前受収益と前受金との違い

前受収益前受金はともに取引相手から事前に受取った対価を表す科目ですが、その違いについて企業会計原則注解・注5(2)では以下のように規定しています。

前受収益は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合、いまだ提供していない役務に対し支払を受けた対価をいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過とともに次期以降の収益となるものであるから、これを当期の損益計算から除去するとともに貸借対照表の負債の部に計上しなければならない。また、前受収益は、かかる役務提供契約以外の契約等による前受金とは区別しなければならない。

上記の通り、前受収益は継続的に役務提供(サービスの提供)を行う場合において、前受けした代金のうち、翌期以降の期間に対応する部分を翌期以降の収益とするため当期の損益計算から除去し、負債として翌期に繰り延べられるもの(経過勘定)をいうのに対し、前受金とは上記以外のもの(たとえば役務提供や物品の引き渡しが行われる以前に受取ったに代金など)をいいます。

(具体例1-前受収益)

1.当社は自社ビルの余剰スペースをA社に賃貸している。×1年1月1日において、A社から1年間の事務所の家賃240,000円を受け取り普通預金とした。なお、当社の決算日は3月31日である。

(仕訳・受取時)
借方 金額 貸方 金額
普通預金 240,000 受取家賃 240,000

2.×1年3月31日決算日を迎えた。上記1の受取家賃に関する決算時の仕訳を示しなさい。

(計算過程)
A社より受けとった家賃はいったんは全額を『受取家賃』として収益計上していますが、決算日の翌日の4月1日以後の期間に対応する家賃は翌期の収益です。したがって、決算日には翌期の期間に対応する家賃を『受取家賃』(収益)から『前受収益』(負債)に振り替え、負債として翌期に繰り延べます。

受取日から1年後までの期間:×1年1月1日から×1年12月31日までの12か月
受取日から決算日までの期間:×1年1月1日から×1年3月31日までの3か月
決算日の翌日から1年後までの期間:12か月-3か月=9か月

∴翌期配分額:240,000円×9か月/12か月=180,000円

(仕訳・決算時)
借方 金額 貸方 金額
受取家賃 180,000 前受収益 180,000

前受収益は、収益をあるべき期間に配分する(期間損益計算の適正化)の観点から計上される経過勘定であり、貸借対照表上は流動負債の区分に表示されます。

(具体例2-前受金)

取引先へ商品1,000,000円を販売するに先立って、内金として代金の10%の100,000円を現金で前受けした。

(仕訳・前受時)
借方 金額 貸方 金額
現金 100,000 前受金 100,000

役務提供や物品の引き渡しが行われる以前に受取った代金は『前受金』勘定を使用します。

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