,000 | 資本金 | 612,000 |
新株予約権 | 60,000 | - | - |
4.新株予約権の権利行使期間が満了した。権利未行使部分は上記新株予約権のうち40%部分であった。
(計算過程)
新株予約権の権利未行使部分:100,000円×40%=40,000円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
新株予約権 | 40,000 | 新株予約権戻入益 | 40,000 |
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